◎地域便り


愛知県 ●アイリスW2ダブリュウツーの開発

愛知県/田島 茂行



はじめに

 愛知県農業総合試験場では、新しい大ヨークシャー種系統豚「アイリスW2」を開発した。「アイリスW2」は優れた繁殖能力と適度な産肉性を備えており、これを肉豚生産に利用することによって、より一層の高品質な豚肉の安定生産が期待される。

造成の経緯

 斉一でしかも結果が予測でき、高品質な豚肉生産を反復するには遺伝的バラツキの小さい系統を利用するのが効果的である。本県では昭和45年から系統造成事業を開始し、昭和63年に完成した大ヨークシャー種系統豚「アイリスW」を愛知県畜産総合センターで維持していた。しかしながらアイリスWは長期間の維持により近交度が上昇し、本来の能力を発揮できない可能性が考えられたため、当場では平成8年から「アイリスW」に替わる新しい系統の造成に着手した。今回の造成は「アイリスW」の産肉能力に加えて、繁殖能力(産子数と泌乳能力)の向上を目標とした。繁殖能力の改良には血縁情報のデータを利用することによって、より正確な遺伝的能力の推定および選抜を行い、6世代を経て、平成15年9月に新系統「アイリスW2」が完成に至った。

「アイリスW2」の繁殖能力

 「アイリスW2」の一番の特長は優れた繁殖能力である。特に産子数(死産を含む)は初産時に11.2頭で、これは前系統豚「アイリスW」よりも1頭近く多い。また離乳時の子豚頭数は約10頭で子豚のほ乳期間の育成率は100%に近い。さらに離乳時の子豚頭数が「アイリスW」より1頭以上多いにもかかわらず、子豚1頭当たりの離乳体重は約700g大きい。乳器や外陰部の形状もよく、肢蹄は太くて丈夫で柔軟性があり、管理しやすい豚である。

 
とくに繁殖能力に富むアイリスW2
 
乳器・外陰部の形状もよく股蹄は丈夫で
管理しやすいのが特徴
今後の予定

 平成15年10月初旬に「アイリスW2」は愛知県畜産総合センターに移譲され、ここで維持増殖される。初めの交配が平成16年1月までに完了し、3月上旬より分娩が開始される予定である。したがって、平成16年秋以降に本格的に、県下に普及される。「アイリスW2」を愛知県のランドレース種系統豚「アイリスL2」と交配することにより、この2系統を凌ぐ優れた能力のF1母豚ができ、これにデュロック種を交配すれば、肉質の優れた三元肉豚を数多く生産することができる。平成18年には現在造成中のデュロック種系統が完成する予定で、これらの3系統を利用することによって、更なる高品質な豚肉の安定生産が期待できる。



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