★ 事業団から


(財)日本食肉消費総合センター主催フォーラム 「MEAT STUDY ミートスタディ」 

−青少年期の食生活と牛肉− 盛況のうちに終了

畜産助成部


 農畜産業振興事業団の補助事業である国産牛肉等需要回復総合対策事業の一
環として平成15年1月18日(土)に静岡市の「静銀アゴラ静岡」にて財団法人
日本食肉消費総合センター主催の表記フォーラムが開催された。浜松医科大学
名誉教授 高田明和先生による「青少年の行動と脳:食の影響は?」および服
部栄養専門学校校長 服部幸應先生による「食育時代〜今こそ本当のおいしさ
を伝えよう」と題した基調講演の後、「青少年期の食生活と牛肉の関わりを考
える」というテーマで東京大学名誉教授 藤巻正生先生をコーディネーターに、
パネルディスカッションが行われた。以下内容を紹介する。


基調講演

【基調講演:高田明和先生】
 高田先生:サル・チンパンジー・人の脳を比較すると動物性タンパク質の摂
取量が多くなればなるほど脳の大きさが大きくなっていることがわかります
(図1)。つまり、知能の発達が見られると言うことです。また、厚生労働省
は、BMI(体格指数:(体重kg)÷(身長m)2が20〜25間では正常だが、どちら
かといえば22ぐらいにしなさいと言っています。ところが、国立がんセンター
研究所の津金昌一郎先生が調べたところでは、22以下になったら死亡率が上が
ってくることがわかりました(図2)。BMI19以下は危ないと言われていますが、
15〜19歳の女性の20数%、男性も15%位の人が属しているのです。統計的に見
ても、過度に太っていることは問題ですが、やせている人のほうが寿命は短い
のです。また、3年ほど前に、70歳を過ぎても頭を使っていると、脳細胞はど
んどん増えるということがわかりました。細胞が増えるということは原料が必
要なわけで、ダイエットは脳細胞への栄養供給を阻害します。さらに、ストレ
スは脳細胞を死滅させます。精神安定作用のあるセロトニンは食肉に含まれる
必須アミノ酸のトリプトファンから作られ脳に供給されます。食事により補わ
なければならない必須アミノ酸をバランスよく十分に含んでいるのは牛肉をは
じめとする食肉です。肉食を上手に採り入れることにより、健康な精神(脳)
を築きたいものです。

◇図1◇


◇図2◇

 服部先生:食という字を分解すると「人」「良」となり、食べることが人を
作ることになります。核家族化が進んだ現在では、その家の伝統食は失われ、
個食も増えています。経験のある人はおわかりでしょうが、病院の食事はおお
むねまずいものです。アメリカで実施された実験によると、入院患者を「おい
しい食事を食べさせるグループ」と「まずい食事を食べさせられるグループ」
の2つに分け入院期間の差を見たところ「おいしい食事グループ」は平均で1週
間早く退院できたと言うことです。牛肉を焼いたときの香りは、脳内へのセロ
トニンの放出を増加させると言われています。また、プロテイン・スコアはお
肉が一番高いのです。必須アミノ酸は9種類ありますが、子供さんの段階では
もう1種類足して10種類となります。このバランスが一番良いのは実は食肉で
す。これを大豆タンパクから取ろうとすると食肉の32〜33%しかありません。
おいしく、楽しく、バランスの良い食生活を心がけ充実した人生を築きたいも
のです。
【基調講演:服部幸應先生

パネルディスカッション

青少年期に牛肉を食べる意義:

 私たちの身体は、筋肉も脳もタンパク質からできている部分が非常に多い。
特に脳は特別にある種のタンパク質の成分を必要とする。そのタンパク質はア
ミノ酸からできていますが、このほとんどのものは食べ物、特に肉から摂るこ
とが絶対必要です。(高田先生)

 栄養調査をして鉄分が意外に摂られていないことがわかりました。牛肉には
鉄が非常に多く含まれており、子供たちも喜んで食べる食品なので、もっと見
直して欲しい。(阿部先生)

 小学生にも広がるダイエット志向:女性でもコレステロールから男性ホルモ
ンが一旦できて、そこから女性ホルモンができるわけです。その女性ホルモン
が脳に働いて排卵とか生理を起こさせるのです。今日の中高生の生理不順の問
題は、体重減少性無月経が一番多いとのことです。少子化が問題になっていま
すが、栄養が悪いから子供を作ることができない人が多くなるということです。
(高田先生)

 その他、事前に参加者から寄せられていた質問内容について、Q&A方式で討
論が進められた。最後に各パネリストから一言

阿部 裕吉先生(学校給食研究会事務局長):安全の確認という点からも、
        給食にも地産地消を採り入れていただきたい。

狩野まりの先生(静岡市「食と農の環境推進協議会」事務局長):消費者も勉
        強して正しい情報を得る努力をしたい。

高田 明和先生:研究を生かし情報を提供したい。

服部 幸應先生:おいしいステーキの焼き方:魚とは違い、牛肉を焼くとき、
        塩は、焼く5分前くらい、もしくは焼き初めてから振る。

望月 輝一先生(静岡県農業水産部畜産統括官):信頼回復に向け、精一杯努
        力をしたい。

藤巻 正生先生:今回は青少年に対する食肉の重要性を考えましたが、呆け防
        止、長寿など老人にとっても牛肉は重要です。(会場から拍
        手)
【コーディネーター:藤巻正生先生】
 会場から直接質問を取る時間がないほどディスカッションは盛り上がった。
基調講演2題とパネルディスカッション。都合3時間のフォーラムは長いかなと
も思われましたが、ディスカッションの時間はむしろ足りませんでした。当日
は春を思わせるような暖かな日よりにもかかわらず、250余名の方々のご来場
いただき、盛況のうちにフォーラムが終了しましたことに対し、心より御礼申
し上げます。
【パネル全景】

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