熊本県/丸山 雄司
熊本県の北東部に位置している阿蘇郡一の宮町では、平成12年12月以降、毎 月の「子牛せり市結果」を図表化して、出荷した生産者、畜産関係団体に提供 している。毎月、せり状況を公表することにしたのは、11年に同町が子牛市場 視察を繰り返す中で、一の宮の子牛は安いのではと感じるようになり、子牛生 産農家の意欲をかき立て、希望を持って経営ができる方法はないものかと考え た結果、毎月の子牛のせりデータから子牛の日齢単価を高額順にランク付けし て公表してみてはどうかということから始まった。 一の宮町の畜産農家は繁殖農家が約150戸、肥育農家が4戸であり、ほぼ100% が肉用の和牛である。同町から出荷される品種別の割合は黒毛和種34%、褐毛 和種43%、褐毛和種の母に黒毛和種を掛け合わした交雑種23%である。一の宮 町を含む近隣の市町村の子牛のほとんどは熊本県家畜市場に出荷されている。 熊本県家畜市場における上場頭数は年間9,100頭、そのうち一の宮町から出荷 された頭数は770頭である。一の宮町では、2年後に予定されている阿蘇町、波 野町、産山村の4カ町村の合併を見据えて、同町の子牛せり市結果に4カ町村の せり状況を阿蘇中部地区版として一の宮町のデータに加えて公表している。 子牛せり市結果の内容は、品種別に価格、体重、日齢単価、増体量等の項目 があり、目安となる熊本県家畜市場と一の宮町の平均を各項目ごとに掲載して いる。また1頭ごとのデータは日齢単価が高額な子牛に順位を付けて公表して いる。そして、熊本県家畜市場の日齢単価の平均価格を上回った子牛について は1頭ごとに生産者氏名、牧野名を明記した上、牧野ごとに平均日齢単価を計 算して一番高額だった優秀牧野のデータについては別枠で載せている。 一の宮町による子牛のせりデータを生産者に数字で提供することを2年以上 続けていることにより、短期間で効率良く飼育ができているかということがわ かるばかりでなく、町内出荷者の中で自分の位置がすぐわかるため、日々の飼 育の励みとなっている。また、阿蘇郡内で下位にあった一の宮町の子牛価格も 徐々に上がり始め、現在では阿蘇郡の中ではトップクラスに位置するようにな ってきた。 トップクラスの牧野組合や個人を、モーモーフェスタと呼ばれる畜産品評会 を含めたお祭りで表彰するだけではなく、表彰者はフェスタ当日のミニ講演会 の講師として、日頃の飼養管理技術について10分ほどの講演をしてもらってい る。 一の宮町ではわかりやすいデータを提供することで、生産者の意識向上を図 っていきたいと話している。
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