宮崎県/温谷 茂樹
「干し大根」「葉たばこ」日本一の産地として有名な国富町は、水稲をはじめ 露地野菜・施設園芸作物に加え、繁殖牛や肥育牛の大型畜産団地の建設も進んで いる。
飼料イネの取り組みの経緯は、平成8年度に葉たばこ後作のクリーニング作物 として、また新たな転作作物として0.1ヘクタールで試作したのが始まりだった。 この結果、土壌改善効果や牛のし好性が高く有用であることが確認され、このこ とがその後の町内外への普及の原点となった。特に、12年3月に発生した「口蹄 疫」を契機に、その原因として輸入粗飼料が疑われたことから「安全な国産稲わ らへの転換」への機運が高まり、国富町はいち早く飼料イネの栽培推進に取り組 んだ。また同時期に国産粗飼料増産緊急対策事業や水田農業経営確立対策事業の 支援事業が追い風となり栽培面積は一気に増加した。
飼料イネの推進母体は、同年7月に設立した国富町飼料用稲生産振興会(兼: 稲発酵粗飼料推進協議会)で、町役場、JA、農業改良普及センター、耕種・畜産 農家代表者で構成され、協議会の下、耕種農家は栽培から収穫前までを、畜産農 家は収穫・調整作業を担う作業分担制で取り組んでいる。また利用形態は、ロー ルラップサイレージやJA特注のビニールを利用したスタックサイレージの稲発酵 粗飼料(WCS)が主流であるが、一部完熟稲わらもある。また品種は、「テテッ プ」と「モーれつ」の2品種で、町内には県内唯一の採種事業地もあり、県内飼 料イネ種子の供給地ともなっている。
現在、栽培面積は、県全体で1,200ヘクタールを超えるが、うち国富町が最も 多く全体の2割強を占める約280ヘクタールとなっている。飼料イネは土壌中の 肥料成分の収奪力が大きく、地力の低下や各種支援事業の見直しなど新たな課題 にも直面している。このため、町では、乾田直播き栽培によるコストの節減や専 用肥料の施肥による地力対策など課題解決に向けた先進的な取り組みも行ってい る。
畜産農家からは「し好性も良く、安全な粗飼料を確保できる。」と好評であり、 関係者も「農家のため、やっときゃ、やっど!」の心意気で取り組んでいる。
今後とも、輸入粗飼料価格の変動など不安定要素の高い中、安全で安心な国産 粗飼料として飼料イネの栽培拡大に期待が寄せられている。
【耕種農家が栽培した 飼料イネの収穫風景】 |
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【飼料イネの ロールラップサイレージの 保管状況】 |