茨城県/小野圭司
肉用牛の繁殖経営にしばしばみられる繁殖機能障害には、発情が見つからないために種付けできない無発情、数回種付けをしても受胎しないことによる長期空胎、流早産などがある。
平成16年に調査した、本県繁殖牛の空胎日数をみると128日となっており、全国平均と比較して長い傾向にある。 受胎しないことが原因による牛のとう汰は、飼養管理に係る経費の損失、子牛生産数の減少などの経済的損失に加えて、改良速度を鈍らせることにもつながる。 牛の繁殖機能は、給与する飼料の質と量、運動、日光浴などの飼養管理、飼養環境と密接な関係にあることは以前から知られている。 公共牧場の利活用低下が問題となってから、全国の放牧場で、繁殖機能の回復を目的とした、いわゆる「リハビリ放牧」は多面的利用方法として取り組まれている。ただし、効果はわかっていても、近くに放牧場が無いことなどの不便性、管理労力が不足していることや管理方式がマニュアル化されていないなどの理由に加えて地域の組織としての取り組みに差があることから、本県での取り組みは遅れている状況にあった。 本県では、昨年度から県の畜産センター肉用牛研究所が中心となり、不受胎牛の繁殖能力の回復を目的とした、リハビリ放牧技術の実証事業を開始した。 県は農家に散在する不受胎牛を、いったん買上げし、公共牧場でのリハビリ放牧と人工授精を実施している。また妊娠した牛については、買上げした農家に優先的に払い下げを行っている。 事業のPRにより、農家の方々からの問い合わせも増えているが、受胎率を向上させることが当面の課題となっており、今後はまき牛(自然交配を目的とした種雄牛)の活用などを含めた対策を検討している。 ここ数年、本県でも耕作放棄地での放牧に対する関心が高まっており、年々放牧頭数、放牧面積とも増加している。この事業を通して放牧の効果に対する認識がさらに高まることが期待されている。
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