1.調査の背景
わが国では、流通・消費段階における食品の廃棄や食べ残しによる食料資源の無駄や環境への影響などが問題となっている。また、主要先進国中最低の水準となっているカロリーベースの食料自給率(平成15年度概算値40%)の低下に歯止めをかけるには、関係者が一体となって食料消費および生産の両面にわたる課題を解決することが必要であり、この食料消費面の課題の1つとして、食品の廃棄や食べ残しの減少を含めた食生活の見直しがあげられている。
このため農林水産省では、食品の廃棄や食べ残し、食事状況を把握し、食生活見直しに向けた運動の展開を進めるための資料として、平成12年から食品ロス統計調査を実施している。
2.調査の仕組み
食品ロス統計調査(外食産業調査)は、外食における食べ残しの実態などを明らかにするために実施しているものである。
本調査は、東京都、名古屋市、大阪市など全国の大都市のうち11都市にある食堂・レストラン100店舗で、9月から10月にかけての間の1日の昼食時に行った。ここでいう食堂・レストランとは、日本料理店、西洋料理店、中華料理店をはじめとする店舗のことであり、ファーストフード店などは含まない。
調査の方法は、各店舗毎に調査対象とするメニューに使われた食品の重量と、食べ残された重量を計量して行った。なお、以下で述べる「食べ残し量の割合」とは、この食べ残された重量を、メニューに使われた食品の重量で割ったものである。
3.調査結果の概要
・食品類別の食べ残しの状況
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表1食品類別の食べ残し量の割合、食品使用量及び食べ残し量
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食堂・レストランにおける食べ残し量の割合は3.3%で、前年を0.3ポイント下回った。また、1食当たりの食べ残し量は19.4gであった。
食品類別にみると野菜類が4.9%と最も高く、次いで卵類3.8%、穀類3.3%となっている。一方、肉類は2.5%と、主要な食品類の中では最も食べ残し量の割合が低くなっている。なお、魚介類は2.8%となっており、わずかに肉類の食べ残し量の割合よりも高くなっている。
また、食べ残し量を食品類別にみると、調理加工食品が多く使用されていることから、調理加工食品の食べ残し量が最も多くなっている。野菜類は食べ残し量の割合が高いため、食品使用量の多い穀類を食べ残し量で上回っているが、肉類および魚介類は食品使用量の多い順に食べ残し量が多くなっている。なお、肉類の食品使用量は魚介類の約2倍となっているが、食べ残し量では約1.8倍となっている。
図1 食品使用量及び食べ残し量の食品類別構成割合
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・料理別の食べ残しの状況
料理別にみると、野菜の漬けもの、野菜のゆでもの、サラダなど、野菜を主体とした料理の食べ残し量の割合が、ごはんや肉、魚を主体とした料理に比べ高くなっている。特に野菜の漬けものは11.6%と、食べ残し量の割合が大変高くなっている。
一方、主食であるごはんの食べ残し量の割合は3.7%で、野菜を主体とした料理を大きく下回っているが、食べ残し量でみると、1食当たりの提供量が多いことから野菜の漬けものなどを大きく上回る8.0gで、毎食ごはんを約一口分、食べ残していることになる。
食べ残し量の割合を業種別にみると、日本料理店ではごはん(白飯)の食べ残し量の割合が他の業種に比べ高くなっている。
肉を主体とした料理の食べ残し量の割合では、肉の炒めものが3.4%、肉の揚げものが2.7%で、他の料理に比べて食べ残し量の割合は比較的低くなっているが、中華料理店では肉の揚げものの食べ残し量の割合は6.1%と高くなっている。
表2 料理別の食べ残し量の割合及び食べ残し量
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表3 主な料理別の食べ残し量の割合
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注:1 ごはん(白飯)には、カレーライス、どんぶりもの等のごはんは含まない。
2 調査対象食数が40食以下のものについては、「‥」とした(以下、同じ。)。 |
図2 食べ残し有無の食数の割合
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・1食ごとの食べ残しの状況
1食ごとに食べ残しの有無を割合でみると、1食のうち何らかの食べ残しのあった食数の割合は34.1%で、3分の1以上の人が食べ残しをしていることになる。
これをごはん(白飯)の食べ残しの有無についてみると、ごはんの食べ残しがなかった食数の割合は8割以上で、多くの人がごはんを残さず食べている。しかし食べ残しのあった食数についてみてみると、出されたごはんの半分以上を食べ残しているものが16.2%となっている。
図3 ごはん(白飯)の食べ残し食数の割合
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・世帯の食べ残し状況との比較(参考)
今回は外食産業についてのみの公表となっているが、平成12年から毎年、一般の世帯についても調査を行っており、平成16年分の調査結果については本年7月に公表の予定である。参考までに平成15年の調査結果を述べると、世帯における食品ロス率は4.8%となっている。この食品ロスには、食べ残しだけでなく、消費期限切れなどで食事として提供されずに廃棄されたもの(直接廃棄)や、だいこんの皮の厚むきなど調理時に過剰に除去されたもの(過剰除去)も含まれている。食品ロス率のうち、食べ残しの割合をみると1.6%となっており、外食産業での食べ残し量の割合(3.3%)の約半分となっている。これは、世帯では料理が余っても次の食事に回すことができることや、嫌いな食品があまり出てこないこと、1人ひとりの適量を提供できることなどが影響しているものと考えられる。
表4 世帯における食品ロス率(平成15年)
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4.終わりに
農林水産省が行った「平成12年度食料消費モニター第2回調査結果」(食料消費モニターは全国主要都市に在住する主婦1,021人)によると、外食店で食べ残しをする主な理由は、「一品の量が多すぎるから」と回答した人の割合が最も高く59.9%となっており、この割合は年代が上がるにつれて高くなっている。特に、50代では65.1%、60歳以上では70.8%と、他の年代に比べてかなり高くなっている。
表5 外食店で食べ残しをする主な理由(2つ以内回答)(平成12年)
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資料:農林水産省総合食料局消費生活課「平成12年度食料消費モニター第2回調査結果」 |
外食における食べ残しについては、外食産業の事業者が、ごはんやおかずの量を大盛り、小盛りなどから選べるようにしたり、おかわり自由にしたりするなど、1人ひとりにあわせた量を提供できるように工夫することにより減らすことができるものと考えられる。
最近の動きとして、ファミリーレストランや牛丼チェーンなどの外食店では、通常より量の少ない「スモールメニュー」を導入する動きが高まってきている。消費者としても注文するときに適量を注文するよう心がけることや、望ましい食事について事業者側に提案できるような確かな目を身につけ、日々の食事や調理、買い物のなかで、「食」について考えていくことが大切である。食品の無駄を減らす努力については外食産業はもとより、各家庭、食品製造業など、食にかかわる人々が連携して取り組んでいくことが重要である。
今回調査公表した結果が、外食産業において食べ残しをはじめとする廃棄物などの排出を削減する取り組みの促進や、消費者の食習慣の見直しの機会につながれば幸いである。
なお、「平成16年食品ロス統計調査(外食産業調査)結果の概要」の詳細なデータなどについては、農林水産省ホームページhttp://www.maff.go.jp/の「施策の動き・情報>>統計データ」に掲載している。
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