トピックス

●●●減少する牛肉生産量●●●

 農林水産省が6月20日に公表した食肉流通統計によると、5月の牛肉生産量(枝
肉ベース)は前年同月に比べて15.2%減の26,929トンとなった。牛肉生産量は、
牛海綿状脳症(BSE)発生からBSE検査の実施体制が整うまでの間、大幅に落ち込
んだが、その後は例年並みかやや上回る水準を維持していた。しかし、15年1月
以降5ヵ月連続で前年同月を下回っている(図1)。
図1 と畜頭数の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」
 5月のと畜頭数を品種別に見ると、和牛が19.9%減と大幅に落ち込んだ一方で、
乳牛(交雑種を含む)は7.6%減にとどまっている。しかし、一見、減少幅が小
さく見える乳牛でも、乳用肥育おす牛や交雑種のと畜頭数は、和牛と同様に大
幅に落ち込んでいる。最近の牛肉生産量の落ち込みは、和牛や交雑種などのと
畜頭数の減少が主要因であるとみられる。


 和牛(黒毛和種)の場合、性別によっても若干異なるが、一般的に、10ヵ月
齢前後の子牛を導入し、20ヵ月前後肥育して出荷する例が多いと思われるため、
最近、出荷適期を迎えている牛は、BSEの発生前後またはそれ以後に導入された
ものと考えられる。


 BSE発生以後の家畜市場での取引の動向を振り返ってみると、黒毛和種の子牛
取引頭数は、BSE発生後の13年10月から14年2月にかけて、価格急落を受けての
出荷繰り延べなどの影響で、前年同月を下回って推移していた(図2)。
図2 家畜市場における黒毛和種子牛の取引頭数
資料:農畜産業振興事業団調べ
 肥育経営の規模縮小などと併せて、この時期の子牛取引の停滞が、和牛を中心
とした現在の牛肉生産量の減少に拍車をかけているとの見方もある。

●●●SG発動が懸念される生鮮・冷蔵牛肉●●●

 財務省の貿易統計によると、5月の牛肉輸入量(煮沸肉などを含む)は、前年同
月比19.5%増の4万6千トンとなった。内訳を見ると、冷凍が3.8%増の2万トンと
なった一方で、生鮮・冷蔵は35.4%増の2万5千トンと依然高い伸びを示している。


 この結果、5月までの輸入量累計は、冷凍で関税の緊急措置の発動基準数量の57
%にとどまったのに対し、生鮮・冷蔵では既に79.5%に達しており、生鮮・冷蔵
牛肉での緊急措置の発動が強く見込まれる状況となっている(図3)。
図3 生鮮・冷蔵牛肉の輸入量
資料:財務省「貿易統計」
注 :15年度の第1四半期は、15年4月〜5月の累計

 生鮮・冷蔵牛肉の6月までの輸入量累計が15年度第1四半期の発動基準数量であ
る63,563トンを超えた場合には、8月1日から平成16年3月31日まで、関税率は現行
の38.5%から50.0%に引き上げられることとなる。


 外食産業等の食品業界にとって、牛肉の関税の引き上げは、コストの上昇に直
結する問題だけに、発動回避を求める声が上がっている。


 しかし、この問題に関して、農林水産省では、・ウルグアイラウンド農業合意
の際に輸出国の要望と消費者への配慮等から合意水準以上の自主的な関税引き下
げを行い、その代償として導入されたものであり、見直しは困難である、・従来
通りの措置の継続を内容とする法律が国会で可決・成立しており、政府としての
裁量の余地はないとの見解を示している。


 ただし、関税が引き上げられた場合には、消費者への影響を考慮し、輸入牛肉
の価格動向を監視し、便乗値上げなどに対しては適切に対応していくとしている。

●●●高水準の輸入が続く豚肉●●●

 牛肉と同様に豚肉でも輸入量に注目が集まっている。財務省の貿易統計による
と、5月の豚肉輸入量(くず肉を含む)は、前年同月比8.1%増の7万7千トンとな
った。内訳を見ると、生鮮・冷蔵が14.5%減の1万6千トンとなった一方で、冷凍
は16.6%増の6万1千トンと高い伸びを示した。


 国別の内訳を見ると、米国やカナダが前年同月並みとなった一方で、デンマー
クが21.5%増と大幅に増加した(図4)。

図4 豚肉の国別輸入量
資料:財務省「貿易統計」
 この結果、4月から5月までの輸入量累計は、15年第1四半期における関税の緊急措
置等の発動基準数量の81.7%に達しており、3年連続での緊急措置等の発動の可能性
が高まっている。6月までの輸入量累計が発動基準数量を超えた場合には、8月1日か
ら平成16年3月31日まで、基準輸入価格が現行の546.53kg/円から681.08kg/円に引
き上げられる。


 ただし、@4月および5月の輸入量が増加した結果、輸入豚肉の在庫が高水準になっ
ていること、A大手輸入商社が、発動を回避するため、6月に入船した輸入品の通関
を7月に繰り延べる措置を取ったことから、発動回避の可能性も残されているものと
みられる。


 こうしたことから、7月末に予定されている6月の豚肉輸入量の公表が注目を集めて
いる。

●●●平成14年食鳥処理羽数、処理量はともに前年を上回る●●●

 農林水産省が公表した「平成14年食鳥流通統計調査結果の概要」によると、平成
14年の全国の食鳥処理羽数、処理量は大部分を占めるブロイラー需要に支えられ、
処理羽数は6億8,686万羽、処理量は180万6,710トンで前年に比べ3%、4%とそれぞ
れ増加した。その他の肉用鶏(地鶏、銘柄鶏等)の食鳥全体に占める割合はわずか
であるが、処理羽数、処理重量ともに前年を12%も上回った。また、食鳥を処理し
た全国の処理場数は687場で、前年を1%上回った。食鳥の種類別を見ると、ブロイ
ラー、廃鶏で前年を2%、1%下回ったものの、その他の肉用鶏(4%)、その他の
食鳥(あいがも、うずら、あひる等)(9%)は前年を上回った。なお、1食鳥処理
場当たりの処理量はどの種類においても前年を上回った。


 一方、15年2月1日現在の全国のブロイラー飼養戸数および飼養羽数はともに前年
を2%程度下回ったが、年間で見ると、出荷戸数は1%減少したものの、出荷羽数は
3%の増加となり、1戸当たりの出荷羽数はやや増加傾向となった(図5・6)。
図5 ブロイラーの出荷戸数および羽数の推移
資料:農林水産省「食鳥流通統計調査結果の概要」

図6 その他の肉用鶏(地鶏等)の出荷羽数
資料:農林水産省「食鳥流通統計調査結果の概要」


●●●輸入鶏肉の在庫量前年を大幅に下回る●●●

 平成15年5月末の鶏肉在庫量は、前月末に比べ、国産はやや上回って推移したが、
輸入品は前月を1万トンも下回り7万トン台となっている。5月の輸入量は、鳥イン
フルエンザの発生により5月12日から中国からの輸入を一時停止しているため、タ
イ、ブラジルにシフトしているものの35,938トン(▲21.1%)と大幅に前年を下
回った。また、6月、7月の中国からの輸入量は無くなると思われるため、この傾
向は当分続くものと予想される。一方、全体の65%(平成14年度)を占める中国
からの調製品については、輸入を許可されている指定工場からの加熱加工品は引
き続き輸入されるものの、鶏肉調製品を扱う認定工場が少ないため、かなりの影
響が出るものと予想される。輸入鶏肉の在庫量の減少により需要がひっ迫してお
り、輸入鶏肉の値上がりが顕著となっている(図7)。
図7 鶏肉輸入量と輸入品在庫量
資料:財務省「貿易統計」、農畜産業振興事業団調べ


●●●国産ナチュラルチーズ生産量、前年度をわずかに下回る●●●

 農畜産業振興事業団乳業部は平成15年7月25日付けで「平成14年度国産ナチュラ
ルチーズの種類別製造量」を公表した。これによると14年度の国産ナチュラルチ
ーズの製造量は35,673トン(▲1.4%)と前年度よりわずかに減少した。


 このうち、主にプロセスチーズ原料となるセミハード・ハード系チーズの製造
量をみるとゴーダは13,203トン(▲17.3%)と大幅に減少、一方チェダーは9,533
トン(11.6%)、エダムは6トン(50.0%)と大幅に増加した。昨年度までは、こ
れらセミハード・ハード系チーズ(ゴーダ、チェダーおよびエダム)の製造量で
全体の7割を占めていたが、14年度はゴーダの大幅な減少に伴い、同製造量は合計
で22,742トン(▲7.2%)と全体の6割を占めるにとどまった(図8、9)。


 ソフト系のカマンベールは、3,736トン(▲7.0%)とかなりの程度減少。独特
の風味を持つブルーは12トン(▲53.8%)と大幅に減少した(図8、9)。


 フレッシュ系の、クリーム、カッテージ、クワルク、モツァレラおよびマスカ
ルポーネの合計は5,533トン(▲2.5%)とわずかに減少した。このうちクリーム
は880トン(31.9%)、カッテージは835トン(62.8%)およびモツァレラは1,334
トン(31.6%)と大幅に増加、フレッシュ系の4割を占めるクワルクは2,342トン
(▲29.0%)、マスカルポーネは142トン(▲22.8%)と大幅に減少した。その他
は3,650トン(86.2%)と大幅に増加した。(図9)。


 14年度の特徴としては、プロセスチーズ原料用のゴーダが大幅に減少している
こと、ここ数年着実に定着してきたカマンベール等に代わり、カッテージ、モツ
ァレラおよびその他のチーズが大幅に増加していることから、食の多様化に伴な
ったタイプのチーズ需要が伸びてきていることがうかがえる(巻末資料P.56参照)。
図8 国産ナチュラルチーズの種類別製造量(セミハード・ソフト系)
資料:農畜産業振興事業団調べ

図9 国産ナチュラルチーズの種類別製造量(フレッシュ系・その他)
資料:農畜産業振興事業団調べ


●●● 鶏卵卸売価格、続落●●●

 高温、多湿の梅雨期に入り、鶏卵の卸売価格が続落している。6月の全農のMサ
イズの卸売価格(加重平均、東京)は、1キログラム当たり131円と前月に比べ13
円安となった。これは、平成10年7月以降で最低の水準である。


 高水準の生産が続いている一方で、不需要期に入った結果、需給緩和が更に進
行した。


一部産地では、生産調整の動きが出ているが本格化していないとみられる。


 こうした状況を受けて、鶏卵価格安定基金制度に基づく価格補てんが、15年4月
以降3ヵ月連続で実施された。1kg当たりの補てん単価は、4月は19円、5月は
27円、6月は34円と徐々に増加している。

●●●7〜9月期配合飼料価格、引き上げ●●●

 全農は、海上運賃の上昇と為替相場が円高と円安の拮抗した不安定な相場展開
が予想されるため、7〜9月期配合飼料供給価格を全国全畜種総平均トン当たり約
300円の値上げを決定した(6/23)。専門農協系および商系もそれぞれ引き上げ
た。


<最近の原料コスト動向等>


 @とうもろこしのシカゴ相場は、天候の回復により作付けが順調に進み、240
セント/ブッシェル台で推移している。今後は天候に左右される天候相場が予想
されるが、当面は現行水準での展開と予測している。


 A副原料の大豆かす価格は、シカゴ市場で米国産大豆の期末在庫の減少により
高騰し、需給がひっ迫している。国内大豆かす価格もシカゴ市場の高騰を受け値
上がりが予想される。魚粉価格は、主産地ペルーの漁獲量が半減したため強含み
に推移したが、国内魚粉の生産が低調であり国内の需要も後退したため、現行水
準での展開が見込まれる。


<補てんの実施>
 配合飼料価格安定制度による通常補てん金650円/トンが交付される。これによ
り4〜6月期に比べ配合飼料価格がトン当たり300円上がるが、補てん金が100円増
えるので、この差額200円が農家の実質負担増となる。
図10 副原料の輸入価格(CIF)
資料:財務省「貿易統計」



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