◎地域便り


北海道 ●北海道北大雪発「地域まるごと循環システム」

北海道/浅水 邦昭


こだわり

 「環境に優しい持続可能な農業生産方式を確立して、安全・安心だけではなく、農畜産物の健康的な美味しさを消費者の方に届けたいですね。」と語るのは、北海道白滝村で畜産と酪農を営む宮下盛次さん(42)。農場ではアンガス牛やジャージー牛がこだわりのエサを食べている。

 「粗飼料主体で牛を育てることは、生理学的に正しく、人と環境にも優しいことです。私は輸入穀物の大量消費でしか成り立たない、現代の酪農畜産物に疑問を感じています。例えば1kgの牛肉を作るために8kgの穀物が必要なのです。世界には飢えに苦しむ人々がいるのに…。輸入する(=化石燃料を焚く)ことは環境汚染にも繋がります。だから私は輸入飼料を使わず、地域内から調達し、再生産可能な方法で牛を育てます。」

 宮下氏の牛肉生産へのこだわりは、牛が自由に行動できる環境を作り、自然交配と自然分娩を基本とする、成長促進ホルモンや合成抗菌性物質を一切使わない等、牛が牛らしく、かつ環境に負荷をかけないことである。

ひろがり

 白滝村の農業は地力の維持が課題であり、たい肥を畑に還元しても、化学肥料や化学農薬に頼らざるを得ない現代農法のジレンマがある。
 このままでいいのか。平成15年5月、地域の農業者が結集し有畜複合で再生産可能な農業の確立を目指す「北大雪環境保全型農業生産プロジェクト(代表:宮下氏)」が発足した。結果、耕種農家の協力により一部畑地で飼料作物の栽培が実現し「顔の見える安全な飼料作り」と「畑の輪作作物への応用」が可能となった。

放牧場を走るアンガスの群

 家畜ふん尿はBMW(バクテリア・ミネラル・ウォーター)技術を用いて完熟させる。肥沃な土壌を取り戻したい、地球が本来持つ再生自浄作用、土壌微生物のバランスを健全な姿に治し、農業との共生で自然環境を守りながら、安全で安心な食糧を生産するというプロジェクトの理念を反映している。

 平成16年2月、プロジェクトは白滝村でシンポジウムを開催。講師にBMW技術協会の清水澄氏と全農大消費地販売推進部の原耕造氏を招き、地元生産者ら約60人は農業からの環境保全と安全な農畜産物を供給する意義を学んだ。

 できることから始めよう。夢は「地域まるごと循環システム」

 プロジェクトの挑戦は始まった。


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