★ 機構から


主要乳製品の流通実態調査について

酪農乳業部


 当機構では、主要乳製品の流通・消費の実態を把握するために、社団法人食品需給研究センターに委託して、「主要乳製品の流通実態調査」を毎年度実施している。

 今回は、15年度調査(平成14年度生産実績)のうち、主要乳製品であるバターと脱脂粉乳の調査結果の概要を紹介する。本調査は乳製品の供給者である乳業メーカーをはじめ需要者である食品製造業、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、百貨店などの小売業、フードサービスなどを対象とし、乳製品の流通、消費の実態について、アンケートを実施し調査したものである。

バター

業種別消費量(推計)

 平成14年度における国内のバターの推定消費量を89,800トン(農畜産業振興機構調べの推定出回り量)とし、その業種別および用途別の消費量推計を行った。

 バターの流通経路と業種別消費量(推計)を図1、表1に示した。乳業メーカーのバターの推定供給量は89,800トンで、その内訳は、社内消費仕向けが18.9%、社外販売が81.1%となっている。社外販売量72,800トンのうち、需要者に直接販売されるのは3,300トン(全体の3.7%)にすぎず、一次卸が68,600トン(同76.4%)を占める。なお、二次卸を経由するのは25,600トンと全体の28.5%となっている。一次卸とは主に大手乳業系列販社、乳製品卸、大手食品卸である。

 業種別消費量について見ると、「製菓・製パン」が24,900トン(全体の27.7%)で最も多く、次いで「小売業」が22,400トン(24.9%)、「乳業(バターを生産している)」が17,000トン(18.9%)、「外食・ホテル」が9,400トン(10.5%)、「加工油脂」が4,600トン(5.1%)、「乳業(バターを生産していない)・アイスクリーム」が4,200トン(4.7%)、「調理食品」が2,800トン(3.1%)、「飲料メーカー」が1,700トン(1.9%)、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が1,200トン(1.3%)となっている。

 なお、輸入バターの消費は、「乳業」が全体の73.3%と最も多く、以下「乳業・アイスクリーム」が20.0%、「製菓・製パン」が3.3%となっている。

図1 バターの流通ルート(平成14年度推計)
注:乳業のうち、バターを生産していないメーカー

用途別消費量(推計)

 次に、バターの推定消費量89,800トンの用途について見ると、「小売業」が22,400トン(全体の24.9%)で最も多く、次いで「菓子・デザート類」が14,200トン(15.8%)、「パン類」が12,400トン(13.8%)、「外食・ホテル」が9,400トン(10.5%)、「乳飲料」が6,000トン(6.7%)、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が4,800トン(5.3%)、「マーガリン類」が4,700トン(5.2%)、「調理食品」が2,800トン(3.1%)、「アイスクリーム類」が2,300トン(2.6%)、「乳等を主要原料とする食品」が1,800トン(2.0%)となっている(図2、表2)。

 輸入バターはその4分の3が乳業で消費されているため、用途別で見ると、「乳飲料」が33.3%、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が23.3%、「加工乳」が20.0%、「アイスクリーム類」が10.0%、「菓子・デザート類」が3.3%となっている。

図2 バターの用途(平成14年度推計)
 

用途別消費量の推移(バター)

 平成11年度からのバターの用途別消費量(推計)の推移は表3の通りである。

 近年、バターの生産は、微減ないし横ばい傾向で推移したが、その消費量を平成14年度と加工乳、乳飲料が増加傾向にあった平成11年度と比較して見ると、バター全体の消費量が年平均2.7%の伸びとなっている。これを用途別に見ると、「乳飲料」が同10.9%、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が10.1%、「菓子・デザート類」が6.7%、「パン類」が4.4%の伸びを示している。一方、牛乳等のうち、「加工乳」は、15.7%の減少とその落ち込みが顕著となっており、また、「小売」も1.3%の減少となっている。

図3 バターの用途別消費量の推移

業種別の消費実態(国産バター)

1 乳業メーカー

 バターを生産している18社のうち、国産バターを社内消費しているのは14社であった。主な用途について見ると、「乳飲料」が26.3%で最も多く、次いで「はっ酵乳」が14.7%、「乳等を主要原料とした食品」が12.0%、以下「マーガリン類」6.4%、「調製粉乳」6.3%、「菓子類・デザート」5.5%の順であった(表4)。なお、その他の用途が 23.6%となっているが、その内訳はチーズ製品、クリーミングパウダー、コーヒークリームなどである。

2 アイスクリームメーカー

 回答のあったアイスクリームメーカー 9社のうち、国産バターを使用しているのは8社であった。主な用途は「アイスクリーム」が多く、次いで「調理食品」となっている。

3 はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー

 回答のあったはっ酵乳乳酸菌飲料メーカー12社のうち、国産バターを使用しているのは2社であった。主な用途は、「はっ酵乳」「乳酸菌飲料」「その他」(ヨーグルト)「アイスクリーム」となっている。

4 加工油脂メーカー

 回答のあった加工油脂メーカー10社のうち、国産バターを使用しているのは9社であった。主な用途は「マーガリン類」「その他」で、それらの内訳はマーガリン、ホイップクリームなどとなっている。

5 製パン

 回答のあった製パン業12社すべてで国産バターを使用している。主な用途は「パン類」(98.3%)となっており、食パン、バターロールなどの練り込み用に使用されている。

6 製菓

 回答のあった製菓業50社のうち、国産バターを使用しているのは45社であった。主な用途は「菓子類」が98.4%を占め、その他「パン類」「アイスクリーム」となっている。「菓子類」の内訳はケーキ類、焼き菓子、パイ、クッキー、ビスケット、キャンディなどとなっている。

7 調理食品

 回答のあった調理食品メーカー13社のうち、国産バターを使用しているのは10社であった。主な用途は「調理食品」で、内訳は、ホワイトソース、ハンバーグ用ソース、冷凍食品などとなっている。

8 外食産業

 回答のあった外食産業20社のうち、国産バターを使用しているのは15社であった。主な用途は「調理用」「その他」「菓子・デザート類」「パン用」となっている。外食では調理用からデザート、パン練り込み用、トースト用などと用途が広い。

9 ホテル

 回答のあったホテル60社のうち、国産バターを使用しているのは58社であった。主な用途は「パン用」が最も多く、次いで「調理用」「菓子・デザート類」となっている。


今後(直近2〜3年)の需要見通し

 供給サイドから見た国産バターの今後の需要見通しは、やや増加と予測している。一方、需要者の今後の消費見通しはやや増加となっているものの、業種、企業により差異がみられる。「増やす・やや増やす」の割合が比較的高いのははっ酵乳、製菓、飲料となっている。

 供給サイドから見た輸入バターの今後の需要見通しは、やや増加と予測している。一方、需要者の今後の消費見通しはやや増加となっているものの、業種、企業により差異がみられる。「やや増やす」の割合が比較的高いのは加工油脂、ホテルとなっている。

脱脂粉乳

業種別消費量(推計)

 平成14年度における国内の脱脂粉乳の推定消費量を173,600トン(農畜産業振興機構調べの推定出回り量)とし、その業種別および用途別の消費量推計を行った。

 脱脂粉乳の流通経路と業種別消費量(推計)を図4、表5に示した。乳業メーカーの脱脂粉乳の推定供給量は173,600トンで、その内訳は、乳業メーカーの社外販売が63.1%、社内消費仕向が36.9%となっている。社外販売量109,500トンのうち、需要者に直接販売されるのは14,500トン(全体の8.4%)であり、一次卸が95,000トン(同54.7%)となっている。また、二次卸を経由するのは17,000トンと全体の9.8%となっている。

 業種別消費量について見ると、「乳業(脱脂粉乳を生産している)」が 64,100トン(全体の36.9%)で最も多く、次いで「乳業(脱脂粉乳を生産していない)・アイスクリーム」が30,100トン(17.3%)、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が27,000トン(15.6%)、「製菓・製パン」が17,500トン(10.1%)、「飲料メーカー」が12,200トン(7.0%)、「調理食品」が9,500トン(5.5%)、「加工油脂」が8,700トン(5.0%)となっている。

 また、輸入脱脂粉乳6,100トンの内訳は「乳業」が82.0%を占め、以下「はっ酵乳・乳酸菌飲料」「製菓・製パン」「飲料メーカー」がいずれも4.9%、「乳業・アイスクリーム」が3.3%となっている。

図4 脱脂粉乳の流通ルート(平成14年度推計)
注1:乳業のうち、脱脂粉乳を生産していないメーカー。
 2:小売業向けは、その他に含む。

用途別消費量(推計)

 次に、脱脂粉乳の推定消費量173,600トンの用途について見ると、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が59,200トン(全体の34.1%)で最も多く、次いで「乳飲料」が33,100トン(19.1%)、「飲料」が14,800トン(8.5%)、「パン類」が10,500トン(6.0%)、「菓子・デザート類」が9,500トン(5.5%)、「加工乳」が7,300トン(4.2%)、「乳等を主要原料とする食品」が6,800トン(3.9%)、「アイスクリーム類」が5,900トン(3.4%)、「マーガリン類」が4,400トン(2.5%)となっている(図5、表6)。

 輸入脱脂粉乳の用途別内訳は「乳飲料」が45.9%と最も多く、乳飲料消費量全体の8.5%を占めている。以下、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が34.4%、「加工乳」が8.2%、「アイスクリーム類」が4.9%、「パン類」が3.3%となっている。

図5 脱脂粉乳の用途(平成14年度推計)

用途別・業種別消費量の推移(脱脂粉乳)

 平成11年度からの脱脂粉乳の用途別消費量(推計)および業種別消費量(推計)の推移は表7、8の通りである。

 近年、脱脂粉乳の生産は、減少傾向で推移したが、その消費量を平成14年度と加工乳、乳飲料が増加傾向にあった平成11年度と比較して見ると、脱脂粉乳全体の消費量が年平均1.8%の伸びとなっている。これを用途別に見ると、「飲料」が同14.0%、「菓子・デザート類」が4.6%の伸びを示している。一方、牛乳等のうち、「加工乳」は、36.3%の大幅な減少となっており、「乳飲料」が12.7%、「アイスクリーム類」が13.1%とかなり大きく減少した。また、「パン類」も6.1%の減少となっている。なお、平成13年度と比較して見ると、「加工乳」、「アイスクリーム類」は対前年度比で20%以上の減少となっているが、「乳飲料」、「はっ酵乳・乳酸菌飲料」については、前年度をわずかに上回った。

 このような用途別消費量の推移に伴い、業種別消費量も「乳業メーカー」が年平均16.3%と大幅に落ち込んでいるが、逆に「乳業・アイスクリーム」は飲料向けの増加により19.8%増加している。

図6 脱脂粉乳の用途別消費量の推移


図7 脱脂粉乳の業種別消費量のシェア推移




業種別の消費実態(国産脱脂粉乳)

1 乳業メーカー

 脱脂粉乳を生産している13社のうち、国産脱脂粉乳を社内消費しているのは12社であった。主な用途について見ると、「乳飲料」が36.1%で最も多く、次いで「はっ酵乳・乳酸菌飲料」が34.3%、「乳等主要原料食品」が11.3%となっており、この3つが主な用途となっている(表9)。なお、「その他」の用途は、クリーミングパウダー、加工食品などとなっている。

2 アイスクリームメーカー

 回答のあったアイスクリームメーカー 9社のうち、全社が国産脱脂粉乳を使用している。主な用途は「アイスクリーム類」が99.3%となっている。内訳はアイスクリーム、ソフトクリーム、氷菓などとなっている。

3 はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー

 回答のあったはっ酵乳・乳酸菌飲料メーカー12社すべてが国産脱脂粉乳を使用している。主な用途は「はっ酵乳」が55.6%、「乳酸菌飲料」が35.0%となっている。

4 加工油脂メーカー

 回答のあった加工油脂メーカー10社すべてが国産脱脂粉乳を使用している。用途は「その他」が85.7%で最も多く、その内訳はホイップクリーム、濃縮乳となっている。次いで「マーガリン類」が13.8%となっている。

5 製パン

 回答のあった製パン業12社 のうち、11社が国産脱脂粉乳を使用している。主な用途は「パン類」で練り混み用となっている。

6 製菓

 回答のあった製菓業50社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは25社であった。主な用途は「菓子・デザート類」が50.6%、「アイスクリーム類」が27.5%などとなっている。具体的な内訳はビスケット、クッキー、クラッカー、チョコレート、焼き菓子、アイスクリーム、粉末飲料などとなっている。

7 飲料メーカー

 回答のあった飲料メーカー9社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは7社であった。主な用途は「飲料」である。具体的な用途は、缶コーヒー、清涼飲料、紅茶飲料などとなっている。

8 調理食品

 回答のあった調理食品メーカー13社のうち、国産脱脂粉乳を使用しているのは9社であった。主な用途は「調理食品」70.2%および「その他」27.4%で、その内訳はハンバーグおよびミートボールの練り込み用、オムレツ、冷凍食品など用途は幅広い。


今後(直近2〜3年)の需要見通し

 供給サイドから見た国産脱脂粉乳の今後の需要見通しは、やや増加と予測している。一方、需要者の今後の消費見通しは、企業によって差異がみられる。特にはっ酵乳、飲料では堅調な見通しとなっている。

 供給サイドから見た輸入脱脂粉乳の今後の需要見通しは、回答企業により差異があるがおおむね減少と予測している。一方、需要者の今後の消費見通しは、乳業以外は横ばいと予想している。


元のページに戻る