大分県/植木 佳孝
大分県日田市の有限会社本川牧場は2代目となる本川角重社長が昭和42年に 就農した時点では、経産牛20頭であった。 増頭へのきっかけは、昭和50年に現在の土地へ移転した際、みかんジュース の絞りかすや焼酎かすを利用したTMRの生産・販売を行う別会社を設立したも のの、当初は品質が不安定で販売が伸びず、在庫のTMRを処理するために、自 宅の乳牛を増頭したのである。 その後、TMRの品質も向上し、安定したえさの確保に自信ができ、平成8年に 経産牛355頭の牛舎と20頭ダブルのミルキングパーラーを建設し、翌年には更 に160頭分を増築、搾乳牛555頭にまで拡大した。現在は西日本でも最大規模の 経産牛約960頭を飼養し、15年度中には経産牛1,500頭を超える予定である。 本川牧場では、現在約11名の従業員と18名の搾乳パートを雇用し、種付け・ 分娩・搾乳の3本柱には専門の職員を配置し、分娩間隔や平均乳量の目標値を 設定し、職員が目的意識を持って仕事ができる環境を整えている。 牛舎は、牛の肢蹄の病気を防ぐため、フリーバーン方式を導入し、1頭当た り8.5平方メートルのゆとりを持たせ、直下型扇風機を設置し換気も良好であ る。経産牛はIDタックを使い歩数や乳量の変化で発情を見逃さない体制を整備 し、妊娠鑑定も必ず行い分娩後80日を経ても受胎していない牛は雄和牛のいる 牛舎に移動させる。 その結果、平均空胎期間は93日、年間平均乳量は3回搾乳で10,000キロを達 成している。また、子牛は管理が均一化できる自動ほ乳機をいち早く導入し、 約150頭の子牛を1人で管理し、死亡率を3%以下に抑えている。 ふん尿処理は、日田地域は林業が盛んなことから、敷料にオガクズ等の副資 材を確保し、牛舎でふん尿を吸着させ、地域の共同利用堆肥センターで処理し、 周辺の梨団地や耕種農家へ還元する体制を整えている。 また、環境対策の徹底を図るため、平成14年11月にはISO14001を取得するな ど、人・牛・環境に気を遣いながら問題の解決に当たっている。 一般的には、規模拡大を行うと労働力の確保と牛群の管理、ふん尿処理等の 問題が起こりがちであるが、 本川社長は、「大型経営の魅力は、スケールメ リット」と語り、規模拡大による所得の増加により、施設への投資や雇用の拡 大を容易にしている。 さらに、本川社長の「これからの酪農家は、酪農の技術だけでなく、時代を 先取りした経営者としての感覚が必要だ」との考えは、周辺農家へ刺激を与え、 大分県酪農の牽引役となっており、大分県の酪農家1戸当たりの平均飼養頭数 は52.8頭と九州でも最大規模となっている。
【フリーバーン牛舎で くつろぐ牛たち】 |
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【現在建設中のロータリー パーラー(50頭搾乳)】 |