総括調整役 戸谷 亨
福岡事務所長 水内 直人
1 開催の経緯
九州では、温暖な気候や多様な地勢を活かした特色のある農業が展開され、地域の特産物を利用した豊かな食文化が形成されている。一方、BSE問題や鳥インフルエンザの発生をはじめ、「食」の安全と安心に対する信頼が大きく揺らいでいる。このような中で、近年、地産地消運動が活発化しているが、九州農政局では従来から、地産地消の理念やその意義について関係者の理解を深めるためにシンポジウムを開催する等によりその啓発を図ってきた。
|
基調講演の木内博一氏
|
|
パネルディスカッション
|
シンポジウムでは、まず基調講演で、千葉県の農事組合法人「和郷園」の代表理事の木内博一氏から、「野菜の生産から消費まで 〜戦略的アグリビジネスの展開〜」として、法人経営を始めるに至った経緯、トレーサビリティ、リサイクル、パッケージセンター、冷凍野菜工場の導入、直売所やレストラン等の取組みの内容、野菜のアジアへの輸出を含めた今後の展開方向等について詳しくお話いただいた。的確な方針の下で戦略性を持って進められている取組みは大変参考になり、会場からも大きな反響があった。
引き続き、各地の地産地消の取組みに精通されている平岡豊氏をコーディネーターとして、各地で地産地消を実践されている以下のパネリストの皆さんから提言をしていただき、地産地消の戦略的展開についてパネルディスカッションを行った。
秋永優子氏
(福岡教育大学助教授)
諫山尚人氏
(宮崎日日新聞社報道部)
神宮司恒幸氏
(鹿児島県大島農業改良普及センター次長)
中山敬子氏
(農事組合法人中山牧場販売担当)
宮嵜真里子氏
(熊本市立出水南中学校学校栄養職員)
和田信司氏
(宗政酒造株式会社取締役製造部長)
提言では、畜産関係では、佐賀県産の稲わらによる牛の肥育と食肉の消費者への直売を行っている中山氏から、自分が1頭1頭の牛の状況を知っているから自信を持って消費者に安全・安心を伝えられる、サトウキビ関係では、大島紬の着物姿で登壇された神宮司氏から、奄美大島宇検村では地元サトウキビの地場黒糖焼酎や菓子の原料への利用を通じて、サトウキビ栽培面積の増加、地域の雇用の増加等につながっている等の報告があった。
パネルディスカッションでは、学校給食への地場産食材の利用について、子供の「食」や「農」への理解の促進といった効果とともに、生産現場と学校給食の現場との連携は必ずしも十分ではないのでは等の意見も出され、会場との間も含め、地産地消の進め方について活発な討議が行われた。
今回のシンポジウムは、地域の声を直接聞くことができ、また、広く様々な角度から地産地消の今後の展開について発信するよい機会となった。機構としても今回のシンポジウムを踏まえ、地産地消の取組みを応援していきたいと考えている。