◎地域便り


群馬県 ●「牛肉のトレーサビリティ」〜流通段階の取り組みについて〜

関東農政局 群馬農政事務所/細野 修


 食品安全行政の見直しによる消費者重視の農林水産行政を確立し、国産牛肉に対する信頼回復などを目的として公布された「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」は、昨年12月施行の生産・と畜段階に続き、本年12月からは流通段階についても施行されることになった。

 特定牛肉を取り扱う食肉販売業者および焼肉店などをはじめとする特定料理提供業者は、(1)個体識別番号などの表示・伝達(2)取引の記録・保存などが義務付けられることになり、制度に対する事前の理解を図ることが必要となった。

 このようなことから、対象となる事業者などが適切かつ円滑な対応を講じることが可能となるよう制度周知を図るために群馬農政事務所の取組み状況について、ここに紹介する。

 周知前に急務であったことは、制度の対象業者の特定で、1,800店程の食肉販売業者および特定料理提供業者について、牛肉の取り扱い状況や廃業の確認などを行いながら、この取り組みを開始した。

 まずは、県をはじめ関係機関及び食肉専門店などが加盟する食肉事業協同組合連合会などの各種団体などと、制度周知に向けた協力体制を確立し、各団体や系列店主催の会議などにも積極的に出席し、制度に対する理解浸透を図った。

 対象業者には個別周知を軸として進めながら、卸売業者の準備状況調査を実施し、法施行に向けた取り組み状況を把握した。また、当農政事務所内に相談窓口を設置するとともに7月・8月には制度説明会を定例で開催した。当農政事務所ではHPおよび広報「食と安全」への関連記事の掲載などを通じて、幅広い周知を行っている。

その中で出された制度導入にあたっての課題などについては、制度は理解できるとした上で「導入コストの問題」、「確認作業が増加する」、「事業者メリットが期待できない」など、経費や手間が問題視されている。

 表示方法では、食肉専門店などは専用の表示ボード、スーパーなどはラベル表示、焼肉店などはホワイトボードと事業者ごとの特定牛肉の取扱い量により、それぞれが対応を検討している状況にある。

 一方、消費者に対しても、制度について理解を得ることが重要であり、安全性確保などの消費者メリットについて伝えて行き、安心感の向上を図っていく必要がある。

 牛肉トレーサビリティの実施は、これまでの牛肉の安全性に対する信頼回復を目的とするほか、迅速な情報伝達によりBSEのまん延防止措置の的確な実施など、リスク軽減が期待される仕組みであり、本年12月に向けた制度周知の中で深く理解を求め、信頼回復へのステップとなることを期待したい。


制度説明会の様子
前橋市内にある販売業者の精肉売場

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