★ 機構から


外食産業における食肉の消費構成について(その 2 )
〜平成15年度食肉消費構成実態調査事業報告書から〜

食肉生産流通部




はじめに

 本編は、財団法人外食産業総合調査研究センターに委託して実施した平成15年度食肉消費構成実態調査事業の概要を取りまとめたものである。

 本調査事業は、食肉に関する情報の収集提供業務の一環として外食産業の食肉需要実態とその変化を把握し、食肉の需給の安定に資することを目的として実施した。報告の概要を前月に引き続き紹介する。なお調査の目的および方法については、前号(「畜産の情報(国内編)」2004年9月号)を参照願いたい。

1.スーパーなどの惣菜部門の食肉需要動向

1)回答店舗の概要

 回答の得られた43店舗の業態別の内訳は、食品スーパー34店舗(79.1%)、総合スーパー3店舗(7.0%)、生協2店舗(4.7%)、コープ1店舗(2.3%)、コンビニ1店舗(2.3%)、ボランタリーチェーンを含むその他2店舗(4.7%)であった。

 次に、年間販売額と弁当・惣菜類の品揃え状況をみると、年間販売額は、全体平均で27億9,553万円、そのうち惣菜部門の年間販売額は7,438万円で全体の2.7%の比率となっている。

図1 回答店舗の内訳


2)弁当、惣菜類の品揃えと食肉メニュー


 店舗で販売している弁当・惣菜類をみると、全体平均では128.6種類となり、そのうち牛肉を使用したアイテムが5.8種類(全体に占める比率4.5%)、豚肉を使用したアイテムが12.0種類(9.3%)、鶏肉を使用したアイテムが14.0種類(10.9%)となっている。

図2 メニュー総数と食肉メニュー比率

3)食肉類の需要動向

 回答の得られた43店舗(有効回答40店舗)について、平成14年(1〜12月)に食肉を使用した弁当・惣菜を「販売した」かどうかを整理すると、牛肉と豚肉ではすべての店舗で、鶏肉は1店舗を除く店舗で「販売した」との回答であった。

 それでは、販売した弁当・惣菜類がどこで調理しているかを整理すると、牛肉と豚肉は78.0%の店舗が店舗内、39.0%の店舗が指定メーカーが製造した製品との回答であった。

 鶏肉になると、主力商品に焼鳥が含まれることから、店舗内調理が74.4%と幾分低くなり、指定メーカーが製造した製品との回答店舗が46.2%と多くなっている。

図3 弁当・惣菜類の製造方法別回答数

 次に、食肉類の需要量を整理してみると、1店舗当たり年間平均仕入量は3,253kgであり、そのうちの57.0%を鶏肉が占め、次いで29.9%を豚肉が、残りの13.1%が牛肉となっている。このようにスーパーなどの弁当、惣菜部門でも食肉類の需要は弁当・惣菜メーカーと同様に鶏肉と豚肉が中心となっている。

 次に、使用している食肉の原産国別をみると、牛肉は57.3%を米国産が占め、次いで国産が20.4%となっており、豚肉も米国産(43.5%)と国産(35.2%)で大勢を占めている、鶏肉になると国産(53.2%)を中心に中国産(22.5%)とタイ産(16.4%)を使い分けている。

図4−1 牛肉の原産国

図4−2 豚肉の原産国

図4−3 鶏肉の原産国


 次に、平成13年と比較した平成14年の食肉類の使用量がどのように変化したかを整理すると、増加したとの回答比率は国産鶏肉(50.0%)、輸入鶏肉(38.1%)国産牛肉(34.4%)、国産豚肉(34.4%)で回答比率が高く、輸入牛肉(18.9%)と輸入豚肉(28.1%)では30%を下回っている。

図5 食肉類の仕入動向

 さらに、今後2から3年後の見通しについても、鶏肉と豚肉は76%以上の店舗で「増える」と回答しており、スーパーの惣菜部門では引き続き鶏肉、豚肉が主体となった需要構造が続くものと予想される。

図6 今後の見通し

4)ヒアリング結果からみたスーパーなどの惣菜部門

(1)惣菜部門の概要

 スーパーなどにおける弁当、惣菜類の品揃えは、消費者の家庭内調理離れに対応しながら、外食にも対抗する事業戦略(ミールソルーション)として売場の強化が進められている部門になる。16年1〜2月にヒアリングを行った10カ所の生協、スーパーの惣菜部門の概要を整理すると、惣菜部門の売上が食品全体の5〜10%と生鮮3品に次ぐ比率を占めるまでになっており、今後とも売上増加の見込める部門との期待も大きい。

 また、アンケート調査結果とも共通するが、近年は店舗内で下処理、調理した商品のウエイトを高め、「作り立ての美味しさ」を積極的にアピールする店舗が多くなっている。

 品揃えアイテム数は、惣菜類、米飯類、サラダ類を合わせると150〜200前後に達しており、かっての揚物中心の品揃えから煮物、焼物、サラダ類などの品揃えを増やす傾向も強まっている。このうち食肉類を使用した惣菜類は、熟成の必要がないこと、加工しやすく、単価も低いなどの「使い勝手」の良い鶏肉を使用した唐揚げ、立田揚げ、チキンカツなどの鶏肉惣菜類が中心となっており、アイテム数で40〜50程度が販売され、店舗によっては食肉惣菜類販売額の50〜70%を占めるところもある。

(2)食肉惣菜の人気アイテム

 鶏肉惣菜に使用している原料肉は、ほとんどの生協、スーパーがタイ産、中国産が中心であるが、今年の「鳥インフルエンザ」問題以降、ほとんどが販売価格を見直しながら国内産を使用したり、ブラジル産への切り替えを行っている。しかし、「鳥インフルエンザ」の消費者への影響は大きく、16年1〜3月については、関西地区の生協やスーパーを中心に消費者離れが進み、売上高が前年同月を20〜50%近く下回ったとの声も聞かれた。

 豚肉を使用した惣菜類は、食肉惣菜類販売額の30%前後のウエイトのところが多く、定番商品としては「とんかつ」類、「生姜焼」などの焼肉関係が中心であるが、最近は「酢豚」、「回鍋肉」、「焼豚」などの中華惣菜類の品揃えを強化するスーパーもみられる。

 豚肉惣菜に使用している原料肉は、米国産、デンマーク産などの輸入豚肉が中心であるが、スーパーの中には、販売価格の高い商品について国産豚肉を使用し、大衆的な商品やセールス商品には米国産を使用するところもみられる。

 牛肉を使用した惣菜類は、食肉惣菜類の中でもっとウエイトが小さく、アイテム数、販売額ともに全体の10〜20%のウエイトのところが多い。

 定番商品となっているのは「ビーフコロッケ」、「ハンバーグ」、「メンチカツ」で、生協、スーパーの中には「ビーフコロッケ」が単体で最も売上高が大きな商品となっているところもある。その他には、「焼肉」、「肉じゃが」類などになるが、牛肉は冷えると脂身が白く固まることから商品化が難しいとの声が多い。

 また、15年末の米国でのBSEの影響から、米国産牛肉を原料としてきた店舗では原料肉の手当が難しくなったことと、豪州産、国産への切り替えも価格の高騰からコスト的に手当が難しいこと、なによりも消費者の購買意欲が低下したとの判断からアイテム数を絞り込む動きがいくつかのスーパーでみられた。

 ただ、長い目で見たときには、牛肉を使用した惣菜類が限定的であることと、食肉類の中では牛肉に対する根強い需要があることから、商品開発への積極的な意向がいくつかのスーパーでみられた。

(3)今後の課題

 このように、生協、スーパーでの販売している惣菜類、日常的食として主婦が購入することが多いことから、焼鳥や唐揚げ、コロッケ、とんかつ、生姜焼・焼肉、肉ジャガなどの日常的でポピュラーな商品(メニュー)がどのスーパーでも共通した定番商品となっており、その意味では、需要量の多い食肉類はアンケート結果と同様に鶏肉を中心に豚肉、牛肉の順番となっている。

 さらに最近は、CVSチェーンとの競合が激化する中で、スーパーの店舗の営業時間を延長したり、24時間営業に踏み切るスーパーも見受けられるようになり、その戦略商品として「惣菜類」の売場を強化するなど、一種のCVS化傾向を強めるようになっている。

 しかし、生協、スーパーは、惣菜類の売上高が増加しているといえども、売上の中心は生鮮3品を含む内食素材となる一般的な食料品であり、惣菜類の品揃えの強化は簡便化志向の強い消費者の取り込みにつながるかもしれないが、家庭内食素材となる一般食料品の売上げを低迷させることにもなりかねない面がある。

 その意味では、一般食料品とうまく組み合わせができるような惣菜商品の開発や売場作りが今後の大きな課題といえる。

2.平成14年における食肉需要特性と今後の見通し

1)外食産業の市場動向と食肉需要

(1)外食産業の市場動向

 平成14年の外食産業の売上げ動向(市場規模)は、25兆4,685億円(前年比1.5%減)と推計され、長引く消費不況、デフレ経済などの影響から5年連続のマイナス成長となっている。

 飲食店部門は、既存店の売上げ低迷を新規出店で補うことでプラスの伸びを確保しているが、市場規模全体の13%のシェアをもつホテル・旅館関係は、パーティ、婚礼などの宴会需要低迷が続き3兆3,756億円(同9.1%減)、学校給食、社員食堂などの集団給食部門も、需要が堅調な病院給食(同0.3%増)を除くと3兆7,566億円(同0.8%減)、居酒屋ビヤホール、料亭・バーなどの料飲主体部門も5兆4,770億円(同3.5%減)と、厳しい状況が続いている。

 ただし、低価格で利便性が高い弁当・惣菜類が中心となっている料理小売業は5兆8,070億円(同0.5%増)と引き続き堅調な伸びとなった。しかし、好調とみられるこの分野も、数年前のような5%を上回るような高い伸びが見られなくなっている。

 このように、引き続き外食産業の経営環境は厳しく、これまでみられなかった企業の倒産や有力企業による不振企業の統合などの産業再編の動きも平成14年頃からの活発化してきている。

(2)外食産業の食肉需要にみる特徴

 上述のような経営環境の中での平成14年における外食産業の食肉需要動向は、平成13年に発生した国内BSEによる大規模な牛肉離れが、BSE検査と危険部位の除去体制の整備により、下半期から回復傾向を示した年といえる。

 しかし、その回復度合いも推定国内出回り量が過去最高となった平成12年時水準にまでは回復しておらず、平成13年に牛肉メニューを敬遠した消費者の一部は、引き続き牛肉メニューに慎重な傾向が根強いことを物語っている。

 このような需要動向を反映し、平成14年仕入れ調査での牛肉仕入れ店舗比率も1.1ポイント上回ったものの、平成12年との比較では5.0ポイント低い結果となった。また、牛肉の1店舗当たりの年間仕入量も14年は1,536kgと13年(1,330kg)を上回ったものの、12年(1,821kg)水準の需要量にまでは達していない。牛肉需要については、国内の安全対策が整備されたことを反映して、和牛を中心に国産牛肉の占める比率が幾分高まったことも特徴的な動きといえる。

 豚肉については、仕入店舗比率は83.8%と13年(86.2%)、12年(87.1%)を下回ったものの、1店舗当たりの年間仕入量では安全性に関する懸念材料がなかったこともあり、輸入豚肉を中心に増加し、14年は2,044kgと13年(1,840kg)を上回る需要量となり、食肉需要量に占める構成比を高めることとなっている。

 鶏肉についても、仕入店舗比率は82.1%と13年(86.8%)、12年(87.7%)を下回ったものの、1店舗当たりの年間仕入量では牛肉需要を代替し1,787kgと13年(1,692kg)を上回る需要量となっていた。

 1店舗当たり年間食肉需要量も、アンケート調査への回答が消費需要の低迷の影響が大きな生業的個人店からの回答が減少し、売上高規模の大きな法人店舗、チェーン店舗のウエイトを高めていることもあり、5,367kgと13年(4,862kg)を上回る結果となったことも市場環境の変化を反映した特徴的な傾向といえる。

 今後の見通しについては、牛肉より豚肉、豚肉より鶏肉が「増加する」との見方が多いこと、牛肉については平成15年の上半期は14年上半期よりも焼肉店などを中心に需要が回復基調となったことから、全般的に需要量が拡大すると見込まれる。ただし、牛肉については15年の年初から米国産、豪州産ともに原産国価格が高値で推移し、夏からは輸入関税が引き上げられた経緯もあり、このような価格動向が牛肉あるいは食肉全体の需要構成にどのような影響が与えたのかは、実態調査により確認しなければならない課題といえる。

2)惣菜メーカーの食肉需要特性

 平成15年度は、平成11年度調査以来、4年ぶりに弁当・惣菜メーカーの食肉需要実態を調査した。そこでの食肉類の需要特性は、構成比では牛肉の比率が高まる傾向がみられるが、需要量では鶏肉(全体の40.3%)や豚肉(同34.6%)が大きく、需要の中心となっている。

 鶏肉は価格水準が低い中国産、タイ産、ブラジル産が多く、豚肉になると国産の占める比率が50.4%と高い。外食産業では30%前後を国産が占める牛肉は、この部門になると米国産(37.9%)、豪州産(20.1%)が多いことも特徴といえる。

 需要見通しについても引き続き鶏肉、豚肉を中心に「増える」との見通しが多く、弁当・惣菜メーカーの食肉需要は引き続き鶏肉、豚肉を中心に推移するものと予想される。

3)スーパーなどの惣菜部門の食肉需要特性

 食品全般の売上げが低迷する中で、外食市場からの需要を取り込みながら着実に売上げを伸ばし、今や食品全体の5〜10%のウエイトを占めるまでになったスーパーなどの惣菜コーナーであるが、そこでの食肉需要(1店舗当たり年間3,253kg)も、弁当・惣菜メーカーと同様に鶏肉(全体の57.0%)と豚肉(同29.9%)が中心なっている。ただし、使用している食肉類の原産国は生鮮肉の品揃えの影響があるためか、弁当・惣菜メーカーとは異なり、牛肉では米国産(全体の57.3%)が多く、豚肉も米国産が同43.5%、次いで国産が同36.2%、鶏肉になると国産が同53.2%、次いで中国産が同22.5%であることが特徴と言える。

 今後の見通しについては、弁当・惣菜メーカーと同様に引き続き鶏肉、豚肉を中心に「増える」との見通しが多くスーパーなどの惣菜コーナーの食肉需要は引き続き鶏肉、豚肉を中心に推移するものと予想される。

3.外食産業の推計食肉需要の推移

 平成14年の外食産業での食肉需要量を推計すると、牛肉は平成13年9月に発見された国内初のBSE牛の影響から秋以降の需要量が減少した。この状況は平成14年の夏頃まで続き、特に店舗数や仕入店舗比率が低下した割烹・料亭や、仕入店舗比率が低下した学校給食では20%を上回る低下となった。また、日本料理店、西洋料理店、酒場・ビヤホール、ホテル・旅館では店舗当たり仕入量が減少した。しかし、その他の業種では、14年全般は輸入牛肉、後半になると国産牛肉の需要が幾分増加する結果を示した。その結果、平成14年における外食産業全体の牛肉推計需要量は36.2万トン、出回り見込み量に対する比率は44.1%と推計される(表2−1参照)。

 豚肉は、日本料理店、西洋料理店、酒場・ビヤホール、社員食堂、料理品小売業、ホテル・旅館で仕入店舗比率の上昇や店舗当たり仕入量が増加した。その結果、平成14年における豚肉の年間推計需要量は、41.6万トン、出回り見込み量に対する比率は28.4%と推計される(表2−2参照)。

 鶏肉は、西洋料理店、中華料理店、その他飲食店、酒場・ビヤホール、社員食堂、学校給食、料理品小売業では、店舗数、仕入店舗比率の上昇、店舗当たり仕入量の増加により需要量が増加している。その結果、平成14年における鶏肉の推計需要量は、68.2万トン、出回り見込み量に対する比率は51.3%と推計される(表2−3参照)。


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