北海道/市村 健
「これだけの牧草やわらなどの地域資源が町外に出ていくだけなのはもった いない」と語り、その解決に自ら取り組んでいるのが、柳原寛さん。水田農家 でありJAの専務でもある柳原さんは町内の4戸の農家とともに平成14年、黒毛 和種繁殖牛を導入した。 北海道のなかでも長沼町を含む南空知地域は国内有数の水田地帯である。そ の反面、畜産農家の割合は少なく、特に和牛飼養農家は町内にゼロであった。 長沼町では近年転作面積が増加、その中で町外販売向け牧草の生産面積も増 加して行った。また麦稈の販売も増え、これら生産物の町外畜産農家への移出 が増えて行った。一方長沼町では生産部会ごとに道の認証制度を得るなど、地 域をあげてのクリーン農業への取り組みは進められてきた。しかし、一歩進ん で「地域循環型農業」を目指すには作物残さの町内での低利用率や堆きゅう肥 量の不足が障害となっている。 そんな長沼町に、道内でも畜産の盛んである勝管内音更町で和牛繁殖経営を していた関川彰さんが、平成11年に転入してから町内での和牛経営が始まった。 もともと水田地帯の地域資源に興味を持っていた関川さんは、利用率の低かっ た稲わらの収集・飼料化に精力的に取り組んだ。 関川さんの活動を見てきた柳原さんなど5名の農家が「自分たちも牛を飼おう !!」ということになった。そのうち4名は共同牛舎を建築、柳原さんは独自牛 舎を建築して、それぞれ妊娠牛を含む繁殖めす牛を導入した。日々の管理は関川 さんの指導のもとお互い助け合いながら行っている。特に柳原さんの後継者の孝 二さんは牛の管理はもちろん仕切り柵の製作や牛舎の修繕なども積極的にこなし ている。 約1年経った今、順調に子牛が出生し成育しており、近々初出荷となる。現在 繁殖牛は30頭あまりだが、状況を見て今後増頭する予定である。何よりもこの5 名が中心となって長沼町の和牛における担い手が増えてくることが期待される。
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肉牛導入に関する会議 (新規導入者及び関川さん(左から3人目)、左端は柳原 寛さん) |