埼玉県/中島 一郎
BSEの発生、食肉偽装工作事件などを背景に、牛肉のトレーサビリティシス テムが全国的に展開されつつある。「全農さいたま」では、埼玉県を代表す る銘柄「彩の国黒豚」について、消費者が安心して購入できるシステムを構 築するため、平成14年10月31日から、生産・流通履歴を公開した販売を開始 した。 このシステムでは、農家から出荷される豚1頭ごとに「全農さいたま」が個 体識別番号を付与し、消費者は「全農さいたま」 のホームページ(http://www.st.zennoh. or.jp/kurobuta/kurotop.html)から識別番号を検索して、生産・流通履歴を 入手する仕組みとなっており、豚1頭ごとに情報を管理・公開している点が最 大の特徴である。 「彩の国黒豚」は、現在、深谷市や花園町などの生産者6戸で飼養され、年 間約4,200頭が出荷されている。 生産者住所・氏名の他、飼育方法の特徴、と畜場名・と畜年月日、カット 施設名・カット年月日、販売店・入荷年月日などの生産・流通履歴が、埼玉 県内を中心とした百貨店、スーパーおよび精肉専門店の18店舗で公開されて いる。 取組開始から3カ月間で、約1,000頭の黒豚が出荷され、各々の情報が公開 されているが、豚肉小売量を200グラムパックに換算すると12万パックに及ぶ。 消費者からは、「素性がはっきりしているので安心して購入できる」と好評 を得ており、生産者においても、消費者に直接情報やメッセージが届くシステ ムであることから、より安全な豚肉の生産に向けた意欲・責任感が高まってい る。 なお、埼玉県では、HACCP方式の考え方を取り入れた埼玉県独自の生産ガイ ドライン(肉牛、乳牛、豚、鶏、露地野菜、水耕野菜)を策定したが、黒豚生 産農家においても、このガイドラインに基づく衛生管理を進めている。