埼玉県/吉岡 雅澄
埼玉県大里郡江南町にある県立総合教育センター江南支所(旧農業教育センター)では、乳用種去勢牛(ホルスタイン)を30頭肥育している。6ヶ月齢で10頭ずつ導入し、3グループに分け、約15〜16ヶ月間飼育した後、出荷している。 同センターは、昭和40年に設立された農業教育に関する教育・研修機関で、20haの土地に建物のほか、牧草地や小麦栽培地、トラクタ練習ほ場、水田などがあり、児童生徒の農業体験学習や農業関係高等学校生徒の実験実習、教職員研修に活用している。 現在、飼育している牛を児童生徒の学習や教職員研修の教材として活用している主な事業は、次の通りである。 1 県内農業関係高等学校生徒の実験実習(8校32クラス) 県内農業関係高等学校のほとんどが、都市化などの理由により、「畜産」関係科目を開設していないため、本センターの実験実習(飼育実習)で健康観察や体重測定(巻き尺法、目測法、牛衡器)、給餌、牧草の刈り取りなどを学習し、各学校の授業(学習)を補っている。実験実習を通して、多くの生徒が、牛にふれたときの温もりを感想文に残している。 2 教科「農業」の教員研修 農業教員として必要な基礎的・基本的な実習指導技術を身に付けるため、研修の中に牛舎の清掃や給餌、健康観察、体重測定を取り入れている。牛にふれたことのなかった教員には、「よい経験になった。」「自分の専門に生かしたい。」など、視野の拡大など資質向上に役立っている。 3 小学校・中学校・高等学校等教員の食農教育研修 初任者研修や10年経験者研修の中に、野菜などの管理のほかに、牛とのふれあいを取り入れ、食農教育の理解と指導者としての実践力向上に活用している。 4 一般児童生徒を対象とした農業体験教室 トマトなどの野菜やイネ、サツマイモの栽培から収穫し食べるまで、食農体験が中心のなかで、牛とのふれあい体験を取り入れ、牛の温もりや大きさを体感させている。 5 不登校児童生徒を対象とした農業体験活動 給餌やブラッシングなど、牛とのふれあい体験を通して、牛の温もりや生命の大きさを体感させ、動物への興味・関心を高めるとともに心を開くための導入となり、対人関係が改善し学校復帰へとつながることを期待している。
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