北海道/宮嶋 望
フェルミエチーズ製造19年 十勝に入植して25年、加工センターを得て正式にチーズ製造の研究を始めて 19年が経つ。平成元年にフランスへ行きAOCチーズ協会のJean HUEBER会長に会 い、日本で美味しいチーズを作りたいと話したことから、平成2年、来日し、 フランスAOCチーズの考え方、原産地呼称の認証制度の意味を「第1回ナチュラ ルチーズサミットIn十勝」で話してくれた。彼の「牛乳を運ぶな」との言葉に 従って、共働学舎に新しい牛舎、搾乳室、チーズ工房を隣接させ建築した。炭 と土壌微生物を使い、発酵作用を最大限に利用する仕組みはHUEBER氏にも認め られ、その後のチーズづくりを支えている。 フランスから学んだチーズ 新しい工房では、AOCチーズのコンサルタントを招き、チーズ製造講習会を 平成4年から毎年行っている。地元の十勝地方のみならず、北海道以内や、府 県からも小規模製造に関心のある人達が集まり、製造技術、衛生管理システム 作り、品質管理技術としての官能評価法などを一緒に学んでいる。 小規模工房や牧場の工房(フェルミエタイプ)のチーズ作りは増えてきが、 まだヨーロッパのコピーがほとんどだ。パリのコンクール・ジェネラルのチー ズ部門でジャッジをやらせてもらうようになり、ヨーロッパの人々がどのよう に日本の市場を観ているかも掴み、食に対する価値観を共有できると非常に期 待していることもわかった。 ヨーロッパのプロの目にさらす ヨーロッパのチーズの会議に招かれ、名だたるチーズの生産者、流通の人々 と顔見知りとなり、日本のチーズ生産者として認められるようになったが、果 たして、我々が作るチーズが日本固有の特徴を持っているか、自問してしまう。 6月に若い製造チーフが独自の日本で売れそうな白カビチーズを持って、サン トモールのコンクールへ行った。一つは脂肪分の高い白カビタイプの日本のマ ーケットが受け入れやすいもの「雪」。楕円形の型で作った。よく出来たもの だがフランスのものに似ていて特徴のアピールが足らない。もう一つは笹を巻 いた白カビタイプの「笹ゆき」。特徴はあるが若干の苦味があると評された。 笹を使うことで白カビの繁殖を促し、苦味が出やすい。カマンベールタイプの 「雪」より売れてはいるのだが、苦味に対しては厳しい。 オランダ、デンマーク、スロベニアなどからのチーズと並んでジャッジを受 けたわけだが、標準的な質は満たしているが、日本らしい特徴にもっと磨きを 掛け、バランスを整えていかなければならないという課題も見えてきた。 牛の飼養形態、牛種、生乳の衛生管理を含め、チーズの質の向上を目指した い。
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笹ゆき |
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1年に1回、フランス・サントモールで行われるチーズ祭り (2003i.6月) チーズコンクールに参加している国々とそのチーズの特徴 の紹介 |