◎地域便り


愛媛県 ●手作り「子豚ハッチ」で子豚を育てよう

愛媛県/吉岡 美鈴


 近年、養豚農場では、経済性の向上を考慮して種豚改良を進めた結果、産子数・育成率が向上した。しかし、子豚を収容する離乳豚舎施設の改修や新設には費用がかさむため、自ずと密飼い傾向となり、感染症やストレスによる発育不良豚(ヒネ豚)が発生し、生産性を低下させる要因となっている。

 そこで、愛媛県畜産試験場では、農場の空いたスペースを利用し、生産者が自ら手作りでき、低コストな子豚の屋外育成施設(以下子豚ハッチ)を利用した、離乳子豚の屋外管理技術開発に取り組んでいる。

 「子豚ハッチ」は、子豚が寝る小屋と、それに付随する運動場からなり、床は地面のままである。小屋部分の壁はコンパネや胴ブチ、バラ板を素材とし、屋根は畜産波板と胴ブチで作製する。運動場には鉄杭と、自由に変形可能な豚用牧柵フェンスを利用する。また、小屋壁の接続はボルトでの組み立て式にし、施設の分解や移動・洗浄を容易に行える構造である。

 試験場で試作した子豚ハッチは6頭収容規模で、製作にかかる費用は約4万円。敷地面積については文献などを参考に、一頭当たり必要床面積を0.37平方メートルとして積算し、小屋部分を収容頭数の6頭分とエサ箱設置面積とで2.5平方メートル(138センチメートル×180センチメートル)、運動場面積を小屋の2倍の5.0平方メートル(138センチメートル×360センチメートル)とし、エサ箱は小屋の中、給水器は運動場に設置した。

 そのほか、冬季の寒冷対策として、小屋の床に電気保温マット(90センチメートル×60センチメートル)を敷設、一方、夏の暑熱対策には開閉式の屋根としている。

 この子豚ハッチを利用して3週齢離乳子豚を、離乳後1週目から8週目(体重約30キログラム)まで飼育した。これまでの調査では、密飼いなどのストレスにより発生する尾かじり等の異常行動は観察されず、子豚ハッチで育てた方が、1日平均増体量が増加する傾向が見られ、またその後の肥育期の発育においても良い傾向が得られている。

 今後は「子豚ハッチ」の一般農場での実用性を高めるため、最低でも20頭収容できるものを作る必要がある。そこで単純に敷地面積を拡大せず、製作にかかる労力とコストをより低減するために、子豚にストレスを与えず飼育が可能な最小限の面積について現在調査を進めている。
 
屋外に並ぶ子豚ハッチ
運動場で遊ぶ子豚

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