安全局 衛生管理課 薬事・飼料安全室 須永 善行
飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)に おいては、飼料の使用等が原因となって人の健康がそこなわれる恐れがある畜 産物等が生産され、または家畜等に被害が生ずることにより畜産物等の生産が 阻害されることを防止する見地から、飼料および飼料添加物の成分規格ならび に製造等の方法および表示の基準を設定し、飼料および飼料添加物の製造業者 等にこれらの基準・規格の遵守を義務付けるとともに、特定飼料等※に関する 検定制度を設け、飼料の安全性の確保を図っている。 また、飼料の栄養成分に関する公定規格を定め、飼料の消費者である畜産農 家等が飼料の品質を適正に識別できるよう、その栄養成分に関する表示制度を 設けることにより、飼料の品質の改善を図っている。 しかしながら、近年、食の安全に対する信頼が大きく揺らぐ事件が多発して おり、畜産物等の生産資材である飼料についても、その安全性の確保が求めら れている。 さらに、公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画( 平成14年3月29日閣議決定。以下「公益法人改革実施計画」という。)におい て、官民の役割分担および規制改革の観点から、公益法人が行う検査・検定に ついては、事業者の自己確認・自主保安を基本とする制度に移行することを基 本原則とし、これが適当でないときは、法令等に明示された一定の要件を備え、 行政の裁量の余地のない形で国により登録された登録機関による検査・検定等 を実施することとされた。 このような状況を踏まえ、特定飼料等の製造業者の品質管理の方法等に係る 登録制度を導入するとともに、有害な物質を含む飼料等の製造、輸入および使 用の禁止措置を追加するほか、特定飼料等の検定機関等の指定制度を見直す等 の措置を講ずることとした。 ※「特定飼料等」は、法第3条の規程が定められた飼料または飼料添加物で、 その飼料の使用またはその飼料添加物を含む飼料の使用が原因となって、有 害畜産物が生産され、または家畜に被害が生ずることにより畜産物の生産が 阻害されるおそれが特に多いと認められるものとして政令で定めるものであ り(飼料安全法第5条第1項)、具体的には、抗生物質とインド産落花生油か すが指定されている(施行令第2条)
特定飼料等の製造業者の中には高度な製造・品質管理手法を導入し、自己の 製造・品質管理により、検定と同等の品質・安全性が確保されている者がある。 このような製造業者にとっては、その製品の出荷に当たって検定機関の検定を 義務付けることは過剰な負担となっているところである。 このため、特定飼料等の安全性の確保を図りつつ、高度な製造・品質管理を 行う製造業者の負担を軽減し、効率的な特定飼料等の製造が可能となるよう、 製造工程全般にわたり高度な製造・品質管理(最終製品の自主的な検査を含む) を行う製造業者については、その管理手法、製造設備および検査設備、検査に 係る組織等が一定の基準を満たすことを、農林水産大臣が確認した上で登録し、 検定機関の検定を受けずに特定飼料等の販売を認めることとした。
@ 有害な物質を含む飼料または飼料添加物の製造等の禁止 飼料等の安全性の見地から規制の必要がある物質については、飼料及び飼料 添加物の成分規格等に関する省令(昭和51年農林省令第35号)において、飼料 中の含有量等の基準・規格を設定し、これに合わない飼料等の製造等を禁止し ているところである。また、製造、販売等の過程での事故等により有害な物質 が混入したような飼料等については、緊急的な措置として、農林水産大臣は、 農業資材審議会の意見を聴いて飼料等の製造業者、輸入業者または販売業者に 対し、当該飼料等の販売を禁止することができるとされていた。 しかしながら、販売行為のみを禁止したとしても輸入や製造行為そのものが 禁止できなければ、
ア 混入等により有害な飼料等が流通する可能性も否定できないこと
イ 既に農家に販売された飼料については、農家が使用することを法的に禁止 できないこと から、飼料の使用に起因する有害畜産物の生産を未然に防止することに万全 を期するため、有害な物質を含む飼料等が確認された場合等においては、農林 水産大臣は、当該飼料等の製造、輸入、販売および使用を禁止できることとし た。 A 有害な物質が含まれている可能性のある飼料等の輸入の届出 わが国は、飼料の原料の多くを海外に依存しており、異常気象等生産地の事 情の変化によって、通常は問題のないものに有害物質が混入する等の事態が生 じる恐れがある。 飼料の輸入業者に対しては、その事業開始前に事業所の所在地、名称等の届 出を義務付けているところであるが、輸入する個別の飼料・飼料原材料等に関 する情報をすべて把握することはこの届出だけでは困難である。 このため、有害な物質が含まれる可能性が生じた飼料等については、
ア より厳重な監視を行う必要があること
イ そのことを公示して、当該飼料を取り扱う事業者や畜産農家等の飼料の使 用者にも注意を促す必要があること
から、農林水産大臣が当該飼料等を指定するとともに公示し、輸入業者に対し て指定した飼料等を輸入する旨を届け出ることを義務付けることとした。 農林水産大臣は、この届出に基づき、当該輸入業者に対する報告徴収や立入 検査等を実施し、その結果有害物質が含まれる可能性が高い場合等には、輸入、 販売の禁止等の手続に移行することとなる。
公益法人改革実施計画において、官民の役割分担および規制改革の観点から、 公益法人の行う検査・検定については、事業者の自己確認・自主保安を基本と する制度に移行することを基本原則とし、これが適当でないときは、法令等に 明示された一定の要件を備え、行政の裁量の余地のない形で国により登録され た登録機関による検査・検定等を実施することとされた。 また、人の生命に影響を与えるなどの事務・事業の性格から、上記の実施が 困難なものについては、国または独立行政法人において実施することとされた。 この原則を踏まえ、法に基づく検定制度は、 @ 有害畜産物が生産される等の恐れが特に多い特定飼料等の検定については、 その目的が特定飼料等の使用が原因となって、有害畜産物が生産されること 等を防止することであり、人の健康・生命に影響を及ぼしかねないものであ ることから、独立行政法人肥飼料検査所(以下「検査所」という。)のみを 検定の実施主体とする A 他方、飼料の栄養成分に関する公定規格の検定については、農林水産大臣 の登録を受けた検定機関による検定制度に移行する こととした。
公益法人改革実施計画においては、検査・検定について事業者の自己確認・ 自主保安を基本とする制度に移行することを基本原則とし、これが適当でない ときは国により登録された登録機関による検査・検定を実施することとされた。 これを受けて、飼料の品質の改善を図るために農林水産大臣が飼料の栄養成 分に関し定める公定規格に適合していることを示す規格適合表示については、 公平・中立な検定の実施を確保する観点から、登録機関による検定制度が基本 とされるとともに、適正な製造・品質管理を行う製造業者については、その管 理手法、製造設備および検査設備、検査に係る組織等が一定の基準を満たすこ とを農林水産大臣が確認した上で登録し、登録を受けた製造業者は自ら規格適 合表示を付することを認めることとした。
飼料および飼料添加物の基準および規格等について、食品の規格との整合性 を確保するため、農林水産大臣が飼料等の基準および規格の設定、販売の禁止 措置等を行う場合に、厚生労働大臣の公衆衛生の見地からの意見を聴かなけれ ばならないこととした。
@ 農林水産大臣は、特定飼料等製造業者等を登録した場合、輸入の届出を義 務付ける飼料を指定した場合等について、その旨を官報に公示しなければな らないこととした。 A 特定飼料等製造業者等が登録を受けようとする場合、当該登録事項に関す る検査または検査所の調査を受けようとする場合、登録簿の謄本の交付を請 求する場合等に手数料を納付すべきこととした。 B 有害な物質を含む飼料等に起因して有害畜産物が生産されること等を防止 するため農林水産大臣が当該飼料等の販売を禁止した場合に、これに違反し た法人については一億円以下の罰金を科することとする等、罰則についての 整備を行うこととした。
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