平成15年7月から全国の農政事務所に、食の安全・安心業務が導入され、食糧庁業務であった米麦に関する業務とは全く畑違いである畜産に関する業務に従事することになった。その一環として「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(以下「牛トレ法」という。)が農政事務所の所管業務となった。牛を飼っているすべての人は牛トレ法の施行日である平成15年12月1日現在の既存牛の再届出をしなければならず、その作業が円滑に行われるよう農政事務所が奔走した。このことについて茨城農政事務所の奮闘ぶりを報告する。
茨城農政事務所の管轄である茨城県内には2,000戸余りの牛飼養農家とそこで飼われている約10万頭の牛がいる。届出の徹底のためには、制度の周知や事務をいかに効率よく実施していくかが当事務所の当面の課題であり、まず牛飼養農家について知ることから始まった。このことから水戸市にある茨城農政事務所を中心に日立市、土浦市、下館市、鉾田町の4カ所の地域課と手分けして各農協などに周知徹底のための協力を依頼した。
協力依頼の内容としては、第一に所属団体の担当者や農家などに対する制度の周知と理解を得ることが先決であるため、茨城農政事務所において、茨城県酪連会員組合の担当者、全農茨城県本部所属農家を対象に説明会を実施するとともに、各地域課においても各農協などの担当者および農家などに対し順次説明会を行った。しかしながら、団体に所属しない約400戸の肉用牛飼養農家については、周知徹底のための説明会の調整ができず、その対応について苦慮した。検討した結果(1)農政事務所職員が既存牛リストを該当する農家まで持参し、訪問する。(2)職員が制度の主旨について説明を行う。(3)ご理解を得た上で既存牛リストを配布する。という手順で業務を進めることとなり、団体所属がない農家1軒1軒の直接の個別訪問が3ヵ月余り続いた。
平成15年12月に入り既存牛リストの回収が始まったが、関係の方々のご協力により大きなトラブルもなく、無事に法律上の再届出の期限内である平成16年2月29日までに茨城県内にある全ての牛の所有者の既存牛リストを受理することができた。
既存牛リスト受理後は茨城農政事務所において、リスト記載事項のチェック・入力・入力モニタのチェック・送信・送信エラーチェックを順次行ったところ、生まれる前に死亡した牛や、死亡後再び生き返った牛などの齟齬や単純な間違いなども発見されるなど、担当者を困惑させたが、平成16年5月末現在、茨城県内において提出された全ての既存牛リストの送信エラーまでの処理を終え、一連の業務を完了することができた。今回の業務は牛の生産段階におけるトレーサビリティ業務の第1歩であり、試行錯誤の中での茨城農政事務所の最初の係わりである。
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耳標装着風景(装着を行っているのは筆者です)
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耳標を装着した牛(耳標は両耳に付けましょう)
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