北海道/中村 保彦
別海町農業・農村情報ネットワークの構築により、@高度農業気象情報、A 酪農技術情報、B農家経営情報、C関係機関・団体情報の提供が可能になった が、情報の有効活用による農家における経営改善の効果は計り知れないものが ある。 システム運用から1年を経た13年時点でのアンケート調査では、技術情報を 毎日利用する人が15.6%、利用する人が52.8%となっておりWebデータの落ち 方から見ると少なくとも月に一度はデータを取り入れる人は(乳検データの更 新が月に一度)6〜7割になると推測される。(残りの人はファクス情報を利用 しており全戸に資料は送られる)。全農家の点検とデータの取り込み状況を調 査し、パソコンの利用環境の整備をしている。 その他のパソコンの利用として簿記・税務申告などの経営に利用する人が28 .3%、個人的利用が41.9%、その他利用が16.8%となっている。プロバイダー 加入率はアンケート調査時は43%程度有り、現在は半数を超えていると推測し ている。また、パソコンを使う人は1戸当たり1.7人程度おり、日常的に使用さ れつつあると考えられる。さらなるシステムの有効活用と利用者の技術向上が 課題となっている。 日常的な酪農技術情報(生乳検査、乳牛検定成績、人工授精情報、疾病情報 など)に加えて、営農支援システムの導入によって農家の経営データを農協毎 にデータベース化したことから、営農計画対比、経営シミュレーションが容易 になり、経営相談機能の向上を図ることができる。当初もくろんでいた経営と 技術の組み合わせによるコンサルティング機能については、それぞれの相関係 数と回帰式を求め、およそ50項目に絞り込み経営診断参加農家の位置付けを可 能にした(次頁参照)。その結果5農協内、農協別、階層区分別、飼養形態別、 階層内の単純平均と標準偏差を知ると共に、およそ1,000戸の参加農家の中で の位置をチャートで示すことにより、それぞれの農家経営の特色、長所、短所 を知ることができ、今後の経営改善の方向と意志決定が容易となった。 ネットワークの運営については農協・町が中心となって運営協議会をつくり、 メンテナンス、システムの改善、機能の強化、システムの普及と有効活用の推 進を図っている。消費者・都市生活者・需用者からの「食の安全・安心」に対 する関心が高まるにつれ、生産者側の対応が求められているが、新たに要求さ れる機能の付加を検討しシステムの強化を図っている。 さらに町内全体の酪農に関わる問題を解決するためNTT研究所と共同研究を 立ち上げ、側面的な支援を行っている。窒素・リンの環境負荷を減少させるふ ん尿処理対策と手法の開発、HACCP的手法の導入による生産履歴の管理、酪農 部門のトレーサビリティの研究、農家経営診断の改善(次頁参照)、IT技術を 利用した個体管理・分娩管理技術の確立などがそのテーマである。 農家が生き生きと生産に励むことができる生産環境をネットワークを通して 作り上げることを目指している。 (第1回は2003.3月号に掲載しております。) *** 経営診断票のデータからわが家の位置を確認しよう *** 別海町「酪農に関する共同研究委員会」 グラフは平成13年の973戸(乳検606戸)のデータを基に作成したものです。 ●と▲が農家個々の成績です。(●は分離給与、▲はTMR給与、◆は本人) −グラフの見方− わが家の経営を診断するために、50の項目で行っている。 各グラフの右上の数字は経営診断票の項目番号です。 9 −48とは、9番目の 項目(横軸)は経産牛1頭当たり乳量(kg)、48番目の項目(縦軸)は1頭当た り農業所得で作成したグラフです。 50項目の組み合わせにより、いろいろな角度から経営診断ができます。 経営診断票に記載されているわが家のデータを見て、どの点がわが家のデー タか探してみましょう。 グラフには、成績の傾向を計算した回帰式と線(太線は分離給与、細線はTM R給与)も記入しています。 1 頭当たり乳量が高くなると、数字が大きくなる項目は右上がりの線とし て表示されています。 農業所得の回帰式y=0.0321x+3.1619は、乳量を7,000kgとすると0.0321 ×7,000+3.1619を計算して農業所得は227.8千円となります。 経産牛 1 頭当たり乳量1,000kgの増加は、回帰式では0.0321×1,000で、農業 所得の32.1千円の増加となります。 乳飼比(全体)は飼料費(育成分含む)/乳代×100で算出しています。 *成牛換算 25カ月以上の牛を1頭と換算し、1〜12カ月までを0.3頭、13〜24カ月までを0 .7頭と換算し、計算する