鹿児島県/上山 勝行
「やっと、“さつま地鶏”の商標が登録されました。」鹿児島からこんな情 報が飛び込んできた。鹿児島県が作出したこの地鶏は、生産者や消費者など多 くの方々から名称を公募し、平成12年10月16日に「さつま地鶏」として命名さ れた。生産振興と銘柄確立を図る目的で翌月、「さつま」をイメージさせるマ ークを付して商標登録を特許庁に申請した。ところが、すでに登録されている 登録防護標章および登録商標と同一あるいは類似しているとの理由に加え、こ れらの利用権を有する権利者からこのマークの使用は認めないというハプニン グがあり、新たな商標を考えなければならなくなった。それからというもの幾 度となく商標登録の図案の作成やマークの検討を重ね、新たなマークを付して 平成14年11月1日に出願、早期審査請求などの数々の苦労を乗り越え、今年5月 16日に正式に商標として登録された。命名から実に943日目であった。 さて、この地鶏を作出した背景には、当時から鶏肉に対する消費者のニーズ が多様化してきており、中でもブロイラーとは異なったいわゆる地鶏といわれ る特色ある鶏肉の生産が望まれていたことが挙げられる。 「さつま地鶏」は、国の天然記念物である薩摩鶏の雄とアメリカで作出され た卵肉兼用種であるロードアイランドレッドの雌を基礎鶏として平成2年から 増体性、産卵性、外貌を中心に育種・選抜を繰り返し、平成12年に完成した。 本県が保有している薩摩鶏は赤笹種といわれるもので、当時、育成率や生存率 など強健性に乏しく、産卵性も低かったこの鶏を30数年もの間改良を重ね、現 在では肉用タイプの地鶏作出などの父系として利用されている。 「さつま地鶏」の特徴として、・羽装は美しい茶褐色で地鶏らしさを備えて いる、・肉色は赤みを帯び、筋繊維が細く、きめが細かいため柔らかい反面、 長期飼育により適度な歯ごたえがあるなど肉質が優れている、・特定JAS 規格 の在来種として指定されている薩摩鶏とロードアイランドレッドの交配様式で あるため、血液百分率100%の地鶏であることなどが挙げられる。 現在「さつま地鶏」は、県内7団体、3振興会の会員で構成する「さつま地鶏 生産者協議会」を中心に飼育されており、今年度は約12万羽の出荷を見込んで いるものの、徳島県の阿波尾鶏や秋田県の比内地鶏、愛知県の名古屋コーチン に比べるとまだまだ知名度が低いため、今後はこの商標を「さつま地鶏」のシ ンボルマークとして活用し、生産者協議会を中心とした生産振興と販売促進な どを図っていく計画である。
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