★ 農林水産省から


農林水産物貿易レポート2003(概要)

総合食料局 食料政策課




世界の農産物需給の動向

 2002年の農産物需給の動向を見ると、約5年ぶりに発生したエルニーニョ現
象等異常気象を背景として、特に米国、カナダ、豪州を中心に干ばつの被害が
発生したことから、世界全体の穀物(大豆を除く)生産量は前年度比2.6%減
少となり、昨年に引き続き生産量が消費量を下回る見込みとなった。このため、
主要品目の期末在庫率は、小麦21.9%(前年度末は27.1%)、とうもろこし14
.7%(同20.1%)、大豆18.5%(同21.5%)といずれも水準が低下し、穀物全
体では19.5%(同24.2%)と7年ぶりの低水準となる見込みである等引き締ま
りの傾向が伺われる。


世界の農産物貿易構造の変化

大豆の輸入、野菜・果実の輸出が増加している中国農産物貿易

 中国の貿易動向を見ると、コメについては約2億トンを生産し、世界の約3割
を占める世界最大の生産国であり、輸出においても、タイ、ベトナムに次ぐ輸
出国となっている。小麦については、97年以降はほぼ自給を達成し、2001年に
は45万トンを輸出している。とうもろこしについては、世界の約2割を占める
約1億トンを超える量を生産し、アメリカに次ぐ生産国となっている。輸出面
でも世界のとうもろこし輸出量の約14%を占めている。大豆については、96年
以降純輸入に転じ、世界の貿易量の約4分の1を輸入している。

 一方、中国国内において、相対的に土地集約型農業の位置付けが低下する中、
野菜、果実といった輸出向け作物への転換が進んでおり、2001年では、野菜が
約300万トン、果実が約80万トン輸出されている。


米国2002年農業法の成立とその特徴

 米国では、2002年5月に2002年農業法が成立した(対象期間は2002年から200
7年までの6年間)。その特徴的な内容は、基本的に96年農業法の政策を踏襲し
つつ、ここ数年の価格低迷に応じた農家への追加支払いに変わる仕組みとして
価格変動対応型支払いが導入されたことである。

 また、環境保全に関する予算を増額し(約90億ドルの追加予算)、現行施策
の拡充の他、新たに、土壌・水質等環境の保全・改善を推進する農業活動を行
っている生産者に対する支払い(保全セキュリティ計画)を導入した。


WTO交渉を巡る動向

 2001年11月にカタール・ドーハにおいて第4回WTO閣僚会議が開催され、既に
開始されていた農業交渉は、新ラウンドの一部として、他の分野とともに一括
して合意されるべきものとして位置付けられた。

 また、モダリティ(交渉の大枠)について、その決定を2003年3月末、譲許
表の提出を次回閣僚会議までとした上で、交渉期限は、他の分野と同時の2005
年1月1日とされた。その後、次回閣僚会議は2003年9月にメキシコのカンクン
で行われることとなった。

 交渉が進むにつれて、各国の立場の違いが鮮明になる中、米国やケアンズ諸
国は国内支持および関税について5年間で大幅・一律に削減することや、アク
セス数量の一律拡大を図ること等画一的で急進的な市場開放を主張している。

 これに対し、わが国としては、@大幅・一律な支持・保護の削減やアクセス
数量の拡大を求めるような主張は、非貿易的関心事項への適切な配慮を欠いて
いること、A青の政策の廃止や農業生産額を基準とする国内支持削減という主
張は、輸出国を一方的に利するものである上、各国が進めてきた農政改革の努
力を考慮しないものであることから、これらの主張に対してEUを始めとするフ
レンズ国等と連携し、モダリティが非貿易的関心事項を反映した現実的で漸進
的なものとなるよう交渉しているところである。

 このような中、2002年11月のWTO農業委員会特別会合において、わが国は従
来からの主張を取りまとめたモダリティ案を提出した。

 今後は、2003年3月末までのモダリティ確立に向けてさらなる交渉を行い、2
004年末の農業を含む全分野の交渉終結まで、わが国の考え方を力強く主張す
るとともにフレンズ国との連携を更に強化し、出来るだけ多くの開発途上国等
の賛同を得つつ、粘り強い交渉を行っていく考えである。


WTO農業交渉の今後のスケジュール

2003年
 2月14〜16日 非公式ミニ閣僚会議(東京)
 2月24〜28日 モダリティ1次案の検討
 3月25〜31日 農業委員会特別会合
        −農業モダリティ確立−

2004年 9月10〜14日 第5回閣僚会議
          (メキシコ:カンクン)

2005年 1月1日 WTO交渉の終結
         (全分野包括一括受託)


わが国の農産物貿易の動向

米国など特定国への依存度が高いわが国の農産物輸入

 国土条件に制約のあるわが国では、消費者ニーズの高度化・多様化等を背景
に農作物輸入が大きく増加してきた。2001年のわが国の農産物輸入先国を見る
と、米国が36.9%と第1位を占め、次に、中国(12.4%)、オーストラリア(8
.3%)、カナダ(6.4%)、タイ(4.9%)となっている。この上位5カ国で農
産物輸入額の約7割を占めている。

 主要農作物別に輸入先国を見てみると、小麦やとうもろこし等輸入金額の多
い農産物の傾向は特定国への依存が顕著であり、上位2カ国で約8〜9割を占め
ている。特に、米国のシェアはいずれも高く、中でもとうもろこし、大豆は、
それぞれ86.6%、73.8%と圧倒的なシェアを占めている。

 このように、わが国の農産物の輸入構造は、米国を始めとした少数の特定の
国・地域への依存度が高いという特徴を有し、特に、多くの国・地域で消費さ
れ、世界的に需要の増加が見込まれる飼料穀物や油糧種子ではその傾向が強く
なっている。

 このため、輸入に多くを依存しているわが国の食料供給は、国際需給の変動
や輸入先国の輸出政策の影響を受けやすい体質となっている。


素材型から加工型へシフトする食料輸入

 消費者ニーズが多様化する中で、わが国の農産物輸入形態は、従来の素材型
農産品輸入から加工型農産品輸入へシフトしてきている。

 農産物輸入額に占める割合の変化を加工度別(未加工品、半加工品、加工品、
生鮮品)という観点から見ると、90年代前半は未加工品である穀物、綿等とい
った素材型の農作物シェアの割合が高かったが、徐々に低下し、相対的に付加
価値や単価の高い加工品であるソーセージ類、半加工品である穀粉、果汁等と
いった加工型農産物のシェアが上昇している(図1)。また、98年以降、加工
品、半加工品の割合は横ばいないし低下傾向で推移する一方、生鮮品の割合が
増加している。これらの背景には、円高の進行のほか、食生活や消費者ニーズ
の多様化、食品産業の海外投資拡大等による現地の生産増加等があると考えら
れる。

◇図1 農産物輸入額の加工度別割合の推移◇


増加する中国からの輸入農産物

 農産物の輸入数量指数の推移を品目別に見ると、60年代から80年代前半にか
けて穀物およびその調製品や植物性油脂の輸入が大きく増加したが、その後、
その伸びは鈍化している。一方、鳥獣肉類およびその調製品や野菜およびその
調製品は、80年代後半以降、急激に増加しており、近年、わが国農産物の品目
別輸入構造が、穀物や植物性油脂から肉類や野菜およびこれらの調製品へと比
重を移している傾向がみられる。

 具体的な品目として、近年、増加が著しい鶏肉、野菜およびそれらの調製品
の輸入動向を見てみる。鶏肉全体の輸入量は、増加傾向で推移しており、1990
年度と2001年度を比較すると2.4倍の増加となっている。このうち焼き鳥用の
串付きの鶏肉等が含まれる鶏肉等調製品について見ると21倍の増加となってお
り、鶏肉全体の伸びを上回っている。鶏肉等調製品については中国からの輸入
の伸びが著しく、01年度には輸入量の約6割を占めている(図2)。

 80年代後半以降のわが国の輸入増加の背景には、85年プラザ合意以降、円高
ドル安傾向で推移してきた一方で、中国の人民元については、対米ドルレート
が事実上固定され、数次にわたって切り下げられてきたことから、結果として
円高元安傾向で推移してきたこと等の事情がある。しかし、94年の人民元切下
げ、95年の円高ドル安ピークを境に、その後は明確な円高に振れる動きは認め
られないにもかかわらず、近年の野菜や鶏肉の輸入の増加は続いていることか
ら、為替レート以外の要因も重要であることが分かる。

 為替以外の要因としては、まず、野菜の生産は穀物等の場合に比べて労働集
約的であり、中国がその安価な労働力を活かして、日本のマーケット向けに安
価な野菜供給を本格化させてきていることが挙げられる。

 さらに、わが国において、食の外部化が進行し、加工・外食等の業務用需要
のウェイトが大きくなっていく中で、国内生産はそのような業務用需要に対応
しきれていないことが挙げられる。

◇図2 鶏肉及びそれらの調整品の輸入動向◇

・(鶏肉全体の輸入量)

・(鶏肉調製品の輸入先国別輸入量)

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