調査情報部
酪農総合研究所は平成15年度シンポジュムを1月30日、札幌・第二水産ビルで開催した。今年度のテーマは「21世紀酪農の姿を探る−規模拡大に導く立役者たち−」と題して行われ、会場には約180名(うち道外からの参加者30名)の酪農家、団体、行政関係者やテーマに関心を持つ民間企業など多方面からの参加者がみられた。 酪総研では21世紀の地域酪農を律するキーワードを「機能分担」「規模拡大」「高度な経営者能力」「高泌乳・多頭数飼養」「共生(という価値観の共有)」との基本認識に立ってシンポジュウムを3年前より企画開催してきた。本年度は副題を「規模拡大に導く立役者たち」とし、酪農機能の専門分化と事業化、地域酪農との共存する姿を浮き彫りにしたいとしてシンポジストが選ばれた。 「公共牧場と酪農経営」との演題で浦幌町模範牧場の三宅英彰氏は300haの町営牧野で夏期放牧、冬季舎飼を受託。町営から経営的に自立するには法人化を目指し、酪農の補完施設として多様な事業の導入が必要と報告。規模拡大志向の酪農家の問題点を労働力不足、施設不足、飼料不足にあるとし、この解消に公共牧場が機能分担として酪農に付随する子牛の哺育育成、周年預託等の受託を提唱。 「2・5・2 酪農のご提案」と題して栃木県の(有)岡本製作所代表の岡本富夫氏が講演。2・5・2 の意味は一日二人で5時間働き、年間2千万円の利益を上げる酪農作業システムを説明。那須周辺の酪農地帯で具体的に高泌乳・多頭飼育農家から飼料搬出・調製・給餌・排せつ物の処理等を機械化・自動化した一連の作業システムを開発して、酪農産業のシステム化の成果を報告した。 「酪農経営でTMR供給センターとたい肥センターを経営する循環型の(有)小林農産の概況」と題して栃木県の(有)小林農産の小林貴久子社長が講演。自らも380頭の酪農経営を営むメガファーム(3,500トン)で年間8千トンのTMR供給センターとたい肥センターを営み循環型経営を展開。地域振興や地域酪農推進の牽引役を果たしている実情を報告。 「酪農家支援の形はいくらでもあるし、変化する」と題して愛知県渥美の(有)あかばね動物クリニックの代表取締役の鈴木保宣氏が講演。鈴木氏は北大卒業後、JAに就職し臨床、購買等を経験後に独立。渥美地区は酪農家戸数が減少するにもかかわらず飼養頭数は増加する酪農地帯。また養豚、肉牛等も盛んで獣医師8名で診療、人工授精、ET、有償の管理技術アドバイザー(繁殖障害、乳房炎、蹄病、代謝病コントロール、栄養、生産、防疫、哺育育成、畜舎等の管理情報の提供)契約を結び酪農家70戸に対し、質の高いサービスを供給して酪農家の良き相談相手となっている。
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