◎地域便り


北海道 ●第3回放牧サミットが盛大に開催

調査情報部


 第3回放牧サミットが8月27日、28日の両日、帯広市内で開催された。日本草地畜産種子協会と畜産草地研究所の共催で全国から約320名の研究者、実践家が参加して、講演や事例発表、現地見学などを通じて、放牧酪農の課題や将来展望などへの認識を深めた。サミットの道内開催は初めてで、しかも、有数の酪農地帯で開かれたことから、予想を上回る参加者が集まり放牧への関心の高まりがうかがえた。

 開会では同協会の續省三会長が挨拶、農水省畜産振興課草地整備推進室の原田英男室長らが来賓祝辞を述べた。基調講演では東大大学院経済学研究科の矢坂雅充助教授が「放牧酪農については、従来の消費者や新規就農酪農家だけでなく、既存の酪農家が放牧酪農のメリット等に関心を向けるようになった」と調査を基に放牧酪農が各地で広がっていることを報告。また、放牧酪農と大規模メガファーム経営との比較を通じて「多くの家族経営が直面している課題への対処という点では、放牧酪農とメガファームが解決しようとしている課題は同じ」とした。しかし「放牧酪農は酪農業の多面的機能をよりよく発揮する飼養方法や生産費用の削減や経営の弾力性に優れ、個性の発揮と生活のゆとりなどの特徴がある」と位置づけた。ジャーナリストの増田淳子さんは消費者の立場から「テレビCMと生産現場の乖離を指摘したうえ、酪農畜産の本当の姿がキチンと消費者に伝わっていないとし、飼料や飼養環境などの情報を消費者にもっと正確に伝えることが大事」と述べた。また、特別講演を行ったアメリカのペンシルバニア州立大学酪農学科のローレンスD・ミュラー教授は「米国でも80年代後半から、経営収支や管理労力軽減の面から、放牧酪農が見直され、増加してきた」とし、ニュヨーク州の100頭以下の放牧酪農経営と舎飼酪農家の経営収支を具体的に比較して米国での放牧酪農の現状や課題を述べた。

 また、十勝清水町の放牧酪農家の橋本晃明さん、静岡県富士宮市の放牧酪農家の中島邦造さんらの先進経営事例の発表や総合討論などが行われた。翌日は放牧酪農の実践家である十勝清水町の橋本晃明牧場、境野恭照牧場、帯広市八千代公共育成牧場を現地視察して放牧地と草地を利用した放牧酪農の素晴らしさを実感した。

放牧地の乳牛・牧草・土壌を熱心に観察する参加者たち
(十勝清水町 放牧酪農実践家 橋本牧場にて)
「酪農家は消費者にもっと生産現場を見せるべき」と
ジャーナリストの増田淳子さん



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