千葉県/企画情報部
成田空港にほど近い千葉県香取郡栗源町にある岩本牧場は繁殖・肥育一貫の和 牛生産農家である。この牧場の特徴は和牛生産でありながら放牧を取り入れてい るところだ。
経営者の岩本正さん(50歳)はもともとこの地で搾乳牛20頭の飼養と乳用牛 の肥育をしていたが、将来的な経営を考え、少しずつF1を導入し、F1肥育に手 応えを感じたその後に和牛の導入を行い、今では完全な和牛放牧牧場になってい る。最初に和牛の増頭が可能になった要因の1つとして、国・県・家畜改良セン ター等のプロジェクト事業として全国的に展開されたさまざまな放牧方式の検討 課題の一環として千葉県畜産センター(当時)による日本型放牧技術確立・普及 事業に参加し、従来からある草地を簡易更新法により更に強固な草地を造成した 他、隣接する耕作放棄地になっていた谷津田跡に牧場種子をは種し、放牧面積の 拡大を行う実証圃となったことである。
岩本牧場には傾斜の激しい繁殖牛用農場と、そこから車で3分程度離れている 肥育用農場がある。傾斜地である繁殖牛用農場は1.5ヘクタールで、最大傾斜は 40度ぐらいと思われる。そこには育成牛が常時5頭程度、妊娠牛も数頭放牧され ている。畜舎には出産を控えた雌牛や出生後6〜7カ月未満の子牛が親子で飼養さ れている。また肥育牛用農場は山間の平坦地で2ヘクタールあり、ここにも10カ 月未満の肥育用素牛が常時7〜8頭放牧されている。畜舎には肥育期間に入った牛 が常時30頭程度繋ぎ飼いされている。繋ぎ形態のため、この畜舎には雌牛だけが 飼養されており、自家繁殖で生まれた雄子牛はすべて子牛市場に出荷し、足りな くなった雌子牛を市場から導入している。
和牛放牧のメリットを聞いてみると、牛の場合は、和牛といえども子牛のうち からたくさん運動させて強靱な骨格を造ること、運動することにより病気にかか りにくくなること。また繁殖牛では受胎率が良く、お産が比較的楽であることな ど。岩本さんの経験からのお話があった。また労働力の面からのメリットもある。 牧草を給与する手間やふん便掃除の必要がなく、季節にもよるが青々とした牧草 が繁っている時期には、極端に言えば水さえ十分に与えていればいいのだそうだ。
おわかりになった方もいらっしゃるだろうが、岩本牧場は当事業団が制作した 最新ビデオの撮影現場でもあり、岩本さん自身も撮影に協力していただいた。今 回の撮影に関しまして、気軽にインタビューに応じてくださった岩本さんご夫妻 をはじめ、岩本牧場を紹介してくださった上、円滑な手配に助力いただいた千葉 県市原乳牛研究所 唐仁原景昭主幹にこの場を借りて感謝の言葉を表したい。
【この傾斜地が 強靱な 骨格を造る】 |
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【撮影時 岩本さんご夫妻と 中村プロデューサー(左)】 |