◎地域便り


京都府 ●近畿「食の安全・安心に関する意見交換会」等が開催される

調査情報部


 平成15年7月から政府は、国民の健康の保護を最優先とした食品の安全の確保に取り組むため、食品安全基本法の制定や食品安全委員会の設置など様々な措置を講じてきているところである。この様な中で、平成16年1月16日の午後、京都市内のホテルで、消費者や農業・食品関係者にこれまでの取組み等を理解してもらうために、近畿農政局主催の「食の安全・安心に関する意見交換会」が開催された。

 会場には、消費者や生産者・食品関係企業、行政等関係者約230人が参加し、熱気のこもった意見交換が行われた。

 まず、基調講演では、食品安全委員会委員の小泉直子氏が、日本の食料消費構造、食料自給率、日本人の平均寿命の推移、世界の人口推移などを踏まえ、最近における食の安全・安心をめぐる状況の背景についてや、消費者と学者の捉える食の安全に対する意識の違いなどの説明がなされた。加えて、このような状況を踏まえ、政府における行政組織の変更、食品安全委員会の概要、活動状況が報告された。そして、食品安全委員会としては、今後、まだ、いくつかの課題があると結んだ。

 パネルデイスカッションでは、まず、コーデイネーターの甲子園大学教授金川智恵氏が、「リスクコミュニケーションといっても、消費者は自らが判断することに慣れていないし、食の安全について情報を持っていない、一方、役所は情報を持っているが伝えることに慣れていない。お互い慣れていない者同士が意見交換することに意義がある」旨発言され、生産者代表(滋賀県八日市やさい村の南氏)からは、「低農薬の安全な野菜作りに努力しているが、これに係る行政側の対応(県の検査等)が遅い」旨発言があった。小売業者代表(関西スーパーの川口氏)からは、牛肉のトレーサビリテイ・システムについて非常に分り易く説明がなされ、「このシステムに実験的に先行して参加したが、その経費は莫大であり、安全はタダでない」旨の発言があった。また、消費者団体代表(奈良生協連の仲宗根氏)からは、「消費者と生産者が交流する効果は大きいが、共通事項をどこに置くかが課題である」旨の発言があった。

 厚生労働省の担当官(外口氏)からは、新食品衛生法の概要報告と、「リスクコミュニケーションでは農林水産省と連携して実施していく」旨の発言があった。

 農林水産省の担当官(朝倉氏)からは、無登録農薬問題、消費・食品安全局の半年の取組み状況報告があった。さらに、コーデイネーターの金川氏から「リスクの確率を議論し、関係者が受け入れられる基盤作りが必要であり、そのためにはそれぞれが不都合な情報も含めて公開して行くことが必要」との発言があった。

 会場からの意見としては、教育関係者から「食育の観点から食品安全委員会に教育関係者を入れるべき」とか、メデイア関係者から「食品安全委員会にも一部閉鎖的なところ(農薬部会)がある」、食肉業者から「厚生労働省のホームページは、(知らぬ間にBSE用語が変更されるなど)不親切」、消費者団体の方から「市民が組織する食品安全委員会との交流会が必要」、また神戸の主婦から「BSEの原因のさらなる追求の要望」等沢山の意見が出された。最後に、消費者団体代表(パネリスト)から「中央からの対策だけでなく、東南海地震対策のように、個々の地域における具体的対策へと広げていく必要がある」旨の発言と、金川氏から「今日、メデイアからの情報が非常に大きく、重要であるので、メデイアを対象とした意見交換会も必要であり、また、リスクコミュニケーションに当たっては、前提として互いの信頼関係が重要である」旨の発言があった。

食の安全・安心に関する意見交換会会場

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