はじめに
当機構では、加工乳・乳飲料等の生産実態を把握するために、財団法人経済調査会に委託して、「加工乳・乳飲料等の生産実態調査」を毎年度実施している。
今回は、15年度の調査結果(平成14年度生産実績)を紹介する。本調査は加工乳・乳飲料等を生産している全国149社を対象とし、「加工乳」「乳飲料」「はっ酵乳」「生クリーム等(「クリーム」の他に「乳等を主要原料とする食品」や「植物性油脂」などを含む)」の4品目について、アイテムごとの成分、生産量等に関し郵送と電子媒体を併用して調査を行ったものである。
1.生産シェア
(1)加工乳・乳飲料
加工乳では乳業大手3社の生産シェアが低くなっており、その他のシェアを下回っている。農協プラント系(以下、農プラ系)の生産シェアも高い。色もの乳飲料と白もの乳飲料では大手3社のシェアが高く、50%を超えている。(図1)
注1 本調査で大手3社とは明治乳業、森永乳業、日本ミルクコミュニティをいう。農協プラント系とは、主に酪農生産団体が出資する乳業メーカー、その他とは大手3社を除く民間乳業メーカーをいう。
注2 乳飲料には大きく分けると牛乳をベースとして牛乳の栄養分や風味をそのままに、カルシウムや繊維、鉄、ビタミンやミネラルなどの栄養分を強化した白い乳飲料(白もの乳飲料)と、コーヒーや果汁入りのもの(色もの乳飲料)がある。
図1 加工乳・乳飲料の生産シェア(平成14年度)
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(2)はっ酵乳
はっ酵乳全体の生産シェアでは乳業が85%程度となっており、非乳業(生乳処理を行っていない企業)のシェアは低い。「ソフト」、「プレーン」では乳業のシェアが90%を超えているが、「ドリンク」では非乳業のシェアが32.6%と高くなっている。(図2)
図2 はっ酵乳の生産シェア(平成14年度)
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注3 「ハード」は寒天やゼラチンで固形化したもの、「ソフト」は果肉などを加えた流動性のあるもの、「プレーン」は牛乳・乳製品をはっ酵させただけのもの、「ドリンク」はプレーンヨーグルトを液状化したもの、「フローズン等」は、フローズンヨーグルトや上記以外のもの。
(3)生クリーム等
生クリーム等全体の生産シェアでは乳業が約80%を占めており、非乳業のシェアは低いが、乳脂肪18%未満の製品では、非乳業の生産シェアが54.6%と高くなっている。(図3)
図3 生クリーム等の生産シェア(平成14年度)
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2.成分
(1)加工乳
「低脂肪」タイプは、乳脂肪率が0.9%〜1.2%、無脂乳固形分率は9.5%〜9.6%に集中している。「濃厚」タイプは、乳脂肪率4.1〜4.4%、無脂乳固形分率8.6%〜9.1%に集中している。「その他」(「低脂肪」「濃厚」タイプ以外のもの)では無脂乳固形分率は8.5%〜8.6%に集中しているが、乳脂肪率はバラツキがみられる。(図4)
図4 加工乳の成分(平成14年度)
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(2)乳飲料
成分を比較すると、「色もの乳飲料」より「白もの乳飲料」の乳脂肪率が高く、無脂乳固形分率についても同様の傾向がみられる。
「白もの乳飲料」の乳脂肪率は1.8%〜2.3%、無脂乳固形分率は8.7%〜9.1%となっており、加工乳と比較すると、成分に大きな違いはみられない。色もの乳飲料のうち「その他」(コーヒーや果汁入り以外のもの)は無脂乳固形分率が加工乳より低くなっているが、大手3社と農プラ系の成分はほぼ同じである。(図5)
図5 白もの乳飲料の成分(平成14年度)
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3.乳脂肪率ごとの生産量
(1)加工乳
乳脂肪率ごとに生産量をみると、「低脂肪」タイプの製品が全体の約65%を占めており、企業分類別(注1参照)にみても「低脂肪」タイプの製品が多くなっている。(図6)
図6 乳脂肪率ごとの生産量(加工乳)
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なお、原材料の使用割合では、生乳が39.7%と高く、企業分類別にみると大手3社が45.1%と最も高くなっている。
加工乳は大手3社の生産量が大きく減少しており、農プラ系の「低脂肪」タイプの生産量が増えているものの全体的には減少傾向にある。生産見通しについては、特に「濃厚」タイプの生産量は、「消費者の嗜好の変化」や「牛乳への移行」のために、今後も「減少」するとの見方が支配的である。
(2)乳飲料
「色もの乳飲料」は全体的に乳脂肪率0.5〜1.0%の製品が多く、全体の半分を占めている。「白もの乳飲料」は乳脂肪率3.0〜3.5%の生産量が多いが、企業分類別にみると、大手3社では1.5〜2.0%の製品が多くなっている。乳飲料全体の原材料使用割合をみると、生乳は14.7%と低めである。(図7)
図7 乳脂肪率ごとの生産量(白もの乳飲料)
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乳飲料の生産量は伸び悩んでいる。見通しについては、「競合製品の多様化、増加」や「市場規模の縮小」がみられるものの、生産量は「横ばい」との見方が主流である。
(3)はっ酵乳
乳脂肪率ごとの生産量では3.0〜3.5%の製品が全体の32.2%と最も多いが、非乳業だけでは0.5%未満の製品が中心となっている。タイプ別にみると「ドリンク」の乳脂肪率は0.5〜1.0%、「プレーン」は3.0〜3.5%に集中している。(図8)
図8 乳脂肪率ごとの生産量(はっ酵乳)
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はっ酵乳は、「(その機能性などに関する)マスコミ報道の影響」と「消費者の健康志向の高まり」により、生産量を伸ばしている。「健康食品として定着」したが、「一時的なブームが去った」ため、今後は「横ばい」で推移していくとの見方が強い。
(4)生クリーム等(乳脂肪率18%以上)
乳脂肪率ごとの生産量をみると、乳脂肪率18%以上では42.0〜48.0%未満の製品が多く生産されている。製品の大半は、「業務用」である。(図9)なお、18%未満では乳脂肪率0%の製品が多い。
図 9 乳脂肪率ごとの生産量
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(生クリーム等・脂肪18%以上)
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生産見通しについては、生クリーム等の生産量は、部分脱脂乳(生乳から乳脂肪分の一部を除いたもの)の売行きに影響されるものの、大きな変動要因がみられないため「横ばい」とする見方が大半である。
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