◎地域便り


京都府 ●家畜ふん尿から発電・液肥利用の事業化を目指して

京都府/中川 悦光


 本町は、京都市から北西約30キロに位置する自然溢れる田園地帯として知られている。八木バイオエコロジーセンター建設のきっかけは、畜産農家からの家畜ふん尿を処理する堆肥センター建設の要望だった。計画の前段でオランダ、ベルギー、デンマーク等の環境施設と、家畜ふん尿と家庭の芝生樹木の剪定枝、厨芥ごみやその他食品工場から出る有機性の廃棄物を使ってメタンガスを発生させる施設の調査を行った。その結果、単に家畜のふん尿を処理するだけではなく、「施設が自然環境の保全にも役立つものでなければならない」という、同センターの具体的なイメージが浮かび上がった。

 町の総合振興計画でも「ひとが輝く、自然と環境のまち」づくりを謳っている。家畜排泄物を電力と堆肥として利用する「循環型社会」を目指した施設の建設は、1996年度事業として農林水産省の国庫補助金を受け具体化に取りかかり、1998年3月、総工費11億円をかけ完成した。同年4月に試運転調整を開始、同年7月から本格稼働を行っている。また、畜産農家は1998年から同センターを利用することによって、それまで半日程度かかっていたふん尿処理が、同センターへの運搬・投入により、30分程度で完了できるようになった。余裕のできた時間で、経営の安定を目指し頭数規模拡大を行う農家や、複合経営の京野菜を中心とする園芸作物の生産拡大をする農家が現れた。この規模拡大農家が現れたことによって、同センターのふん尿処理能力が足らなくなったため、2001年から2002年に総工費6億円をかけ施設増築を行った。

 同センターは、乳牛及び豚のふん尿やおから(豆腐製造から発生する残渣)を処理する「メタン施設」(写真)と、肉牛のふん尿や脱水ケーキを堆肥化する「堆肥施設」に大別される。メタン施設では、乳牛931頭、豚1,650頭のふん尿とおから10t/日を嫌気性消化し、消化過程で発生する消化ガスを使って発電を行う。さらに発電設備から排熱を回収して消化槽の加温や管理用建物の給湯・暖房などに使用する。一方、堆肥化施設ではメタン施設で処理した後の脱水ケーキ約12.5t/日と肉牛590頭・育成牛233頭のふん尿を堆肥化し、最終的に堆肥として農地等に還元している。従前の施設では、メタン発酵後の消化液を脱水し、堆肥化により農地還元していたが、施設改造で、消化液の一部をそのまま液肥として農地還元している。この液肥は化学肥料と変わらない即効性の肥効のため、作物への適期・適量施用ができる。

 このように、八木バイオエコロジーセンターは、有機性廃棄物をエネルギー利用し、更に肥料として農地還元する持続可能な農業の構築と循環型社会を目指し、様々な課題に取り組んできた。

 今後は、八木町にまだ残される未利用有機資源を再利用する施設の整備とともに、真の循環型社会を目指して物質やエネルギーが地域循環するシステム作りを行っていきたい。

メタンガスを製造する発酵タンク



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