★ 機構から


独立行政法人 農畜産業振興機構について

総務部 総務課


はじめに

 昨年12月に「独立行政法人農畜産業振興機構法」(機構法)が公布されま
した。この法律により、農畜産業振興事業団(事業団)と、野菜供給安定基金
が統合し、本年10月1日に「独立行政法人農畜産業振興機構」(機構)として
新たに発足しました。新機構は、従来、両法人が行ってきた業務のうち、農畜
産物の価格安定業務や補助業務等を承継し、効率的で透明性の高い組織・事業
運営を一層推し進めることとしております。

 そこで、新たに発足した独立行政法人農畜産業振興機構の概要について紹介
致します。
資料1 独立行政法人農畜産業振興機構について

独立行政法人とは

特殊法人等整理合理化計画

 今回の特殊法人等改革は、163の特殊法人および認可法人を対象とし、「特
殊法人等改革基本法」等に基づき、全法人の事業について徹底した見直しを行
うとともに、その結果を踏まえ、組織形態についても見直しが行われました。
その結果は、「特殊法人等整理合理化計画」として、平成13年12月に閣議決
定され、その中で、農畜産業振興事業団および野菜供給安定基金の各業務のう
ち、近年、実績のないもの、民間が対応し得るもの等については徹底した見直
しを行った上で、価格安定業務や補助業務等必要なものについてはこれを継承
するとともに、組織形態については独立行政法人に移行することが決まりまし
た。
資料2 特殊法人等整理合理化計画抜すい(平成13年12月19日閣議決定)

独立行政法人通則法

 独立行政法人の基本法として、法人運営の根幹となる共通事項を定めている
のが、独立行政法人通則法(平成11年法律103号)です。これは、特殊法人
が、その都度個別の法律に基づき設立され、共通の制度的枠組みが存在しなか
ったのに対し、独立行政法人については、組織・運営等に関する共通原則を制
度化することとし、制定されたものです。

独立行政法人の特徴

 独立行政法人の特徴は、業務面では、主務大臣による中期的な目標の付与と
法人の自主的な業務執行、第三者による業績評価、企業会計を原則とした財務
・会計の弾力的な運用、業務運営の透明性の確保、組織面では、法人の長によ
る組織・人事の自律性等を内容としています。
資料3 独立行政法人と特殊法人との比較
 独立行政法人の特徴をもう少し具体的にみてみます(資料3)。

@ 明確な目標設定

  主務大臣(機構の場合は農林水産大臣)は、独立行政法人に対し3〜5年
 間の法人の達成すべき具体的な中期目標を設定することとなっており、独立
 行政法人は、この中期目標の達成義務を負うこととなります。
  一方、目標達成のための業務の運営は独立行政法人に委ねられており、独
 立行政法人は目標達成のための実施上の措置を定める中期計画・年度計画を
 策定することとなっています。

A 第三者機関による評価の実施

  各年度の独立行政法人の業務実績(目標の達成状況)については、主務省
 に設けられる外部の委員から構成する独立行政法人評価委員会(機構の場合、
 農林水産省に設置)によって客観的な評価を受け、それに応じた業務の見直
 しを行うこととされています。さらに、総務省の政策評価・独立行政法人評
 価委員会では、各省の独立行政法人評価委員会の評価結果を受けて、これに
 対して意見を述べる(いわゆる評価の評価)こととなっており、いわば、ダ
 ブルチェックを行う仕組みとなっています。
 
B 財務・会計の弾力化

  独立行政法人の会計は、企業会計を原則とした「独立行政法人会計基準」
 に基づき、弾力的な運営を基本として行うこととなっています。

C 組織・人事管理の自律性

  従来型の国の定員管理や組織管理手法の対象外とし、法人の長による自律
 的な運用が可能となっています。また、独立行政法人の予算執行についても、
 弾力的な運用が可能とされています。

D 情報の公開による透明性の確保

  「独立行政法人等の情報公開法」のほか、通則法においても、中期計画、
 年度計画、評価結果、業務方法書、事業実績、財務内容、組織など独立行政
 法人の運営に関する幅広い事項を積極的に公開することが義務付けられてい
 ます。

E 定期的な組織・事業の見直し

  中期目標期間終了時に、中期計画期間全体にわたる業績の評価等の結果を
 踏まえ、業務継続の必要性および組織形態のあり方について見直しを行うこ
 ととされています。

農畜産業振興機構法

 各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等は、法人ごとの個別事項を定め
る個別法に委ねられており、独立行政法人農畜産業振興機構の場合、これに該
当するのが、独立行政法人農畜産業振興機構法です(資料4)。
資料4 独立行政法人農畜産業振興機構法の概要
 機構法は、昨年の12月に公布され、既に一部は4月1日から施行されていま
すが、事業団、基金の廃止や機構の設立等は10月1日施行となっています。

 「特殊法人等整理合理化計画」により、機構に引き継がれた業務は、機構法
により機構の業務の範囲として規定されております。機構の目的は、これらの
業務を効率的に運営することにより、農畜産業およびその関連産業の健全な発
展並びに国民消費生活の安定に寄与することとされております(資料5)。
資料5 農畜産業振興機構への業務の承継

業務改善の取り組み

 ところで、事業団では、BSE関連対策の補助事業において、牛肉の偽装事件
が発覚したことから、昨年秋以降、独立行政法人化を控えた中、補助金執行の
適正化・透明性の確保、消費者視点の重視、役職員の意識改革等の適切な対応
が求められました。
 このため、事業団は、行政の執行機関としての国民の信頼確保という基本的
視点に立って、事業団所管業務の執行を点検し、その改善策等を検討するため、
事業団理事長の私的諮問機関として、消費者代表、学識経験者、法曹関係者等
をメンバーとする「業務執行改善検討委員会」を立ち上げました。
 委員会では、昨年10月から12月にかけて合計5回の審議を重ね、次の5項目
の改善策を柱とする報告書を取りまとめました。
業務執行方法の改善

 (1)行政、事業団、事業実施主体の機能分担の明確化
 (2)事業説明会、巡回指導による事業実施主体に対する指導・管理の強化
 (3)第三者機関による事業評価
 (4)報告、連絡、相談体制の整備による事業関係者間の情報の確実な共有
 (5)広報活動の強化による事業執行の透明性の確保
 (6)消費者等からの苦情受付窓口の開設
監査・監視機能の充実

 (1)管理部門の部長級を中心とした監査・監視委員会の設置
 (2)外部監査法人の積極的な活用
 (3)独立行政法人後における内部監査体制の強化
倫理・規範意識の啓発

 (1)法令遵守、公平性、透明性の確保等を内容とする行動憲章の策定
 (2)外部講師による改革フォーラムの開催
 (3)トップの意識改革と役職員の意思疎通の促進
役職員の能力向上

 (1)食肉研修・農家現地研修等実体験を通じた専門知識・技術の習得
 (2)流通・小売段階での研修等消費者の視点を体得する研修の実施
消費者に軸足を置いた情報収集提供業務

 (1)理事長と消費者代表、消費者モニター代表との懇談会の開催
 (2)情報収集提供事業への消費者の参画
 (3)双方向・同時的な情報の発信・受信
 事業団では、報告書に基づく実行計画を策定し、業務改善に向けての取組み
を着実に実施しております。

 これらの業務改善の成果は、独立行政法人の運営にも当然生かされるべきも
のであり、機構に確実に承継することとしています。

機構の概要

役員体制

 機構の役員については、農畜産業振興事業団および野菜供給安定基金時と比
較し大幅な削減を行い、常勤役員10名(理事長1、副理事長1、理事6、監事2)
の必要最小限の体制でその業務の適正かつ確実な実施を確保することとしてい
ます。
(参 考)

組織体制

 業務の適正かつ確実な実施を確保するため、機構の内部組織については、機
能的で効率的な整備を図ることとし、

@ 組織発足時における本部事務所の統合(機構本部事務所は、東京都港区麻
 布台(現行の事業団の事務所)に設置)、総務・経理部門など両法人に共通
 する部課等の統合・再編、
 
A 社会経済情勢や農畜産業をめぐる情勢変化に的確に対応しつつ、スタッフ
 制の拡充、職員の部門間の交流の促進、業務の質や量に対応した組織体制、
 人員配置の見直し、に取り組むこととしております。
(5ページ「農畜産業振興機構の組織図」参照)

中期目標・中期計画

 中期目標は、主務大臣が、中期目標期間(3〜5年の期間)において独立行
政法人が達成すべき業務運営に関する目標を定め、法人に指示するものです。
また、中期計画は、法人が中期目標期間に中期目標に掲げられた目標を達成す
るために実施すべき措置を定めた具体的計画です。法人は中期計画に従い、毎
年度、年度計画を定め、自主性・自律性をもって業務を遂行することとされて
います。

 その意味から、中期目標と中期計画は、独立行政法人が業務運営を行う上で
基本を成すもので、・中期目標の期間、・業務運営の効率化に関する事項、・
業務の質の向上に関する事項、・財務内容の改善に関する事項等が定められて
います(資料6)。
資料6 独立行政法人農畜産業振興機構中期目標・中期計画のポイント

おわりに

 最近の農畜産業をめぐる情勢は、BSE問題や牛肉の偽装事件、残留農薬問題
などを契機として、「食の安全・安心」が最重要課題としてクローズアップさ
れています。国、関係業界、生産者等は、消費者の食に対する信頼回復のため
に、あらゆる措置を講じているところであり、消費者の信頼回復の切り札が、
現在、関係者が一丸となって取り組んでいるトレーサビリティ・システムの確
立と言えます。また、来年11月から家畜排せつ物管理法の本格施行による生
産農家のふん尿管理の義務化を始め、課題は山積みしています。

 一方、WTO農業交渉のゆくえは、将来のわが国の農畜産業に重大な影響を
及ぼすことは確実で、関係者は交渉の成り行きに大きな関心を寄せています。

 このように、農畜産業を取り巻く情勢は、たいへん重要な局面を迎えており、
そのような中で、独立行政法人農畜産業振興機構は新たな船出をすることとな
りました。機構は、農畜産政策上、重要な任務と役割を与えられており、役職
員一丸となって、透明性が高く、効率的で効果的な業務運営に取り組むことに
より、わが国農畜産業の健全な発展と国民消費生活の安定に向け邁進して参り
たいと考えておりますので、旧倍のご指導ご鞭撻をお願い致します。

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