生産局 畜産部 生産技術課
WTO体制の下、更なる生産コストの低減が求められている中、わが国酪農の安 定的な発展のためには、乳用牛改良の推進とともに、個体能力を最大限に発揮さ せる飼養管理技術の推進を図ることが重要である。
また、本年秋からインターブルが実施する乳用種雄牛の国際比較に参加するこ とになっており、本格的な酪農の国際競争に突入する。
酪農の安定的な発展のためには、乳用牛改良の推進とともに個体能力を最大限 に発揮させる飼養管理技術の推進を図ることが重要である。個体能力の向上がい かに生産性の向上にとって重要であるか、ここでは、牛群の平均乳量の差が生乳 生産コストおよび収益性に及ぼす影響について、農林水産省統計情報部「平成14 年牛乳生産費統計」を基に組み替え集計した結果から見てみる。
図は、乳量階層別に経産牛1頭当たりの平均乳量(乳脂率3.5%換算)と経産牛 1頭当たりの平均粗収益および支出との関係について示したものである。これを 見ると平均乳量が増加するに伴い、粗収益、支出ともに増加しているが、右に行 くほど粗収益の増加額が支出の増加額を上回っており、平均乳量が多い酪農家ほ ど収益性(所得)が高いことがわかる。
具体的な数字を挙げてみると、平均乳量が6千〜7千キロの階層に比べ、9千〜 1万キロの階層では、支出が11万7千円増加しているものの、粗収益が21万5 千円増加していることから、結果として所得は14万円から23万8千円へと約70% 増加している。
また、1千万円の所得を得るために必要な乳用牛(経産牛)頭数を計算すると、 平均乳量が6千〜7千キロの階層では72頭必要となるが、9千〜1万キロの階層 では42頭となり約6割程度の頭数で間に合うことがわかる。
同様に出荷乳量を3百トンと限定した場合に必要な経産牛頭数について計算す ると、6千〜7千キロの階層では46頭必要であるのに対し、9千〜1万キロの階層 では32頭で間に合い、所得も増加する傾向が見られる。
以上のように、1頭当たり乳量の増加により生産の向上を図ることは、酪農経 営において、所得の向上などに大きく寄与しており、乳量を伸ばすこと、すなわ ち、牛群検定の活用による効果的な牛群の改良を進めることにより、乳用牛の遺 伝的能力を高めるとともに、その能力に見合った飼養管理を推進していくことが、 いかに重要なことであるかがわかる。
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