「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」が平成15年6月に公布され、生産・と畜段階については、平成15年12月1日から施行されている。そして、平成16年12月1日からは、牛肉の流通段階も含めた法が完全施行される。法律の概要は図1のとおりとなっている。
流通段階の対象となる販売業者(注1)とは、食肉卸売業者(約1万社)、食肉小売店(食肉専門小売店(約2万店)、量販店(約2万店))および特定料理提供業者(約1万店)(注2)となっており、全体では約6万業者が対象となる。牛肉トレーサビリティ法が完全施行となる12月1日からこれらの販売業者は、販売する特定牛肉(注3)(またはその容器など)に個体識別番号(または個体識別番号との対応が明らかなロット番号)を表示(注4)するとともに、特定牛肉の仕入れ、販売(消費者への販売を除く)に関する事項の記録、保存(注5)が義務付けられることとなる。
また、トレーサビリティの信頼性担保のため、農林水産省が検査を実施するほか、補完的な手段としてDNA鑑定を実施することとしている。
情報提供については、独立行政法人家畜改良センターにより実施されており、個体識別番号からインターネットおよび携帯電話を通じた検索が可能となっている。
消費者の安全、安心につながるこのシステムが的確に運用され、消費者の信頼を得られるよう関係者の一丸となった取り組みが求められている。
注1:販売業者
牛肉の販売の事業を行う者であって、部分肉などの卸売業者や精肉の小売業者(食肉小売店)が該当する。牛肉を原材料とした製品を製造加工し、その卸売を行う製造業者や弁当などを調理し、その小売を行う、いわゆる中食業者は対象外となる。
注2:特定料理提供業者
特定料理(焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキ)を提供するいわゆる専門店が該当する。具体的には、1メニューや売上げまたは収入の事業計画で特定料理が2分の1以上、2事業実績で特定料理が売上または収入の2分の1以上、3食材の仕入れ金額のうち牛肉が2分の1以上を基準とする。なお、この判定においては材料の牛肉が国産か輸入かは区別しない。
注3:特定牛肉(表示と記録が必要な牛肉)
独立行政法人家畜改良センターが管理する個体識別台帳に記載されている牛(輸入牛を含む国内で飼養されたすべての牛)から得られた牛肉をいう。従って輸入牛肉は対象外であり、また、国産であっても内臓、頭部、すじ(ハラミ、タン、ほほ肉など)、くず肉、ひき肉や製造・加工・調理品は対象外となる。
注4:表示の方法
一つの商品ごとに個体識別番号を表示する。また、ロット番号を表示する場合には、対応する個体識別番号の問い合わせ先を表示する必要がある。表示例は以下の通りである。
注5:帳簿(記録・保存)
帳簿を備え付け、仕入れた特定牛肉ごとにその個体識別番号(またはロット番号)、仕入れ年月日、仕入れ相手先(氏名または名称、住所)、仕入れ重量を記載し、保存する。また、販売した特定牛肉ごとに、個体識別番号(またはロット番号)、販売年月日、販売相手先(氏名または名称、住所)、販売重量を記載、記録し保存する。帳簿は、その必要事項が記載されているものであれば、様式や保存方法(紙、パソコンのハードディスクなど)は問わない。帳簿は1年ごと(時期は事業年度、暦年など任意)に閉鎖し、閉鎖後2年間保存する必要がある。
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