◎地域便り


大分県 ●和牛繁殖肥育一貫経営の拡大と
     循環型農業の確立

大分県/農政部畜産課


 大分郡庄内町の川野寿明さんは30歳の時、畜産業を生涯の職業とすることを
決意し、勤めていたホテルを退職された。

 当時、実家では父親が黒毛和牛15頭を飼育していたが、これを機に父親から
経営の全てを任された。

 しかし、この頭数では生計を立てるのも難しく、とにかく頭数を増やして所
得を確保するため、その後5年間で母牛30頭の規模にしようと考え、毎年4頭ず
つ育成牛を増やし、何とか予定通り計画を達成し、売上の目標としていた1,200
万円を実現することができました。

 肉用牛を増頭する中で稲わらの不足が問題になってきた時には、稲わら確保
のため、稲刈等の受託作業を行い、6haの自作地と堆肥と交換した6haで計12ha
の稲わらの収集を行った。

 現在、母牛29頭、肥育54頭。今回「豊後牛飼い塾」卒業に当たり、大規模・
低コスト実践計画を立てられた。「目標とする営農は、肉用牛(黒毛和牛)繁
殖・肥育一貫経営で、経営理念においては、自給的複合経営、特に畜産と耕作
部門が連携する循環型農業を実現することだ。」と語る。

 また、経営改善においては、「第一に繁殖畜舎の建設による飼養管理の省力
化。母牛50頭に規模拡大し、牛舎は分娩待機牛群、哺育牛群、子牛の育成群に
分けて、パドックを仕切る。哺育中の牛は、さらに小区画で管理する。育成牛
は肥育素牛に、一部は子牛市場に出荷する予定だ。将来的には、「TMR」や
「哺乳ロボット」等の導入も検討している。」

 「第二は堆肥舎増設で良質堆肥の生産・流通である。生産量の約8割は水田
に還元しているが、完熟したものは、施設園芸農家(いちご・トマト・野菜)
に大変喜ばれている。搬入散布を行えば稲わらは十分に確保でき、「にら・ト
マト」農家にあっては、年間契約の話もあり絶対量不足が現状だ。」

 「第三に、採草地整備および収穫機械の導入で、畜舎近くの里山を採草兼放
牧地にする。現状はタイトベーラーでの収穫作業に大変苦労しているので、作
業の省力化のためロールベーラー、ラッピングマシンを導入して、良質な粗飼
料を確保していきたい。

 また、生産調整田に飼料用稲を作付し、「ホールクロップサイレージ」を作
っている先輩もおられるので、今後、取り組んでいきたい。」

 「第四はパソコンによる個体管理である。出産から枝肉出荷までの餌の摂取
量や治療経歴等を管理し、上物肉の生産とトレーサビリティの確立に活用した
い。このことが少しでも消費者の牛肉に対する安心に役立つと幸いに思う。こ
れらの目標に向かって日々努力していきたい。」と語る。

 最後に経営者として信念としたいことはと伺うと、@「全ては自分の考え方
次第でどうにも変わっていく」A「前途洋々たるものを信じて夢を語りながら
取り組めば必ず担い手は育ち、経営内容も良くなる」B「小さなことでも真心
を込めて全力を尽くす心」C「志を大きく持てば必ず大きい結果が生まれる」
と話してくれた。
  
パドックの風景
餌を与える川野氏

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