トピックス

●●●肉用牛経営の6割で後継者不在●●●

 農林水産省が公表した「農業構造動態調査」によると、平成16年1月1日現在の農家人口(農家の世帯員数)は、940万人で、前年に比べて24万7千人減少した。農家人口に占める65歳以上の割合は、前年から1.6ポイント増加し31.4%となり、確実に高齢化が進行している。

 農業経営者の平均年齢は62.2歳で、65歳以上の経営者の占める割合は45.6%となった。農業経営別にみると、酪農(55.3歳)、養豚(57.4歳)、施設野菜(59.3歳)、養鶏(59.6歳)の順で平均年齢が低い。逆に65歳以上の割合は露地野菜(53.0%)、肉用牛(49.2%)、果樹類(49.1%)で高くなっている。(図1)

 農業後継者についてみると、農業経営の47.1%で同居する後継者がいない状況となっている。農業経営別では、稲作や露地野菜で低くなっている一方で、畜産は比較的高く、いずれも50%を超えている。特に肉用牛では、経営体の6割以上で同居する後継者がいない状況となっており、肉用牛の生産基盤を維持するためには、担い手の育成が急務となっている。(図2)

図1 経営者の平均年齢と65歳以上の割合
資料:農林水産省「農業構造動態調査」

図2 同居する農業後継者がいない割合
資料:農林水産省「農業構造動態調査」

●●●豪州産穀物肥育牛肉の輸入が増加●●●

 財務省が公表した「貿易統計」によると、7月の牛肉輸入量(部分肉ベース)は、前年同月比26.8%減の4万6千トンとなった。前年同月に比べて大幅に下回ったが、これは、昨年の7月に、翌8月からの関税の生鮮・冷蔵牛肉に対する緊急措置の発動を見越した駆け込み輸入が行われたため、他の月と比較して突出した量が輸入されたことによる。

 主要輸出国であった米国からの輸入が停止されているにもかかわらず、16年7月の輸入量は15年4月から12月までの平均輸入量を3.7%下回るに過ぎない。

 7月の輸入量を国別にみると、豪州が前年同月比29.0%増の4万1千トン、ニュージーランドも62.6%増の4千5百トンといずれも大幅に増加した。こうした傾向は、16年2月以降、顕著になっている。BSEの発生で米国、カナダからの輸入が停止されている現在、豪州からの輸入は全体の約9割を占めている。(図3)

図3 牛肉の国別輸入量の推移
資料:財務省「貿易統計」
 注:部分肉ベース

 豪州からの輸入は数量が拡大しただけでなく内容的にも変化がみられる。豪州の輸出統計によると、7月の日本向け牛肉輸出量は、グラスフェッド(牧草肥育牛肉)が46.1%増の2万3千トン、グレインフェッド(穀物肥育牛肉)が78.8%増の1万7千トンとなった。いずれも大幅に増加しているが、グレインフェッドの増加率がグラスフェッドを上回っており、7月の輸出量に占めるグレインフェッドの割合は、前年同月から4.9ポイント上昇し42.5%となっている。(図4)

図4 豪州の日本向け牛肉輸出量
資料:豪州農水林業省

●●●ハム・ソーセージなどの加工品仕向豚肉は、輸入物が増加●●●

 (社)日本ハム・ソーセージ工業協同組合などの調べによると、15年のハム・ソーセージなどの加工品生産量は、49万トン(対前年比▲2.5%)とわずかに減少した。

 豚肉の国産および輸入物の加工品仕向数量の推移をみると、15年度の国内生産量89万トンのうち加工仕向け量は、7.9トン(シェア8.9%)、輸入量78万トンのうち加工仕向け量は、33万トン(シェア42.4%)となった。

 国内物の傾向では、豚肉の生産量がBSE発生前の12年度とほとんど同水準を維持しているにもかかわらず、加工品仕向量は、12年度と比較して22.4%減と大幅に減少傾向にある。

 一方、輸入物では、輸入量の増加に比例して加工仕向も増加傾向にあり同様に12年度と比較すると7.4%とかなりの程度上回った。

 また、15年度の加工仕向量全体の国内物と輸入物の比率は、2:8となっており、12年度の比率3:7に比べ国内物のシェアが減っており、加工仕向は、輸入物で賄う傾向がますます強くなってきている。

 16年に入ってからの直近の動きをみると、BSE、鳥インフルエンザの発生により、牛肉、鶏肉の消費の減少が影響し、豚肉加工品(ハム、ウインナー、ベーコン、焼豚など)の生産量が伸びている。

図5 ハム・ソーセージなどの生産量の推移
資料:(社)日本ハム・ソーセージ工業協会組合調べ

図6 豚肉生産・輸入量に占める加工品仕向け量の推移

●●●ブロイラー輸入価格上昇●●●

 財務省「貿易統計」によると、7月のブロイラー(冷凍品)のCIF価格(運賃保険料込み)は、243円/kg(対前年同月比36.9%高)となった。

 関税分類上、ブロイラーの輸入量は形態別に「分割しないもの」(いわゆる中抜き丸鳥)、「骨付きもも」および「その他」(正肉や内臓肉など)に区分して集計されている。

 また、冷凍輸入鶏肉はそのほとんどが唐揚げ、焼き鳥などの加工用に仕向けられている。

 輸入量は、海外で高病原性鳥インフルエンザが発生し、供給先が断たれたことなどから、15年11月頃から激減し、さらに国内での発生による消費の減少から、一時的に輸入価格も急落したものの、4月以降消費は回復傾向で推移しており、在庫量の不足などから再び価格が上昇している。

 なお、鶏肉輸入量の不足は、加工用として代用できる鶏肉調製品で補充されてきており、調製品の輸入量は既に、前年並みに回復してきている。

 現在の、鶏肉の輸入先は、衛生問題などでブラジル産に限られてきており、7月の鶏肉輸入量の96%をブラジル産が占めた。

 冷凍鶏肉の実需者にとっては、価格が高くとも、相手国が限定されているだけに厳しい市場環境にあるといえる。

図7 ブロイラーの輸入量およびCIF価格
資料:財務省「貿易統計」
CIF価格とは運賃保険料込みの価格

●●●生乳生産量、猛暑により1.0%減少●●●

 農林水産省の「牛乳乳製品統計」によると、平成16年7月の生乳生産量は、北海道で前年の生産拡大の反動もあり、前年同月とほぼ同水準となったものの、都府県でわずかに減少した結果、全国では前年同月比1.0%減の71万2千トンと3カ月ぶりに前年を下回った。このような生乳生産の減少には、今夏の猛暑が影響しているとみられる。

 一方、牛乳や成分調整牛乳の生産は好調で、牛乳等向けの処理量は5カ月ぶりに前年同月を上回った。この結果、乳製品向けの処理量は前年同月を6.6%下回る26万2千トンに減少した。 (図8)

図8 生乳生産量、処理量の推移(前年同月比)
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」

●●●第2四半期の鶏卵生産量、前年同期を下回り、価格は堅調●●●

 8月に公表された鶏卵流通統計によると、16年第2四半期(4月〜6月)の鶏卵生産量は、4月206,865トン、5月211,162トン、6月204,901トンとなり前年同期の生産量を2.1%とわずかに下回った。

 一方、この期間の2大消費地である東京および大阪への入荷量は、それぞれ55,837トン、54,340トンとなり、行楽需要などのための家計消費の需要が活発化し、前年同期をそれぞれ2.3%、2.2%とわずかに上回って推移した。

 8月の猛暑の影響で産卵率が低下し、卵重が減っていることなどから、市場では大玉の供給が減少し、品不足状態になっている。価格の推移を見ると大玉の卸売価格が上がり続けている。8月の東京・全農・Lサイズで179円/kg(対前年同月比27.9%高)となっており、さらに量販店での需要が多いL玉1パックの小売価格は、192円/10個パック(対前年同月比13.6%高)となった。

 今後も生産調整による計画生産、学校給食開始による需要が見込まれるため価格は堅調に推移するものと思われる。

図9 鶏卵生産量と卸売価格(東京、L中値)
資料:農林水産省「鶏卵流通統計」
   全農「畜産販売部情報」

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