「日本一 和牛の里」の看板を掲げて、昭和63年(1988年)に始めた口和町モーモー祭が、本年は、10月9〜10日に町の運動公園で盛大に開催された。あいにくの雨が降ったり止んだりの悪条件にもかかわらず2日間で約2万人(町の人口の10倍)の家族連れでにぎわった。
比婆郡口和町は、広島県の北部で古くからの和牛の産地で、蔓牛※(つるうし)の造成時代から和牛改良には町民挙げて熱心に取り組んできた。全国で5年に1回開催される和牛のオリピック、全国和牛登録協会主催の「全国和牛能力共進会」において毎回多くの優秀牛を出品し、常に上位入賞を果たしてきた文字通り日本一の和牛の里である。
かつて、前記共進会の第4回(福島県)および第5回(島根県)では、比婆和牛育種組合出品の育種登録群が連続グランドチャンピオンの栄誉に輝き、昭和63年度農林水産祭において天皇杯受賞という慶事に恵まれたものであるが、その出品群の主体が口和町の生産牛であったことから「日本一 和牛の里」という看板を掲げるとともに、これを全町民の慶事として長く記念し喜びをともにし、ますます和牛の生産振興に励むため、2年に1回「モーモー祭」を開催してきたのである。
今年は、来年4月から新生庄原市に合併するので、比婆・庄原一円で開催する「みのりの祭典」と併催することになり、催事も多岐にわたり、出店も多く駐車場も満車となり、道路に長い車列が続いた。
本格歌手の田川寿美や三次出身の新人歌手の歌の人気ももちろんであるが、モーモー祭のメインはやはり20頭の優秀牛のモーモー大行進である。一頭ごとにその来歴を紹介すると惜しみない拍手がわきあがり、和牛にかける地域農家の熱意がうかがわれた。
主な催事は、モーモー大行進、牛と子供の綱引き、モーモー抽選会、モーモー自慢大会などのほか各種団体による歌踊り芸能、また各種団体による出店コーナーは、50ブースが設けられ、広島牛の焼肉を筆頭に、地元各種特産品の展示即売が人気を呼んでいた。
つるうし【つる牛】 昔から中国地方の和牛生産地帯で使用されている和牛独特の用語。つる(蔓)は体型なり能力のうち2、3の経済形質について抜群の成績を現し、しかも、その遺伝力の強い優良系統のことで、つる牛はその系統牛に相当する。その創成は、村落を単位とする狭い範囲内で、畜牛の鑑識にたけた指導者のもとで合理的な近親繁殖または系統繁殖を行って、つる特有の形質を固定してできたものである。
(畜産用語辞典より)
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