◎地域便り


宮城県  ●安全・安心・おいしい《しもふりレッド》を食卓へ
        −開発、生産、流通一体の取り組み―

宮城県/山田 智子


 宮城県の豚飼養頭数(平成16年2月現在)は全国第14位の24万頭だが、飼養戸数は全国第6位の405戸である。後継者不足や環境問題などから、飼養戸数は年々減少しているものの、水稲と組み合わせた家族経営が、まだまだがんばっている地域である。

 宮城県では、平成2年にランドレース種(L)の系統豚《ミヤギノ》を造成した。これをベースとした、LWD三元交雑種(LとW(大ヨークシャー種)とDの交雑種)『宮城野豚(ミヤギノポーク)』の銘柄化を生産者や全農とともに進めてきた。

 その間、宮城野豚のブランド強化を目指し、8年の歳月をかけ平成13年にできたのがデュロック種(D)の系統豚《しもふりレッド》である。優れた増体能力と肉質を併せ持っており、名前のとおり、牛肉のように霜降り状のサシが入った筋肉が特徴である。筋肉内脂肪含有量は一般的な豚肉が3%であるのに対し、5%もある。

 《しもふりレッド》の宮城野豚に占める血液割合を75%に高めたものを『ニュー宮城野豚』として銘柄化を進めている。安全・安心志向に応えるべく、ポストハーベストフリー&非遺伝子組換え穀物を給与している。また、農家個々の衛生管理や生産工程の記録・記帳を徹底し、生産履歴の把握ができるようにしている。昨年秋から本格的な出荷が始まったが、業者や消費者からも好評を得ており、人気のブランド豚になることが期待される。

 
  しもふりレッドの子豚(産子数は少なめ)
   
 
  まぼろしの逸品「しもふりレッド」のロース肉


 一方、《しもふりレッド》は純粋種としても、銘柄化が進んでいる。産子数が少なく経済的にリスクを伴うので、県畜産試験場の指導を遵守し、連携を密にして生産する条件で、数ヵ所の拠点で限定的に生産している。

 みやぎ生協では産直方式で『宮城県産 霜降り豚 しもふりレッド』として精肉を販売し、「コクがあるのにあっさりしている」「モモ肉にまでサシが入っている」と好評である。

 また、はさま町で加工品の製造・販売を手がける(有)伊豆沼農産は8戸の農家と提携し、『伊達の純粋赤豚』として販売を始めた。生産にこだわり、精肉処理は全て自社で行い、風味や軟らかさなどを全頭確認した上で出荷している。自社の直売所やレストランで販売・提供するほか、県内スーパーなどで販売を行っている。昨年は黒豚の産地、鹿児島での販売を開始、この夏は香港への輸出に踏み切った。舌の肥えた消費者、富裕層への売り込みで高級豚肉としての定着化を図っている。

 《しもふりレッド》の豚肉の人気と評価は確実に高まっている。全国から多くの照会があるが、生産数量がまだ少なく、もうしばらくは「食材王国みやぎ」のまぼろしの逸品ということになりそうである。

元のページに戻る