◎地域便り


東京都 ●都市の酪農家の挑戦

東京都/舛屋 浩二


 東京都町田市相原地区は、古くから酪農が盛んな地域で、かつては酪農銀座と呼ばれるほどであった。ところがバブル期には都市化が進行し、環境問題などで酪農家の廃業が相次いだ。

 残った酪農家は、このままでは時代に押し流されると危機感を抱いた。生き残りをかけて、若手酪農家3名(北島一夫さん、萩原隆二さん、中島義雄さん)は、自分たちの牛乳を地元の人に味わってほしいと考えた。そこで、平成4年に東京都の「都市地域農業農産物特産化事業」により農事組合法人「町田あいす工房ラッテ」を設立してアイスクリーム(ジェラード)の製造販売を始めた。

 開業当初から、搾りたての牛乳を使用したアイスクリームは大評判になり、現在では週末になると、遠くから「ラッテ」を目指しやってくる車で周辺の道路が渋滞するほどの活況を呈している。

 平成12年には町田市の名産品として指定を受け、地域の特産品として定着しているだけでなく、アイスクリームの食材にサツマイモやカボチャなど地元の農産物を積極的に活用し、総合的な地域農業の活性化の一助を担っている。

 「ラッテ」の成功は酪農家にとって大きな励みとなった。そして、「自分達が搾った新鮮な牛乳を、直接消費者に届けたい!」という本来の夢を実現すべく奔走し、ついに念願の町田市ブランドの牛乳を創ることとなった。メンバーは「ラッテ」の3名に新たに3名(北島隆さん、細野修一さん、田中清三郎さん)を加え、東京都の「活力ある農業経営体育成事業」により、農事組合法人「東京みるく工房ピュア」が設立されたのは平成11年のことである。

 「ピュア」における販売品目は低温殺菌牛乳と飲むヨーグルトで、「本物の牛乳の味を地域の人たちに」モットーに店頭販売と宅配、学校給食など幅広い営業活動を行っている。また、牛乳ビンもリターナブルのものを採用し、環境への配慮も忘れない。

 「ラッテ」・「ピュア」の構成農家は、町田市乳用牛改良事業協議会のメンバーにも名を連ねている。町田市乳牛改良事業協議会では、毎年市内の小学生を対象に「夏休み酪農ふれあい体験」を開催し、小学校の校庭に牛と共に出向き搾乳を体験してもらうなど、非常に好評を博している。アイスクリームや牛乳の生産販売だけでなく、このようなふれあい事業を通して町田市の酪農への理解やPRを行っている。

 食の安全・安心が求められている中で、酪農家の顔の見える乳製品を市民に提供する「ラッテ」・「ピュア」の活躍は、東京都だけでなく全国的に注目を浴びている。

 
「おいしそうだねェ 早く食べたいなぁ」
園児にも大人気のジェラードはボリュームたっぷり
 
「町田あいす工房ラッテ」の外観

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