◎地域便り


大分県 ●主婦の視点を持つ
     「牛飼いかあちゃん」が畜産を変える!

大分県/農政部畜産課


 「“牛飼いは農業の基本だから”と主人の父が繁殖牛3頭を買ってくれたの
が私の牛飼い人生の始まりです。」と語るのは上津江村の壁村久実さん。全く
農業を知らずに上津江村に嫁いできた久実さんは、お義父さんの薦めで牛を飼
い始めて20年、和牛繁殖雌牛31頭を飼養しているベテラン牛飼いである。現
在、村の認定農業者に認定されるとともに、畜産婦人部長も務められ、地域で
も中心的な農業者として活躍されている。

 牛のことは全く知らない状態で牛飼いを始めた久実さんは、これまで、失敗
や苦労の連続。そのたびに、いろいろな方に出会い、牛のことを教えてもらい、
支えてもらって牛飼いを続けることができたと語った。

 これまで経営の転機になった印象に残る出会いについて、2人を紹介してく
れた。

 まず1人目は、規模拡大する中で、子牛の下痢が慢性化し、なかなか収まら
ないと悩んでいた時に出会った獣医さん。この方は下痢が発生してから抗生剤
に頼るというだけでなく、生菌剤や日常管理で予防する方法をアドバイスしれ
くれたとのこと。

 抗生物質はできるだけ控えるこの方法は主婦でもある私にとって、安心でき、
共感でき、また、この出会いで、行動や生理を知った上で牛を飼うことは大切
だなと改めて気付いたそうである。

 2人目は子牛を買ってくれたことが縁で、子牛の飼い方についてアドバイス
してくれるようになった佐賀県の肥育農家の方。消費者に近い立場にある肥育
農家と出会ったことで、改めて安全性について意識を持つことができるように
なったとのこと。

 「BSEの問題以降、感じたことですが、私たちが本当に目指すものは究極の
ところ、安全でおいしい肉を作るというところにあると思います。繁殖農家で
ある私たちもその一端を担い、責任を持って安全な子牛を育て、肥育農家が儲
かるような素牛を提供していかなければなりません。」と力強く語ってくれた。

 BSE発生以来、信頼回復につとめている畜産業界であるが、生産者と主婦の
視点を併せ持つこのような「牛飼いかあちゃん」の意識改革がこれからの畜産
を支えてくれるのではないかと改めて感じた。
 
牛へのやさしさをモットーの壁村さん
正面から見た牛舎

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