◎地域便り


岩手県 ●「牛の博物館」で第29回国際動物遺伝学会議の特別展示

岩手県/川田 啓介


 
学術的な意見交換が行われた
 
 
海外の研究者の注目を集めた日本在来鶏のはく製


 第29回国際動物遺伝学会議(佐々木義之大会委員長/京都大学教授)が9月11日から16日にかけて明治大学駿河台学舎で開催された。1954年にコペンハーゲンで発足した本会議は、家畜や水産動物などについて、その遺伝にかかわる生化学的、免疫学的あるいは分子生物学的研究の成果を社会へ還元することを目的としている。アジア初の開催となる今回は、50カ国から600人を超える研究者を迎え、研究発表や学術的意見の交換が行われた。

 海外から多くの研究者が訪れるこの機会に東アジアの家畜の起源や遺伝的多様性、日本の家畜の歴史と文化を紹介するため、特別展示「Native Domestic Animals of Eastern Asia - Origin - Diversity - Culture -」が実施された。展示の中心は、大学の研究者らで組織される在来家畜研究会(並河鷹夫会長/名古屋大学教授)が40年にわたって行ってきた、東アジアの在来家畜と野生原種の起源や遺伝的多様性に関する研究成果の紹介である。在来家畜研究会から委託を受け、その展示の構成と設営は、岩手県前沢町にある「牛の博物館」が担当した。ウシ、スイギュウ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ウズラに関するパネル展示に日本の純粋な和牛と考えられている口之島野生化牛(所蔵/牛の博物館)や日本在来鶏(所蔵/食と農の博物館)のはく製などを組み合わせた展示は、見学者の関心を集めた。時には、研究者らが展示の前で熱心な討論を行うなど、国際会議ならではの学術的な国際交流も見られた。日本の家畜飼養の歴史を紹介するコーナーでは、「国牛十図」や「牛科撮要」などの古書や浮世絵に描かれた日本の在来家畜に関心が集まり、国際的な学術誌の編集委員から東アジアの在来家畜の写真とともに表紙に使用したいとの依頼があった。さらに、日本人が霜降り肉を嗜好するようになった背景を紹介したコーナーで、岩手県前沢町において考え出された「牛肉のにぎりずし」(実用新案登録済)を新しい食文化として紹介したところ、海外の研究者らは一様に驚いていたようだ。

 この特別展示は9月12日から14日と限られた短い期間であったが、日本における動物遺伝学の成果と日本の家畜文化を海外に紹介するよい機会となった。参加者のほとんどが会期中に展示室を訪れ、中には何回も訪れては展示に見入っている研究者もいた。この展示会の内容は冊子にまとめ、会場内で配布した。小さな町の博物館がこのような国際学会の場で展示を担当させていただいたことに感謝したい。


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