◎専門調査レポート


コントラクターが担う稲発酵粗飼料生産システムと今後の課題

−千葉県干潟町農事組合法人「八万石」−

九州大学大学院 農学研究院
助教授 福田 晋


はじめに

 稲発酵粗飼料(以下、WCSと表記する。)は、「稲」を作付けする点で農
家の抵抗感は少なく、湿田の作物としても有利性を持っている。一方で、家畜
のトレーサビリティシステムが構築されようとしている現在、国産粗飼料は安
全性の確保の面から増産が望まれ、WCSはニーズが高まると考えられる。ま
た、転作に関わる稲作農家への10アール当たり最高7.3万円の助成金、10ア
ール当たり2万円の畜産農家への給与実証助成金もあり、急速に水田転作作物
として拡大している。

 ところで、現在水田生産調整に関わるWCSの生産利用は、大きく4つのタイ
プに分かれる。まず第1に、畜産側が栽培管理から収穫調整までの全作業を実
施するタイプであり、このタイプは当然のことながら流通は発生しない。第2
に、稲作側が栽培管理から収穫調整までの全作業を実施するタイプで、稲作営
農集団が主体となればこのタイプとなる。第3に、稲作側が栽培管理し、畜産
側が収穫調整作業を実施するタイプであり、作付け面積の多い宮崎県などに典
型的に見られるタイプである。そして第4に、稲作側が栽培管理し、収穫調整
作業以降をコントラクターに委託するタイプで、受託組織などが存在すれば、
このタイプが該当する。

 このように大まかな分類でも4タイプに分かれ、その内容をさらに詳細に見
れば、地域に応じたさまざまな取り組みを見ることができる。

 ところで、上述した4つの分類のうち、畜産農家が自らのほ場で飼料稲を栽
培して利用する第1のタイプ以外は、当然WCS の供給者と需要者がおり、そ
こにはWCS製品の契約・取引、流通といったものが発生する。この場合も、
南九州のように畜産農家が分厚く存在している地域では、畜産農家と稲作農家
が比較的近くに立地し、お互いが知己の関係にあるため契約取引における問題
が発生することは少ないといえる。例えば、宮崎県国富町では、耕種農家と畜
産農家の協定が農家および農家集団レベルで120グループ存在する。これは、
町の生産振興会等における合意形成の賜物であり、耕種農家、畜産農家ともに
顔の見える地域内での調整システムが合理的に働いた結果ともいえる1)。

 しかし一方、畜産農家が少数で、耕種農家と畜産農家が地理的にも乖離して
いれば、相互に全く無関係であり、畜産農家が遠方の分散したほ場まで収穫に
行くこともできず、第三者が収穫、調整、輸送を行うことになる。当然、製品
の品質管理が重要となり、生産コストを反映した有償取引が行われてくるよう
になる。このような地域においては、耕畜両部門を仲介する組織の役割が極め
て重要になり、実際の収穫作業や運搬作業が効率的に行えるコントラクターの
ような組織が必要になる。関東、東北では、すでにこのような機能を担う仲介、
作業主体が従来の稲作部門の組織化から派生している2)。そして、本稿で取
り上げる事例は、まさに稲作の農事組合法人がコントラクターとしてWCS の
需給に関わっているケースである。

 調査の対象となる干潟町は千葉県北東部に位置し、耕地面積1,647.7ヘクタ
ール(平成12年)のうち1,262.2ヘクタール(76.6%)を水田が占める水田
地帯である。その水田の大部分は標高2〜3mの平坦地であり、一部の水田を
除いて水稲以外の作物栽培が困難な強湿田地帯である。

 農家数は971戸で、うち専業農家が230戸を占め、1戸当たり1.7ヘクター
ルの経営規模である。

 農業粗生産額は平成11年現在で111億円であり、畜産が52.7億円(47.4%)、
野菜33.4億円(30.0%)、米16億円(14.4%)という構成になっている。
 

WCS取り組みの背景とコントラクターの存在

減反拡大下のWCS生産の取り組み

 千葉県では平成12年度にWCS試作が始まり、13年に給与実証事業制定の中
で試験的栽培も含めて14市町村、39ヘクタールの作付けが行われた。14年度
には79ヘクタールと2倍に達している。栽培品種は14年度「はまさり」「中
国146号」を主とした専用種は12%で、他は早生「ふさおとめ」を主とした
食用種である。食用種が主となる要因は、千葉県内はすべて9月に収穫が終了
する早期栽培であるため水利慣行の制約があること、9月以降は降雨確率が高
く収穫調製作業が困難であることが指摘されている。

 ところで、干潟町における平成14年時点での転作割り当て面積は約454ヘ
クタール、転作配分率36%の高さであるが、転作実施面積は311ヘクタール
で達成率68%にとどまっている。湿田が多く、転作の実施が困難な地域であ
ることがわかる。もっともこの転作割り当てが20%台の平成初期までは、水
田を客土し、ビニールハウスによる施設園芸を規模拡大してきた先進地域であ
った。しかし、30%を超える割り当てがきてからは条件の悪い水田の転作に
苦慮してきたという意味で「限界感」が見えていたといえよう。

 そのような中で干潟町では平成12年度から担い手育成型県営ほ場整備事業
により強湿田だった水田が乾田化され、大区画化が行われた。担い手育成型ほ
場整備事業は、農地利用の担い手への集積が要件とされている。平成11年度
には農業改良普及センターの協力を得て、麦、大豆等土地利用型作物の推進、
団地化、担い手(後述する農事組合法人「八万石」)への集積に取り組んだ。
そして12年度には飼料稲の試験栽培を1.2ヘクタール(3箇所)実施している。
この12年度の取り組みをきっかけとして、13年度には町全体で集落座談会等
を通じてWCSの集団栽培について推進するとともに補助事業によりWCSの収
穫専用機(ダイレクトカット方式)を購入し、作付けが25.1ヘクタール(町
外5.7ヘクタール)に拡大し、14年度には49.6ヘクタール(町外6.6ヘクター
ル)と2倍以上に拡大しており、沿海部の区画整理された圃場に団地化して作
付けされていることがわかる。
 

WCS生産を担うコントラクター
ー農事組合法人「八万石」ー

 農事組合法人「八万石」は、4名の先進的農家が集まって平成12年3月に設
立した組織体である。上述した試験栽培の担い手になったのが、この法人の前
身の「八万石営農組合」(平成元年設立)であった。1年2作の麦・大豆栽培に
取り組むとともに、平成13年からは、WCSの収穫・調整作業の全面受託に取り
組むこととなった。この八万石がWCS生産の担い手となったのには、2つの理
由があると思われる。まずWCSを転作として作付けする稲作農家はいたが、
収穫からサイレージ調整まで行う農家はなかった。そして、利用する畜産農家
は広く町外から求めたが、遠隔地のため収穫調整まで町内で行うものがいなか
った。つまり、作付けと製品を利用する者はいたが、稲を収穫しWCS製品を
作る担い手に欠けていたのである。第2に、担い手育成型のほ場整備を実施し
たことで、農地の利用集積を図る必要があり、麦、大豆の転作と同時にWCS
も受託する構造を作らなければならなかったという点である。水田農業におい
て、米に代わる作物の選択だけでなく、八万石のような法人にWCSを始めと
する水田農業の再編を担わせるという意味において、水田農業構造の再編にも
寄与しているといえる。

 4人の経営は代表者のiAi氏が30ヘクタールの水稲専業、B氏が水稲10ヘク
タール+タバコ3.5ヘクタール、C氏が水稲17ヘクタール+施設野菜800坪、
D氏稲作30ヘクタールと多様であり、いずれも水稲作の大規模経営といえる。
そして、八万石としては、小麦20ヘクタール、大豆20ヘクタール、WCS受託
50ヘクタール、稲わら収集28ヘクタール、麦わら収集20ヘクタール、その他
の各種作業請負を行っている。

 大規模経営を実現するために、農地の集積が必須の課題となるが、町では干
潟町推進協議会(町長が会長就任)がいったん農地を借り入れて、そこから八
万石が借り入れるという形態をとっている。公的な機関が関与していることに
よって農地貸し出しへの抵抗感を和らげることに成功している。

 ところで、八万石の機械装備について表1に示している。13年以降に飼料稲
を本格的に導入したことを考慮すると、WCS関係に集中的な投資が行われて
いることがわかる。
農業組合法人「八万石」の古橋氏と筆者

注:資料は「八万石」資料から引用している。
  NO.は導入順を示している。

WCSの需給システム

需給システム

 干潟町におけるWCSの生産システムは、耕種農家が通常の水稲栽培同様の
栽培体系により収穫直前まで管理を行い、八万石がそれ以降の収穫、調製、運
搬作業までを請け負って、畜産農家に供給し、代金精算まで行っている。WC
Sの取引契約自体は、稲作農家と畜産農家との間で水田飼料作物利用供給契約
が結ばれ、10アール当たり30,000円で畜産農家がWCS製品を購入し、WCS
が腐っていたり、カビ等が発生してた場合は料金を徴収しないという内容にな
っている。作付け品種は、専用品種である「はまさり」(10月収穫)と食用
品種である「はえぬき」、「ふさおとめ」(8月収穫)を用いている。

 実際にWCS の生産に関わる農家は平成13年で28戸、24.6ヘクタール、15
年は42戸、47.4ヘクタールとなっており、利用する畜産農家は14年18戸(
町内3戸)、44ヘクタール、15年31戸(同5戸)、67ヘクタールとなってい
る。需要、供給ともに拡大していることがわかるが、特に15年では需要超過
になっている。現時点では畜産農家への供給量を均等に減らすことで対応する
ことにしており、需要に応えられないという点は最大の課題であるといえる。
さらに注目すべきは、畜産農家のうち町内農家は15年でわずか5戸であり、他
の26戸はすべて町外であり、100キロメートルを超えるところもある(図1参
照)。当然、輸送という過程が重要になり、町内農家へは無料で輸送している
が、町外農家については、畜産農家が輸送業者に委託するか、八万石に委託す
るかを選択し、輸送料金を負担している。
図1 稲醗酵粗飼料供給畜産農家点在図

 これら稲作農家、畜産農家、コントラクターの間を仲介する役割を現時点で
は役場の産業課が担っている。すなわち、WCSの作付面積確保、畜産農家か
らのWCSの需要取りまとめ、コントラクターへの依頼などである。
図2 稲醗酵粗飼料の作付ほ場(平成15年)

 助成金が支払われることで稲作農家は収入を得るが、稲が収穫されて以降の
手続きとなるために、国、県からの補助金支払いは、水稲の販売仮渡金よりも
遅くなるのが実態である。そこで、地元JAに協力してもらい、収穫期には助
成金相当が農家手元に支払われるように、無利子による資金造成を行い前渡金
として支払っている。
 

WCSの収益性

 稲作農家は、10アール当たり300キログラムのロールベールが8個できると
いう前提に立って3万円で販売する契約である。従って、畜産農家は3万円の
代金と時価の運送代を支払い、給与実証事業による助成金2万円の収入を得て
いる。一方、稲作農家に投入される補助金は、とも補償2万円、経営確立助成
(団地化型)4万円、地区達成加算3,000円という国の補助金6.3万円、県単
独補助金である大規模ブロックローテーション促進事業による2万円(2ヘク
タールを超えるもの)、町単独補助金が奨励作物助成金(麦、大豆、飼料作物
対象)1.5万円と集団転作地推進助成金(2ヘクタール以上)1万円で2.5万円
となり、国、県、町の補助金を合わせると10.8万円となる。これに10アール
当たりの販売代金3万円を加えた13.8万円が収入となる。収穫以前の物財費等
は10アール当たり約3万円、収穫・調製・管理費等のコントラクターへの委託
費用が10アール当たり5万円であるから、稲作農家の手取りは5.8万円である。

 うるち米の収益性を収量9俵、所得率6割を仮定すると、1.38万円×9俵×
0.6=7.452万円となる。多額の補助金投下によってWCS生産が支えられてい
るが、現状ではやはり水稲生産が有利である。しかし、今後の生産力向上とコ
ストダウン追求を考慮すると、その相対収益性が逆転する可能性はある。

 畜産農家は、スーダン乾草の農家購入価格がDM(dry matter)1キログラ
ム当たり約40円であるのに対して、DM1キログラム当たりの生産コストは収
穫受託規模20ヘクタールで41円、25ヘクタール規模で35円である。輸送コ
ストが加わると当然コストは上昇するが、ほ場の近隣地域では十分に賄えると
思われる。従って、輸送コストを加えたDM原価がどの程度になるかの限界価
格を算出する必要がある。

 一方、八万石の平成13年の実績は、収穫面積24.6ヘクタール、10アール当
たり生産ロールベール8.5個(DM重量124キログラム)、10アール当たりDM
生産量1,056キログラムであり、10アール当たりの作業コストは15ヘクター
ル規模で54,332円、20ヘクタール規模で43,624円であり、委託料を50,000
円とすると、15ヘクタールを超える収穫作業を請け負う必要がある。現状の47
ヘクタールの収穫作業受託はそのコスト面から見て十分収益があると考えられ
る3)。

 以上のように、コントラクターが大区画ほ場で大型機械を駆使し作業受託面
積を拡大してスケールメリットを発揮することで、WCS生産は地域水田農業
の中に十分に位置付くと思われる。
 

流通と製品品質管理

 ここで、製品の輸送と品質管理に関わる問題を指摘しておこう。畜産農家が
たくさん存在し、なお、稲作農家と近隣に存在しているならば、WCS供給協
定は農家のみで契約され、実際の収穫作業等も畜産農家が行うケースが珍しく
ない4)。従って、遠隔地にWCSを輸送する必要もなく、収量多寡の問題も品
質問題も個々の稲作農家と畜産農家との間で解決される。

 一方、当該地域のように、稲作農家のほ場と利用する畜産農家が離れている
と、まず、ロールベールの輸送という問題が生じてくる。現状では、畜産農家
が輸送専門会社に委託している場合もあるが、八万石が輸送するケースも見ら
れる。そして町内は元より隣接する旭市や山田町は無償で配布するという方針
を採っている。上述するように、基本的に生産コスト面で助成金無しでは経済
的に厳しい条件で生産が行われているが、これに輸送コストを加えると遠隔地
にある畜産農家にとって必ずしも負担が軽いものではない。畜産農家にとって
の採算エリアは当然存在するはずであり、県全体のWCS供給問題として取り
組むべきである。

 第2に、製品の流通と品質管理に関わる問題である。稲作農家と畜産農家の
利用契約によっているが、実際の収穫以降の製品製造プロセスは、全面的に八
万石が担うことになる。10アール当たりおおよそ8ロールという取り決めがあ
るにせよ、現実には収量の多寡があり、八万石で調整をすることがある。また、
品質が悪いと判断された際には、収量を補てんすることで補うなどの措置をと
っている。

 また、八万石では品種の選定、雑草の多いほ場は受託しない、倒伏した稲は
ダイレクトカッティングしない、カビ防止のための尿素添加、品質向上のため
の乳酸菌添加などの措置もとっているが、これらは、農家同士の契約実態を超
えて機能的な組織体 = コントラクターが介在し、広範囲に流通すると品質問
題が重要になってくることを示している。とりわけ、収穫直前の立毛段階での
収量、品質等のチェックは今後必要になるだろう。WCS原料規格検定協議会
のような組織が株数や生育の均一性、雑草の繁茂状態などを審査して等級付け
をすべきである。これにより価格設定にも等級が反映され、取引規格外の原料
についても一定の基準を設けるべきであろう。WCS製品の流通という点を視
野に入れると確固とした契約取り決めをしておくべきである。
 

今後の課題

 まず第1に、WCS供給協定契約のシステムを作る機能を持つ組織や人材がい
ることが大前提である。つまり、如何にWCSを作付けする稲作農家を集め、
利用する畜産農家をとりまとめ、どのような利用契約システムを作り上げるか
という点である。八万石は、あくまでWCSの収穫以降流通までを請け負う組
織体であり、システムを作るのは別途組織であった。当該地域ではその役割を
役場の産業課が果たしている。この点は一般化する上で極めて重要な指摘であ
る。

 第2に、コントラクターとして効率的な作業請負をしていくために、企画・
管理を専門に担当するマネージャーが必要だということである。現在の八万石
では、どのほ場から収穫を行い、どのように畜産農家へ供給していくか、雨天
時の作業スケジュールの調整など、すべてをオペレータが兼任しているのが現
在である。これは法人組織としての課題といえよう。

 これら2つの点を解決するために、受委託システムの仲介・調整役となる組
織の充実が望まれよう。すなわち、WCSの今後の一層の生産拡大を展望する
に当たって鍵を握っているのが、低コスト作業を担うコントラクターと耕種農
家、畜産農家を「仲介調整」する組織の存在であるといえる。すでに畜産サイ
ドの作業受委託に関わっては、委託する畜産農家とコントラクターとを仲介・
調整する機能を果たす組織が北海道の十勝地方で機能を果たしつつある。この
組織は委託者からの作業受託業務とその調整、コントラクターへの再委託、オ
ペレータの派遣、機械の借入等を行う組織であり、委託者とコントラクターと
の相対取引で発生するコストの負担や補完的機能を果たすものである。今後の
コントラクターを核とした土地利用型畜産の構図は、コントラクターと畜産農
家が相対でサービスの取引をするという形態に対して、「仲介・調整組織」を
核に、受託・委託者双方がゆるやかなネットワークを形成して連携を図り、生
産コストと調整管理コストの低減を実現し、持続的なシステムである「受委託
仲介調整組織型」が1つのタイプと考えられる5)。

 WCSにおいては、本事例のように、耕種サイドの営農集団、コントラクタ
ーが作業を請け負っているケースと畜産サイドのコントラクター等が請け負っ
ているケースがある。そして、耕種農家、畜産農家ともに委託者となるケース
もあり得る。つまり、従来の飼料作コントラクターの利用における仲介、調整
よりも一層その役割が重要になることが予想される。そして、このような「仲
介・調整組織」を組織化することこそ、耕畜連携の意義があると思われる。と
いうのは、このような地域農業システムを構築した場合に、飼料作生産のコス
ト低減につながるだけでなく、「仲介・調整組織」の調整機能を通して、コン
トラクターの業務にすでに組み込まれている稲ワラ収集や家畜ふん尿処理とい
った作業が、より有効に遂行できるからである。すなわち、稲ワラについては、
稲作農家と畜産農家を媒介する組織がないために、収集能力のない畜産農家は
経営外の稲ワラを収集することは困難であった。しかし、水稲農家と畜産農家
が仲介・調整組織を通してコントラクターに受委託するシステムが形成できれ
ば、潜在的な需要と供給は顕在化して作業受委託が増えると考えられるからで
ある。また、たい肥の供給に関しても耕種農家と畜産農家(たい肥センター)
の調整役として仲介・調整組織が機能し、コントラクターが実際の散布の担い
手として作業を受託することが可能となる。実際に「八万石」は、稲ワラ収集、
たい肥の運搬にも関わっており循環の輪に組み込まれている。

 米政策大綱では、生産調整メリット措置として、地域の実情にあった水田農
業を新たに確立するという視点から、全国一律方式から地域の主体性を重視し
た「産地づくり推進交付金」制度を創設し、産地づくり対策を設けている。こ
の制度は、まさに地域水田農業の中で何を柱とするかを地域の実情に合わせて
選択し、推進することを支援する仕組みである。

 WCSの生産を支援する地域農業システムを構築するに当たって、自給飼料
増産と担い手への集積=コントラクター方式を全面的に打ち出した戦略にすべ
きである。耕畜連携が求められるWCS生産システムが今後一層拡大し、地域
内外で流通するためにも、「仲介・調整組織」の存在が鍵を握るといっても過
言ではない。今後は「仲介・調整組織」の存在を前提としたWCSの生産、そ
してコントラクター利用を考慮した地域農業システムの方向を検討すべきであ
る。干潟町における八万石を核とした取り組みは、その確かな一歩を踏み出し
ているといえる。

 1)拙稿「水田転作による稲発酵粗飼料の取り組み―宮崎県国富町、新富町
  の事例―」「畜産の情報」第156号、2002.10、p4〜11を参照されたい。
 2)(社)全国農業改良普及協会・(独)畜産草地研究所「平成14年度飼料
  イネの研究・普及に関する情報交換会 ―現地における飼料イネの取り組
  み及び研究・普及の進展とその成果―」を参照されたい。
 3)注2の文献の坂井正史「耕種農家によるコントラクター方式による収穫
  ・調製」P37〜41参照されたい。
 4)宮崎県国富町の事例はその典型である。注1の文献を参照されたい。
 5)福田 晋「飼料作受託組織における農協の多様な関わり方」『畜産の情
  報』第132号、2000.10、P2-11を参照されたい。

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