★ 機構から


豚肉価格安定緊急対策事業の実施について

食肉生産流通部食肉課


1 平成15年度の豚肉卸売価格

 豚肉の卸売価格(東京食肉市場および大阪食肉市場の「極上」、「上」規格枝肉の加重平均価格。以下同じ。)は、平成13年9月のわが国でのBSE確認以降、牛肉の代替需要等によりおおむね堅調に推移してきた。

 しかし、平成15年8月上旬には400円(キログラム当たり。以下同じ)台を割り込み、同月18日には358円と一時的に安定基準価格(365円)を下回った。その後、8月下旬までは360〜390円台と前年同期を大幅に下回る水準で低迷した。

 しかし9月上旬は、学校給食の開始とともに一時的に420〜430円に回復したものの、連休明けの9月16日以降は、再び400円台を割り込んで低迷し、10月下旬には断続的に安定基準価格を下回った。11月に入っても安定基準価格をやや下回るような相場展開となった。

 例年と違い、比較的価格が堅調に推移する夏場から豚肉の卸売価格が低迷した要因としては、

(1)BSEによる一昨年以来伸びていた豚肉需要が、牛肉消費の回復とともに平年ベースに戻ったこと

(2)平成15年度当初から豚肉在庫量が高水準に推移したことに加え、さらに8月からの関税の緊急措置(SG)発動を見込んだ輸入量が急増したこと

(3)昨年の冷夏等により1頭当たり枝肉重量も増加傾向で推移したこと

(4)秋口からの出荷増という季節的要因

等が挙げられる。

図 1  豚肉の卸売価格
(注)東京市場と大阪市場の省令規格の加重平均値の7日間移動平均

2 事業の実施

 その後、冬場に向けても順調な生産が見込まれ、また、消費回復につながる要因にも乏しいことから、今後とも価格低迷が続く恐れがあった。そのため、早急に価格の回復を図り養豚経営の安定を図るため、当機構では農林水産省との協議・要請を受け、畜産業振興事業による調整保管(豚肉価格安定緊急対策事業)を実施することとした。

(1)事業の内容

 当機構は、事業実施主体が豚肉を保管するのに要する経費について、豚肉価格安定緊急対策事業実施要綱等に従って、その経費の一部を補助する。

(1)事業実施主体

 事業実施主体は、農業協同組合連合会、食肉の加工又は販売を行う事業者を構成員とし全国の区域をその地区とする中小企業等協同組合とする。

(2)保管計画の作成

 事業実施主体は、事業の開始に当たり、あらかじめ豚肉の保管に関する計画を定め、機構理事長の承認を受けるものとする。

(3)保管の対象とする豚肉

 畜産物の価格安定に関する法律施行規則(昭和36年農林省令第58号)第3条第1号第1項の規格に適合するもの(省令規格、「極上」および「上」)とする。

(4)買入場所

 中央卸売市場、畜産物の価格安定に関する法律(昭和36年法律第183号)附則第10条の規定により農林水産大臣が指定する市場又は当機構理事長が適当と認めた場所で行うものとする。

(2)買入開始後の価格動向

 当機構は、平成15年11月21日に全国農業協同組合連合会の保管計画を承認し、11月25日から同連合会により豚肉の買入・保管が開始された。

 適切な時期での調整保管事業が奏功し、11月28日には安定基準価格を上回り、その後も鍋物需要の回復などもあり、12月23日には500円を超す水準となった。

 米国でのBSE発生後には一時600円を超す水準となったが、16年に入り価格は徐々に下落しているものの、安定基準価格を上回って推移している。 

 このため、現在は新たな買入は行っていないが(平成16年1月16日現在)、事業は継続中であり、今後も価格動向を注視し、適時適切な対応を取って参りたい。

図 2  15年度事業実施時の省令価格の推移



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