北海道/森本 正隆
乳牛では、つなぎ飼い牛舎やフリーストールなどに関わらず、牛舎を設計す る場合の参考資料やテキストが多く存在し、牛床サイズやレイアウトでは規格 的な提案もされている。 しかし、肉用牛にあっては、子牛の発育ステージや繁殖ステージ、専用種や 乳用種肥育などさまざまな条件があって、規格化された牛舎設計がないうえ資 料も少ない。また、MWPS(Midwest Plan Service)など外国の設計数値 は日本の品種や技術にはそのまま当てはめることができない部分も多く、肉牛 牛舎を設計するときの障害になっている。 そこで、今回、北海道酪農畜産協会では「北海道の肉牛牛舎」編集委員会を 設置し、肉用牛舎設計のための手引き書を作成した。 各地の事例を基に肉牛牛舎設計の考え方からレイアウト、構造について解説 し、繁殖牛舎、肥育牛舎について、ステージや専用種・乳用種についてのモデ ル図を提案している。そのほか、調査事例の特徴を明確に紹介している。 次に、事例の中で特徴的な牛舎を少し紹介する。 まず、連動スタンチョンと屋根、パドックを組み合わせたものである。これ は、牛舎と呼べる施設にはなっていないが、繁殖牛に対し、給じ、捕獲するた めの施設で、低コストな繁殖牛飼養施設である。近年、和牛のほ乳期間は3カ 月程度と短くなっており、離乳後から分娩直前までの長い非泌乳期間を低コス トで飼養するために工夫された施設である。給じと捕獲といった基本的な管理 のための機能を有し、野外で放牧的に飼養することで健康的に飼うことができ る。また、放し飼いのため未受胎牛の発情を発見することも容易である。 次に紹介するのはビニールハウス牛舎である。この牛舎は、低コストにする ため腰高の園芸用パイプハウスを活用している。しかし、そのままでは天高が 低くふん処理に機械作業ができない。そこで、枕木を使って腰高を補い、機械 作業ができるように天高を高める工夫をしている。そのための枕木とパイプの 接続方法がこの牛舎のポイントの一つである。 そのほか、柱に古電柱を用いたり、繁殖牛舎には連動スタンチョンを設置、 天井部には遮光ネットをかけるなど数多くの工夫がされている。また、飼養す る牛に応じてレイアウトを変えられるような自由度がある。 このビニールハウスを活用している農家は、肉牛ではあまり例がない1日転 牧の集約的な輪換放牧や制限ほ乳の技術を組み合わせて1年1産を達成してい る。
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