北海道/別海町「酪農に関する共同研究委員会」
これは酪農経営の課題となっている乳質、中でも今後さらに改善が期待され ている「体細胞数」について、生乳生産・乳検・クミカン(組合員勘定)等に どのような傾向があるのか、集計したものである(平成13年調査)。 毎月10日ごとに公表される(年36回)旬報の体細胞数30万以上の検出回数 (以下、体細胞数の回数という。)により分類し、また、飼養方式を「繋留」 と「フリーストール(以下、FSという。)」とし、また、乳牛検定組合の加 入状況により「乳検加入」と「乳検未加入」として、計4区分により集計を行 った。 集計戸数は生乳生産・乳検・クミカン等のデータのそろっていた974戸によ るものである。 1 体細胞数の現状 体細胞数の回数別の戸数は、1〜5回が335戸(974戸の34%)で、うち繋留・ 乳検加入が187戸、0回は167戸、26回以上は45戸だった(図1)。 ◇図 1 体細胞数30万以上の回数別農家戸数の分布◇ 経産牛頭数の平均は、繋留で60頭前後、FSで110〜90頭であった。FSで体細 胞数の回数が多い農家は経産牛頭数が少なかった(図2)。 ◇図 2 体細胞数30万以上の回数別の経産牛頭数の状況◇ 平均体細胞数(36旬の成績を平均)は0回で15万、1〜5回が20万、6〜10回が 25万、21〜25回が35万であった。 体細胞の回数が多くなると平均体細胞数が多くなり、繋留とFS、乳検加入と 乳検未加入に差は見られなかった(図3)。 ◇図 3 体細胞数30万以上の回数と平均体細胞数の状況◇ 牛群にしめるリニアスコア5(国際基準体細胞数28.3万〜)以上の牛の割合を 乳検成績で見ると、体細胞数の回数0回で10〜12%、1〜5回で17〜19%、6〜 10回は25%となっている(図4)。 体細胞数の回数を少なくするために、牛群内の体細胞数の高い牛の割合に 注意が必要である。 ◇図 4 体細胞数30万以上の回数とリニアスコア5以上の頭数(%)(乳検)◇ 体細胞数の回数と生菌数の平均を見たものである。0回では3千、1〜5回では 5〜6千で、回数が多くなると生菌数も高くなっている(図5)。 搾乳器具の衛生管理の徹底や牛舎環境の向上による乳牛周辺の細菌数の減少 が体細胞数を少なくするために大切である。 ◇図 5 体細胞数30万以上の回数と生菌数の状況◇ 体細胞数の回数と経産牛1頭当たり乳量について見たものである。 繋留(実線)・乳検加入を見ると、0回で7,730kgから、1〜5回で7,300kg、6 〜10回で7,080kgと少なくなっている。 繋留・乳検未加入では0回から5〜10回まで6,500kg前後で、11〜15回で6,080 kgと少なくなっています。 FS(点線)・乳検加入を見ると、0回で8,270kgで、1〜5回が7,790kgとなっ ており、乳検未加入では0回で7,625kgで、1〜5回で7,430kg、11〜15回が6,780 kgとなっていた(図6)。 体細胞数の回数が増えると経産牛1頭当たり乳量が少なくなっている。乳牛 の能力を発揮させるためにも体細胞数を増やさないことが大切である。 ◇図 6 体細胞数30万以上の回数と経産牛1頭当たり乳量◇ 体細胞数の回数と乳飼比*を見ると、繋留(実線)・乳検加入が25%程度、 乳検未加入が21〜23%となっていた。FS(点線)では0回の乳飼比は31%前後 であったが、回数によりばらつきが見られた。 体細胞数の回数21〜25回以上でやや高くなっている(図7)。 * 牛乳の代金の中の購入飼料の割合 ◇図 7 体細胞数30万以上の回数と乳飼比(成牛飼料)◇ 体細胞数の回数と分娩間隔(棒グラフ)を乳検成績で見ると、0回で分娩間 隔409日が、1〜5回で416日、6〜10回で423〜434日と延びている傾向が見られ た。 初回授精日数(折れ線)は、繋留の0回で80日、1〜5回で86日と遅くなる傾 向が見られた(図8)。 ◇図 8 体細胞数30万以上の回数と繁殖成績(乳検)◇ 体細胞数の回数と経産牛1頭当たり農業収入を見ると、繋留・乳検加入で、 0回が712千円、1〜5回が666千円、6〜10回が641千円と減少傾向が見られ、乳 検未加入は0回の567千円を除くと、1〜5回が586千円、6〜10回が571千円、11 〜15回が540千円と減少傾向が見られた。乳代の割合は乳検加入で82%程度、 乳検未加入は84%前後となっている(図9)。 ◇図 9 繋留飼養農家の体細胞数の回数と収入の状況◇ FS・乳検加入では、0回が733千円、1〜5回が693千円、6〜10回が674千円と 減少傾向が見られ、乳検未加入は0回が681千円、1〜5回が651千円、6〜10回が 494千円、11〜15回が603千円と減少傾向が見られた。乳代の割合は83〜86%と なっていた(図10)。 ◇図10 FS飼養農家の体細胞数の回数と収入の状況◇ 農業支出を見ると、繋留・乳検加入で、0回が450千円、1〜5回が425千円、6 〜10回が420千円と減少傾向が見られ、乳検未加入は0回の338千円、1〜5回と6 〜10回が360千円前後、11〜15回が325千円とやや減少傾向が見られた。 農業所得は繋留・乳検加入で、0回が261千円、1〜5回が241千円、6〜10回が 221千円と減少傾向が見られ、乳検未加入は0回と1〜5回が228千円で、6〜10回 が209千円とやや減少傾向となった(図11)。 ◇図11 繋留飼養農家の体細胞数の回数と農業支出・農業所得◇ FS・乳検加入では、0回が533千円、1〜5回が487千円、6〜10回が466千円と減 少傾向が見られ、乳検未加入は0回が468千円、1〜5回が422千円、6〜10回が325 千円、11〜15回が435千円となった。 農業所得はFS・乳検加入では、0回が199千円、1〜5回が206千円、6〜10回が2 09千円となっており、乳検未加入は0回が213千円、1〜5回が229千円、6〜10回 が168千円、11〜15回が147千円となった(図12)。 ◇図12 FS飼養農家の体細胞数の回数と農業支出・農業所得◇ 2 分析結果より 体細胞数30万以上の回数の少ない農家は個体乳量、農業収入、農業所得が多 く、繁殖成績も良い傾向にある(図13)。 積極的な体細胞数の改善への取り組みが経営改善においても欠かせない。 図13は体細胞数30万以上の回数と平均体細胞数の個々のデータの分布図を表 したものである。 体細胞数30万以上が0回でも平均体細胞数は5万から22万の農家があった。わ が家に合った体細胞数の目標を持ち、総合的に取り組むことにより、精神的に も経済的にもより豊かな酪農経営が展開されることを期待する。 ◇図13 体細胞数30万以上の回数と平均体細胞数◇