◎地域便り


北海道 ●酪農地帯から生まれる優良黒毛和牛

北海道/阿部 潔


 ご紹介する北海道農業開発公社十勝育成牧場は、西に日高山脈を望み、南東部は太平洋に面する十勝南部の大樹町に位置している。広さは、約450ha、ほぼ平坦地であり牧草畑は、十勝特有の防風林により区切られている。

 牧場の歴史は古く、昭和7年に開設された北海道拓殖実習場までさかのぼることができ、多くの優秀な農家を輩出した歴史があるが、昭和37年に閉鎖となり、その後、北海道酪農開発事業団、昭和45年からは北海道農業開発公社が引き継ぎ現在に至っている。

十勝育成牧場のホルスタイン育成牛
 現在、主にホルスタインの若雌牛を育成し、妊娠牛にして販売する大規模育成牧場として約1,000頭のホルスタインを通年飼育しており、丈夫で食い込みの良い牛を、酪農家に供給するため、夏季は放牧、冬季はグラスサイレージ主体で飼養管理している。また、昭和56年からは、受精卵移植にも取組み、酪農家や和牛農家の後継牛確保や改良面で協力をしている。

 平成15年からは、豊富なホルスタインの育成牛資源と受精卵移植の経験を生かし、道立畜産試験場との連携により、北海道の和牛改良を雌牛群から支えるため、受精卵移植を活用した「優良黒毛和牛供給事業」を開始した。

 この事業は、道立畜産試験場が所有する高育種価黒毛和種母牛群から、採卵した受精卵を当牧場のホルスタインに移植し、その牛を公社が実施する貸付制度により協力農家に貸付け、生まれた子牛を、公社が買い戻し、ほ育、育成し、高能力雌牛群を造成しようというものである。性判別卵も移植するため、雌牛の割合が多くなるが、一部は、初妊牛として農家に供給され、産出した雄子牛の肥育データを収集することとしている。

 なお、15年度は牛群育成のためのほ育舎を建設し、16年度から子牛の導入を計画している。

 酪農が主体の北海道は、ホルスタインを活用した和牛振興に大きな可能性を秘めている。当牧場では、この利点を最大限生かし、「優良黒毛和牛供給事業」に取組み北海道和牛の振興に貢献したいと考えている。

 
15年度に導入した高能力雌牛群造成のためのほ育舎

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