大分県/農政部畜産課
「“牛飼いは農業の基本だから”と主人の父が繁殖牛3頭を買ってくれたの が私の牛飼い人生の始まりです。」と語るのは上津江村の壁村久実さん。全く 農業を知らずに上津江村に嫁いできた久実さんは、お義父さんの薦めで牛を飼 い始めて20年、和牛繁殖雌牛31頭を飼養しているベテラン牛飼いである。現 在、村の認定農業者に認定されるとともに、畜産婦人部長も務められ、地域で も中心的な農業者として活躍されている。 牛のことは全く知らない状態で牛飼いを始めた久実さんは、これまで、失敗 や苦労の連続。そのたびに、いろいろな方に出会い、牛のことを教えてもらい、 支えてもらって牛飼いを続けることができたと語った。 これまで経営の転機になった印象に残る出会いについて、2人を紹介してく れた。 まず1人目は、規模拡大する中で、子牛の下痢が慢性化し、なかなか収まら ないと悩んでいた時に出会った獣医さん。この方は下痢が発生してから抗生剤 に頼るというだけでなく、生菌剤や日常管理で予防する方法をアドバイスしれ くれたとのこと。 抗生物質はできるだけ控えるこの方法は主婦でもある私にとって、安心でき、 共感でき、また、この出会いで、行動や生理を知った上で牛を飼うことは大切 だなと改めて気付いたそうである。 2人目は子牛を買ってくれたことが縁で、子牛の飼い方についてアドバイス してくれるようになった佐賀県の肥育農家の方。消費者に近い立場にある肥育 農家と出会ったことで、改めて安全性について意識を持つことができるように なったとのこと。 「BSEの問題以降、感じたことですが、私たちが本当に目指すものは究極の ところ、安全でおいしい肉を作るというところにあると思います。繁殖農家で ある私たちもその一端を担い、責任を持って安全な子牛を育て、肥育農家が儲 かるような素牛を提供していかなければなりません。」と力強く語ってくれた。 BSE発生以来、信頼回復につとめている畜産業界であるが、生産者と主婦の 視点を併せ持つこのような「牛飼いかあちゃん」の意識改革がこれからの畜産 を支えてくれるのではないかと改めて感じた。
|
|
|