トピックス

●●●カナダ産輸入牛肉の状況●●●

 平成15年 5 月21日付けの農林水産省プレスリリースによると、カナダ政府は
5月20日にアルバータ州においてBSEに感染している牛を確認したと発表した。
このことを受けてカナダ産輸入牛肉について考察する。

 貿易統計によると14年度のカナダ産牛肉輸入数量は冷蔵品は4,270トン、冷凍
品は15,405トン、合計19,679トンであった。これは全体輸入数量の3.7%であ
る(図1)。農林水産省ではわが国へのBSE侵入防止のため緊急に輸入停止措置
を講じたが、輸入数量が少ないため大きな影響はでないと思われる。またカナダ
産輸入牛肉の99.7%は部分肉の形態で日本に輸入されている。 

 カナダ産くず肉は日本に輸入される全体のくず肉の5.2%である。そしてその
100%が舌と臓器である。冷蔵品は関税上の内訳がないため、冷凍品に限ってみる
と、その86.6%が舌であり、残り13.4%が臓器となっている。
◇図1 カナダ産牛肉輸入数量(14年度)◇

資料:財務省「貿易統計」

●●●牛肉トレーサビリティ法可決に際して●●●

 6 月 4 日に通称「牛肉トレーサビリティ法」が可決されたことに際して、消費
者はどの程度これを認識しているのか、財団法人日本食肉消費総合センター「季節
別食肉消費動向調査報告−第48回消費者調査−」によるトレーサビリティシステ
ムに対する認知度を見てみる。世帯全体で、まったく知らないと回答しているの
が44.4%でほぼ半数である(図 2 )。

 家事担当者年齢別による区分では全く知らないと一番多く答えているのは30
歳未満で63.1%である。年齢が上昇するに従ってその割合は減り、60歳以上が
29.3%と最も低い。逆にトレーサビリティシステムについてその内容まで知って
いると一番多く答えたのも、60歳以上で24.9%であった。これも年齢が低いほど
内容まで知っている割合が減っている(表 1 )。食品の安全性は高齢になるほど
関心が高まるようだ。

 トレーサビリティシステムによる小売価格の上昇についてたずねた結果は、あ
る程度の価格の上昇はやむを得ないと45.9%が回答している。消費者のほぼ半数
が安全性の向上が価格に反映することを認めている。法案可決後は言葉の認識の
みならずその内容認識も急速に進むことが予測される。
◇図2 トレーサビリティシステムに対する認知度◇


資料:(財)日本食肉消費総合センター
   「季節別食肉消費動向調査報告−第48回消費者調査−」

表1 トレーサビリティシステムに対する認知度

資料:(財)日本食肉消費総合センター
   「季節別食肉消費動向調査報告−第48回消費者調査−」

●●●高値続く牛肉卸売価格●●●

 総務省「家計調査報告」によると食料費の消費支出は年々おおむね減少傾向に推
移している中、豚肉、鶏肉は着実に消費量を伸ばしている。一方、牛肉は減少傾
向で推移しており、特に13年度はBSEによる牛肉消費離れがあり大幅に減少し
た。14年度の牛肉は消費の回復があり、前年度をかなりの程度(6.8%)回復し
たが、前々年度比で見ると18.9%下回り、前々年度並みの回復にはほど遠い状況
にある(図3)。
◇図3 食料費の消費支出と食肉の消費割合◇

資料:農畜産業振興事業団調べ
 消費低迷が続く中、乳めす以外の牛のと畜頭数は、15年1月から前年を下回っ
て推移している。これは平成13年のBSE確認時のと畜場の閉鎖、出荷の自粛等
によると畜牛の滞留により、各畜産農家が素牛の導入を遅延したことによると推
測される。

 卸売価格はほとんどの規格で前年を上回って推移している。と畜頭数が少ない
12月以降は高値で推移している。消費が低迷しているにもかかわらず、価格はと
畜頭数に連動している(図4)。
◇図4 牛肉の卸売価格(東京、和牛去勢)◇

資料:農林水産省「食肉流通統計」、東京食肉市場(株)
注 :直近月は、速報値

●●●豚肉輸入量、緊急措置解除により急増●●●

 14年 8 月 1 日から発動されていた豚肉等に係る関税の緊急措置が15年 3 月
31日で解除され、 4 月 1 日から通常ベースの関税水準に戻った。この影響で、
解除後の最初の月となる 4 月の豚肉輸入量は、前月から 6 万 9 千トン増の10
万 2 千トンと急激に増加した。今年と同じように緊急措置の解除後で輸入量が多
かった前年同月との比較でも8.6%増とかなりの程度上回っている。

 財務省が告示した平成15年度第 1 四半期( 4   〜 6 月)の緊急措置の発動
基準数量は、220,706トンであるが、 4 月の輸入量だけで発動基準数量の46.6%
に達している。 5 月および 6 月に昨年と同水準の輸入が行なわれた場合、第 1 四
半期の輸入量は、発動基準数量を超えてしまうだけに、 3 年連続での緊急措置の
発動が懸念されている。

  4 月の輸入量の内訳を見ると、国産品と競合するとみられる冷蔵品は、前年同
月比14.5%増の18,349トンとなり、国別でも米国、カナダともに大幅に増加し
た。前月との比較では約 5 千トンの増加となっており、冷蔵品の輸入増は、ゴー
ルデンウィークの豚肉需要の低迷とともに、連休明けの国産豚肉の価格低迷をも
たらした要因の 1 つであると思われる。

 主に加工用に仕向けられる冷凍品は、7.5%増の84,082トンとなった。国別で
は、デンマークが5.2%減となった一方で、米国、カナダは、10%以上の高い伸
びを示している。
◇図5 豚肉輸入量および輸入価格の推移◇

資料:財務省「貿易統計」

●●●国内産鶏肉(もも肉)卸売価格上がらず●●●

  5 月12日付けで中国産家きん肉の輸入を一時停止した。国産むね肉、もも肉
とも年明け以降近年にない値下がりが続いており、例年ではゴールデンウイーク
での需要増強がみられるため、値上がりを期待したが思ったほどの値上がりはみ
られず、ゴールデンウイーク明けももも肉の値下がりが続いている。むね肉にお
いては、 5 月12日までは近年にない値下がりであったが、冷凍むね肉で多くを
占める中国産家きん肉の輸入一時停止により、若干値をもどしている。

 BSE代替需要はなくなったにもかかわらず、増産傾向であること、国産品在庫
が大幅に増加していること、 1 羽当たりの重量が増加していること、景気低迷に
より食料品支出が減少していること等がもも肉卸売価格の低迷の要因となってい
る。また、卸売価格低迷にもかかわらず、量販店での販売価格は引き下げられて
いないのが現状であり、末端の消費者の購買意欲の向上が望めないことも、卸売
価格低迷の要因と考えられる(図 6 )。
◇図6 国産鶏肉卸売価格(東京、中値)◇

資料:農林水産省「食鳥市況情報」

●●●輸入鶏肉卸売価格、値上がり傾向●●●

 鳥インフルエンザウイルスにより、 5 月12日に中国産家きん肉を一時輸入停
止して以来、タイ産、ブラジル産、および通関済みの中国産の鶏肉の卸売価格が
上昇した。中国産は13年 6 月に鳥インフルエンザにより輸入量が急減して以来、
低迷していたが、今回の輸入一時停止措置により、輸入品の品薄感により、急騰
した感がある。

 SARSによる警戒感からも、タイ産、ブラジル産に切り替えることにより拍車が
かかっている。一方、輸入品と競合する国産むね肉も代替品としての需要がでて
きたため、 5 月12日以降値を上げている(東京)(図 7 )。
◇図7 輸入鶏肉の卸売価格(関東)◇

資料:(社)日本食鳥協会調べ

●●●14年度一般輸入(TE輸入)による指定乳製品等輸入量、ほぼ前年並み● ●●

 14年度の指定乳製品等の一般輸入による輸入量は306件、671.4トンと、前年
度に比べ件数では3件、数量では4.3トン増加し、ほぼ前年並みとなった(対前
年比0.6%増)(図 8 )。

 内訳では、粉乳類が469.2トン(同8.2%増)と全体の約7割を占め、次にバ
ター類83.4トン(同36.6%減)が全体の1割強を占めている。ホエイ関連が61.5
トン(同43.0%増)、れん乳類が57.1トン(同13.0%増)と続いている。
◇図8 TE輸入による指定乳製品輸入量◇

資料:農畜産業振興事業団乳業部乳製品課

●●●チーズ消費量、▲3.0%で前年をやや下回る●●●

 平成15年 5 月19日に農林水産省生産局畜産部牛乳乳製品課から公表された
「平成14年度チーズ需給表」によると、これまで増加傾向で推移してきたチーズ
の総消費量は、14年度は249,418トンと前年をやや下回った(対前年比▲3.0%)
(図 9 )。平成12年度まで順調に増加してきた消費量に、2 年連続でブレーキ
がかかったといえる。
◇図9 チーズの総消費量◇

資料:農林水産省生産局牛乳乳製品課
 総消費量の内訳としては、「ナチュラルチーズ」が130,722トンで全体の52.4%、
「プロセスチーズ」が118,696トンで47.6%と平成5年度以降「ナチュラルチー
ズ」の比率が「プロセスチーズ」の比率をやや上回って推移している(図10)。
◇図10 平成14年度チーズ総消費量の内訳◇

資料:農林水産省生産局牛乳乳製品課
注 :直接消費用ナチュラルチーズとは、プロセス原料用以外のものをさし、
   業務用その他原料用を含む。
 「ナチュラルチーズ」のうち「プロセスチーズ原料用」以外のものを「直接消
費用」(カマンベール等で業務用その他原料用を含む)と称し、区別している。
「直接消費用」のうち「国産ナチュラルチーズ」は13,453トンで総消費量の5.4%
であるが、「国産プロセスチーズ」は111,498トンで44.7%を占めている。しか
し、図10の小円グラフで示すように、「国産プロセスチーズ」の原料となる「ナ
チュラルチーズ」の76.0%が輸入によるものである(図10)。

 14年度の「国産ナチュラルチーズ」の生産量は、「直接消費用」がやや減少す
る一方、「プロセスチーズ原料用」がかなり大きく増加した(図11)。(但し、
「プロセスチーズ原料用」の増加分には、一部メーカーが在庫を「プロセスチー
ズ原料用」として取り崩したものを含んでいる。)
◇図11 ナチュラルチーズの生産量・輸入量◇

資料:農林水産省生産局牛乳乳製品課
注 :直接消費用ナチュラルチーズとは、プロセス原料用以外のものをさし、
   業務用その他原料用を含む。
 プロセスチーズ原料用ナチュラルチーズの国産比率は、国産ナチュラルチーズ
の生産量がやや増えたことに伴い、前年に比べ1.8ポイント増加して24.0%とな
った。直接消費用ナチュラルチーズの国産比率も、輸入数量の減少から10.3%と
前年に比べ0.4ポイント増加した(図12)。
◇図12 国産割合の推移◇

資料:農林水産省生産局牛乳乳製品課
注 :チーズ総消費量の国産割合は、ナチュラルチーズベースで推計
 その結果、14年度のチーズ総消費量の国産割合(プロセスチーズは原料のナチ
ュラルチーズに置き換えて推計)は15.6%と前年に比べ1.3ポイント増加した。

 平成14年度の輸入の内訳を国別に見ると、ナチュラルチーズ全体(直接消費用
+プロセスチーズ原料用)ではオーストラリア、ニュージーランドのオセアニア
地域が約7割を占めている(図13)。
◇図13 平成14年度国別輸入量◇

資料:財務省「貿易統計」

●●●鶏卵の卸売価格、低水準●●●

 鶏卵の卸売価格が低迷を続けている。 5 月の全農のMサイズの卸売価格(加重
平均、東京)は、 1 キログラム当たり144円で前月に比べ17円安となった。14
年末には高値水準を維持していたが、15年 1 月以降、ほぼ前年を下回って推移し
ている。

 農林水産省統計情報部によると、平成15年 1 〜 3 月の鶏卵生産量は、614千
トンと前年同期並みとなっており、価格低下の要因は需要面にあるとの見方が強
い。気温の上昇とともになべ物向け需要が縮小していることに加えて、通常、需
要の伸びるゴールデンウィークでも、今年は例年になく振るわなかったことが、
卸売価格の低下に拍車をかけている。

 一方、今後の鶏卵生産を占う上で、指標となる採卵鶏ひなの出荷羽数(農林水
産省統計情報部)を見ると、 4 月は前年同月をかなり上回る10,715千羽(6.6%)
となったものの、その後は、前年同月比で、 5 月▲7%、 6 月▲1%、 7 月▲6%
と前年を下回って推移すると予測されている。しかし、この動きが実際に鶏卵の
生産減少につながるのは秋以降となるだけに、価格低迷は夏場も続くものとみら
れている。
◇図14 採卵用めすひなの出荷羽数◇

資料:農林水産省「鶏卵流通統計」
注 :15年5〜7月の前年同月比の数値は出荷見通しによるもの

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