◎地域便り


沖縄県 ●琉球在来豚の繁殖と利用
       〜付加価値のある「ブランド豚」を目指して〜

沖縄県/東江 直樹


 
 
色は黒く、頭も大きく、
ちょっとグロテスクなチャーグー豚
 
 
 
チャーグー豚(育成豚)への給餌


 色は黒く頭もデカい。腹は垂れておまけに肢が短い。想像するだけでもグロテスクなのですが、よく見ると愛嬌のある、豚の社会では結構もてる、そんな豚の話だ。

 沖縄地方を中心に古くから飼育されながら、戦後、発育に優れ、産肉量が高く、経済性に優れた外国種が急速に普及し、晩熟・小柄な島豚(アグー)は外国種との交配による雑種化やとう汰により姿を消して行った。ほぼ絶滅しかけたアグーの純粋種を復活させようという試みが、わずかに残った6頭の交雑化されたアグーを基礎に 、沖縄県立北部農林高等学校を中心にして昭和59年より20余年に渡り戻し交配を実施してきた。その結果、アグーらしさの形質固定に成功した。600年前、中国より閣人が琉球に帰化する際に持ち込んだとする史実が「ミトコンドリアDNA」の調査で科学的に証明された。

 戻し交配を始めてから120頭まで増頭させる事が出来た反面2つの大きな問題が出てきた。(1)連続した近親交配により、繁殖能力・発育能力が低下するという「近交退化」の問題。(2)アグーはラードタイプのため太りやすい体質をしており過肥になり繁殖率が低下する。

 この問題を解決するため平成14年度よりプロジェクト学習で、給与飼料を穀物主体から粗飼料と発酵飼料を自家配合し、エネルギー量を抑えた給与体系に変更し、年間分娩回数を増やすため、別の品種と交配することで能力を高める「雑種強勢」を行いこの問題解決を行った。

 交配種の条件として(1)アグーの特徴である全身黒毛であること。(1)繁殖能力・発育能力がアグーより優れていること。(3)肉質がアグーに近い上品質であること。を考慮しデュロック種の雌とアグーの雄との交配で北農オリジナル豚「チャーグー」が誕生した。

 チャーグーの作出では、雄の生殖器が雌の生殖器に届かないという問題をエサ場にスノコを敷いて、若い未経産の雌を用いたり、人工授精により解決した。

 チャーグーの繁殖能力は平均産子数がアグーの約2倍高く育成率も約3倍高いこと、ほ育能力に優れていることが解った。

 チャーグー肉に含まれるアミノ酸成分、脂肪酸の分析結果を両親、一般豚と比較すると、甘みや旨味が強く、飽和脂肪酸が少なく、体にいい不飽和脂肪酸が多いことが解った。

 チャーグー肉は精肉販売だけでなく販路拡大を目指し、プレスハムの商品開発に取り組んだ。校内外での試食アンケートと販売で多くの方から美味しい、また食べたい、着色料を使用していないので安心、などと好評を得ることができた。

 今後、私達は沖縄の食文化を継承し、琉球在来豚の保存と利用拡大を図り、地域の特産品の開発に取り組み付加価値のあるブランド豚で起業を目指している。


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