北海道/山岸 真
十勝地方では、ここ十数年の間に農家手づくりのナチュラルチーズ工房(フ ェルミエタイプ)が広まりをみせ、農業の生産現場と消費者との距離を縮める 好結果をもたらしている。それら工房のチーズ製造時に排出される水分をホエ ー(乳清)と言い大手の工場ではホエーパウダーなどとして医薬品の増量剤や お菓子の原料として用いられているが、小規模工房では廃水処理の負担増につ ながり、その処理方法について十勝圏食品加工技術者の会などで検討していた。 そうした中、ヨーロッパでは古くから一般的になっている、「ホエーを豚に 飲ませる事」ができる環境(チーズ工房と養豚農家の接点)が十勝には十分存 在することと、それに取り組む「食」を追求してやまない人材が豊富であった ことにより、この程ホエー豚の取り組み(飼育や成分分析、規格基準づくり) が開始された。 このホエー豚を料理に使った北海道シェフクラブの料理人たちが、そのおい しさを絶賛したため、ブランド化する事を薦められ、消費者への普及やブラン ドとしての基準づくりなどを目的とし、生産者共々「十勝ホエー豚研究会」を 立ち上げた。 会では、この春先から十勝管内で数回の試食会を開催し、今後も札幌などの 大消費地での試食会開催や、3月に幕張で開催されるフーデックスジャパンへ の出展により、できるだけ多くの皆様方へホエー豚を普及したいと考えている。 十勝ホエー豚への取り組みは、地域の産業間連携や研究機関や大学との連携 による産業クラスターの取り組みであるとともに、1次産業や1.5次産業にま たがる多くの手間と時間を掛けた究極のスローフードでもあると考え、来年度 はホエー豚を用いた加工品(生ハムなど)にも取り組みながら、十勝型食文化 の一つへと広げて行きたいと考えている。 地域のチーズ工房と養豚農家が結び付き良質の豚肉が生産できるようになれ ば、地域の産業振興はもとより、それを使う料理人や何よりも消費者にとって 歓迎される事であろうと、これに携わる人たちの意欲を更にかき立てていると ころであり、今後は、十勝にこだわる事なく、ナチュラルチーズを核に全道的 な広がりにも期待したいと、幅広い取り組みにチャレンジしている。
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