◎調査・報告 


消費動向

季節別食肉消費動向調査報告
〜第52回消費者調査〜

財団法人日本食肉消費総合センター


はじめに

 この調査は、消費者の食肉購入状況、家庭における食肉のし好、調理法などの変化、食肉に対する意識などについて体系的に調査分析し、国産食肉の消費拡大および流通合理化対策などに資することを目的とする。

 調査方法は、WEB調査を全面採用し、10地域(北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄)を調査地域とし、それぞれ200世帯を抽出し、2千世帯の家事担当者を対象とした。

 調査期間は、平成16年12月13日から19日までの7日間とした。

 前回(16年6月実施)、前々回(15年12月実施)の調査も同様であるが、米国の一連の「BSE」問題、および「京都・鳥インフルエンザ」、「鹿児島・豚コレラ」などの、調査前の出来事や報道によって消費者の「食肉に対する意識・行動」は少なからず影響を受けていたと考えられる。従って、調査結果は「消費者の心構え」を含んで理解する必要がある。このように、調査結果から飽(豊)食による個人個人の「し好多様化」や「季節による変化」などを論じる前に、今や押し寄せてきた突発的「不安を引き起こす事態」によって、食生活や食肉購買行動はかき回されているのがここ最近の現実である。


要 約

 今回の調査を、過去3回の調査結果と比較すると、次のような特徴を有することが分かった。

(1)今回の調査期間の直前での「食肉関連の報道」はなかった

 前回と前々回の調査期間・前後には、食肉関連のマスコミ報道があり、消費者の「食肉に対する意識・行動」は少なからず影響を受けていると考えられたが、今回は幸いにも、大きな「食肉関連の報道」はなかった。

(2)インターネット利用者の高い合理性意識が比較的高い

 WEB調査に移行後、買い物回数などの大きく落ち込んだ結果が出た。

 インターネットやパソコン利用者は一般的に合理性意識が比較的高いと考えられ、それ以外の調査項目で不連続性などの矛盾はなかった。

(3)毎日の買い物回数にも季節変動がある

 「北海道」「東北」「北陸」など、特に冬季の気象環境の厳しい「東日本」においては「平均買い物回数」が少ない傾向にある

(4)最大の買物ピークは月曜日

 「月曜日」が「買い物回数」と「買い物金額」共にダントツである。

 「買い物金額」においては「土曜日」と「日曜日」は「東高西低」型であり、「水曜日」「金曜日」は「西高東低」型の傾向である。

(5)「非特売型購買行動」は確実に増加

 「最初から家で買う肉を決めていた」「特売でなかったが店で決めた」という「非特売型購買行動」が確実に増加している。

(6)一般的な買物行動のモデルは「いつもと同じくらいの値段」意識

 買物後の満足評価で「いつもと同じくらいの値段」は全体の54.5%を占めている。それを100%とすると「最初から家で買う肉を決めていた」が34.8%、「特売でなかったが店で決めた」が43.3%で販売促進活動に影響されていない買物プロセスが合計78.1%を占めている。

(7)「ブランド和牛肉」と「輸入牛肉」の季節変動は逆傾向

 「ブランド和牛肉」は「夏低冬高=N字型=すき焼型」で「輸入牛肉」は「夏高冬低=逆N字型=焼肉」傾向を示している。

 当然ながら「購入形態」の「薄切りスライス」は「夏低冬高=N字型=すき焼型」、「焼き肉用スライス」は「夏高冬低=逆N字型=焼肉」傾向を示している。

(8)「購入量の増減意識」で「牛肉」と「豚、鶏肉」は明暗分かれる

 「牛肉」は市場動向の「先行指標」である「購入量の増減意識」で、4回連続「購入量の減少感」があり、消費者の心理の中で牛肉の使用量が減り続けている。

(9)「輸入食肉」で「高齢者のみの世帯」は2極化

 「高齢者のみの世帯」は「輸入食肉」の「購入率」が最も低いが、購入世帯は「ヘビーユーザー層」に集中している。

 「まったく使わない世帯」と「徹底して使う世帯」の2極化傾向がある。

(10)食肉の季節変動の主な要因は「購入世帯率」

 食肉の購入金額の「季節変動」を作り出す主な要因は「購入世帯率※」の動きであるが、ものによっては「購入世帯当たりの購入量=大量購入要因」の「季節変動」要因としてわずかに影響する場合がある。

(11)「平均買い物回数」と「食肉保存行動」に強い関係性

 共稼ぎによる「買い物回数」の減少の影響で「食材の保存化の傾向」にシフトしている。また、大型冷凍冷蔵庫の普及によって「食材の保存化の傾向」が高まり「平均買い物回数」が減少しているともいえる。

 長期的視点で考えると「料理メニュー」にも大きな変化を促す可能性がある。

(12)「料理メニュー」には「万能型メニュー」と「特化型メニュー」がある

 薬には万能薬と特効薬があるように、「料理メニュー」にもどんなTPOにも対
応している「万能型メニュー」と「特化型メニュー」がある。

 「万能型メニュー」は圧倒的に出現度が高く、「特化型メニュー」は肉の使用量
が比較的多い傾向がある。ここでは、本調査報告の一部を抜粋して報告する。

※「購買世帯率」とは、購入した世帯の割合で普及度合いを示す、ある属性(例えば全国、地域、世帯構成や年齢など)世帯の中で、一定期間(今回は一週間)に「その食肉を買った世帯の割合」を示す。


1 一週間の買い物行動

 消費者の日常の買い物行動を知るために、食肉、食肉加工品、総菜、魚類など主要食材の買い物について全般的な分析を加えた。

(1)買物回数
 ・全体的傾向(地域の比較)


 図1において、一週間の「平均買い物回数」をみると、全国平均でも4.01回と非常に高い頻度で買い物をしていることがわかる。


図1 地域別買物頻度(世帯構成比) 

 この調査には「食肉」だけでなく、「魚類」や「肉類総菜」などを含んでおり、日常の買い物行動は必要に応じて毎日こまめに行われている姿がうかがえる。

全国平均で見ると週の「買い物回数の世帯構成比」は均等である。

しかし「地域」別で見ると、「平均買い物回数」と「買い物回数の世帯構成比」で大きな地域差がある。

「北海道」「東北」「北陸」など、特に冬季の気象環境の厳しい「東日本」においては「平均買い物回数」が少ない傾向にあり、一方、気候が温暖な「近畿」「中国」「九州」など「西日本」で高い傾向がある。特に冬場の「平均買い物回数」は「西高東低」といえる。

(2)買い物曜日
 ・全体的傾向(時系列比較)


 全般的な買い物回数の減少傾向に伴って、各曜日の「買い物世帯率」にもその傾向が顕著に現れている。

 前回までは各曜日には大きな偏りがなく、強いて言えば休み明けの「月曜日」「火曜日」がやや高い傾向にあったが、今回の調査結果では明らかに買い物行動は週前半(月〜水)に活発で、週中後半、特に「土曜日」「日曜日」の減少が顕著になっている。

 ・全体的傾向(東西比較)


図2 曜日と買物延べ回数・金額の関係  

 図2で「買い物頻度の大小」と「購入金額の大小」から「曜日別のまとめ買いの傾向」と「地域差」を知ることができる。「買い物延べ回数構成比」「買い物金額構成比」共に高いのは「月曜日」が突出しており、「東日本」「西日本」とも、その傾向は同じである。

 「土曜日」「日曜日」の「買い物回数構成比」は「月曜日」「火曜日」「水曜日」「木曜日」よりも下位に位置するが、一方「買い物金額構成比」は「月曜日」に次いで高いという特徴を持っている。スーパーなどの大型商業施設では、子供連れで一見混雑して見えるが、「買い物回数」の少ない世帯(ウィークデーにいけない世帯)が、一週間分を集中的に大量購入している構図が浮かび上がってくる。

 曜日別に「東日本」「西日本」の特徴を「買い物金額構成比」において比較して見ると、「土曜日」「日曜日」は「東高西低」型であり、「水曜日」「金曜日」は「西高東低」型の傾向である。

(3)買い物決定行動
   買い物決定のプロセスと情報
 ・全体的傾向(時系列比較)


消費者が「食肉」や商品を選ぶときの重要な要素としては、「購入を決めるタイミング」と「特売チラシや店頭陳列などの情報の有無」である。「購入タイミング」は大きく分けて「買い物に行く前」と「お店の中」の二つである。


図3 食材別・買物決定行動・構成比

 図3をみると「ブランド和牛肉」は「最初から家で買う肉を決めていた」が42.8%、「特売でなかったが店で決めた」が33.5%で合計76.3%であり、「非特売型購買行動商品」の典型である。

 さらに「計画型買物行動商品」の要素である「最初から家で買う肉を決めていた」「家でチラシを見て決めた」の視点から見ても(42.8+5.3=48.1%)で、ほかの食肉と比較して高く、「献立をあらかじめ家で決める」行動でもあることがわかる。

 一方、「輸入牛肉」は「家でチラシを見て決めた」が13.6%、「お店で特売だったので」が21.7%と合計は34.3%と一番高く、事前に「チラシ」や店頭での「特売」など販売促進活動に影響される「特売型購買行動商品」であることがわかる。

 参考までに、「魚類」は「お店で特売だったので」が20.7%、「特売でなかったが店で決めた」が40.9%と共に高く、お店でいろいろな情報や品物を見て献立を決める「臨機応変型買物行動商品」の典型である。


2 食肉等の購入状況

(1)一週間の食肉購入状況
   食肉等の1世帯当たり平均購入金額と金額構成比
 ・個別的傾向(世帯属性)


図4 世帯属性別の食肉などの1世帯当り平均購入金額

 図4の「凡例」より下の「世帯構成」において「1世帯当たり平均購入金額」を見ると、「成長期の子供がいる家庭」が突出している。

 また、グラフの「凡例」より上の「所得」別に見ると、「精肉」はもちろん「魚類」を加算した「動物性たんぱく質」摂取に費やす金額を見ても「所得」の影響が多いことをはっきり物語っている。

 肉を含めた「動物性たんぱく質」を多く食べる世帯は「お金持ち」か「食べ盛りのいる世帯」であるという傾向が見られる。

(2)購入時点での価格に対する評価

 ここでは、1回1回の個々の食肉を購入する時点において、いつもの価格との比較で、「非常に安く買えて満足」、「高いけど買ってしまった」など、「満足の気持ち」を分析する。

 ・全体的傾向(時系列・個別比較)


図5 購入時点での価格評価 

 図5において「凡例」の左側の時系列グラフを見ると、「食肉全体」では、いつもと比較して「やや安く買えた」が前回25.9%、今回28.6%と増加しており、一方「非常に安く買えた」は10.7%、今回9.3%と減少した。

 これにより「価格に対する満足・納得」の気持ちである「やや安く買えた」と「非常に安く買えた」の合計は前回36.6%から今回37.9%とやや減少した。

 「価格以外の満足・納得」によって買った内訳を見ると「やや高かった」が前回の4.8%から今回7.6%とやや増加し、「同じくらいの値段」が58.6%、今回54.5%である。

 二つの合計を「価格以外の満足・納得」とすると前回の63.4%から今回62.1%と微減であったが、全体としては大きな変化が見られなかった。

 次に、「凡例」の右側のグラフによって、「食材」別に見ると「ブランド和牛肉」は「やや安く買えた」「非常に安く買えた」を加えた「価格に対する満足・納得」の気持ちは34.8%であり、「やや高かった」「同じくらいの値段」を加えた「価格以外の満足・納得」は65.2%であった。

 「その他の国産牛肉」も同様に計算すると、「価格以外の満足・納得」は67.5%、「価格に対する満足・納得」の気持ちは32.5%であった。

 このことから「ブランド和牛肉」「その他の国産牛肉」の「価格以外の満足・納得」の気持ちが高く、価格にあまり誘引されないことが考えられる。

 参考までに、この水準は「魚類」とよく似ている。

 市場の大きい「豚肉」は「価格に対する満足・納得」の気持ちは39.4%とやや高く、「価格以外の満足・納得」は60.6%であった。

 「鶏肉」「輸入牛肉」「ひき肉」の「価格に対する満足・納得」は、合計40%を超えており、価格重視の現れであることが考えられる。


3 食肉の表示は情報について

店頭表示への意識
 「気にして必ず見る」に(+2)、「時々見る」に(+1)、「全く見ない」に(0)の値を乗じて平均を出した「加重平均値」を基に比較する。

 ・全体的傾向(時系列比較)


図6 店頭表示に対する行動 

 図6の上部のグラフにおいて、総合指標である「加重平均値」を見ると、「店頭の表示項目」の全てが、過去4回同じ傾向を示している。

 一番関心が高いのは「部位別(もも肉など)の表示」で今回1.66、続いて「輸入食肉の原産国名表示」の1.49、そして「国産のブランド和牛肉とそれ以外を区別した表示」の1.41、「国産食肉の産地銘柄表示」の1.33、「用途(カレー用など)の表示」の1.28という順であった。

 下部のグラフで、日常の買物の中での「店頭での表示類」に対する行動について、「気にして必ず見る」「時々見る」を加えると、どの表示項目も9割前後となり、消費者の関心の高さを示している。

 消費者の最も関心ある行動を示す「気にして必ず見る」について、今回一番高かったのは「部位別の表示」で69.6%、続いて「輸入食肉の原産国名表示」の58.5%、そして「国産のブランド和牛肉とそれ以外を区別した表示」の51.0%となっており、以下、総合指標である「加重平均値」と同じ順であった。


4 肉料理に関するイメージ分析

(1)コレスポンデンス分析の実施

 日本の代表的夕食肉料理である「万能メニュー」を15種(表1)に絞り、「万能メニュー15料理の動機データ」を用いて、統計分析手法であるコレスポンデンス分析を行った。

 料理を作るときの消費者の価値観(気持ち)を鳥観するために「15の夕食メニューと26のイメージ言葉(動機)」計41データを同一グラフ上にプロットしたものが図7の「コレスポンデンス分析グラフ」である。

  カレー、炒め物、鍋料理、ハンバーグ、シチュー、
唐揚げ、焼肉、煮物、すき焼き、生姜焼き、
とんかつ、肉のどんぶり物、ステーキ、しゃぶしゃぶ、豚汁
 
 
表1 万能メニュー15料理
 


(1)分析の精度

 分析精度を表す「説明度」について調べてみると、第1軸は40.9%、第2軸は23.4%の説明力があることを示している。つまり二つの軸で表されたこの図は64.3%の「統計的説明度」を持ち、残り35.7%は雑音である。

 今回は、日本の代表的夕食肉料理である「万能メニュー」15種が分析対象であった。それぞれのメニューが何にでも対応している「万能メニュー」にもかかわらず、図7を見ると、いろいろな「動機イメージ」に分散し、きれいに特徴を表現できていることがわかる。


(2)軸の解釈と分析の読み方


図7 万能メニュー15種と気持ちの分布(コレスポンデンスグラフ) 

 図7において、二つの軸の意味を解釈する。

 まず、縦軸の(第1軸)は「日常の合理性志向」と「非日常のぜいたく志向」と解釈し、横軸の(第2軸)の味覚・し好軸で「コッテリ味し好」と「サッパリ味し好」と解釈した。

 またグラフの右上の象限は「自己の満足・こだわり志向」、その対極の左下の象限は「他人を意識・コミュニケーション志向」と解釈した。

 または、左上の象限は「淡白・ダイエット志向」、その対極の右下は「元気・スタミナ志向」と解釈した。


(3)方向性の説明と内容
 ・「自己の満足・こだわり志向」

 日常に合理性を発揮し、子供や家族が喜ぶ「しっかりした味の料理」に自己の満足・こだわりを求める方向が見られる。この象限の中心部分にある円弧の中は「日本の食卓の原風景」である。「動機」としては「時間があるから手間をかけたい」「得意の料理だから」「料理番組や雑誌を見て」「家庭のいつもの定番だから」子供の成長に良いから」が含まれる。

 典型的な「料理メニュー」として「カレー」「ハンバーグ」「生姜焼き」「から揚げ」「肉のどんぶり」「シチュー」などが含まれる。

 ・「淡白・ダイエット志向」

 健康に気を配り、どちらかというと淡白な食事を通して健康やダイエットを求める方向が見られる。「動機」としては、「栄養のバランスが良いから」「体調が悪いので」「肌などの美容に良いといわれたから」「ダイエット中なので(カロリー)」「さっぱりしたものが食べたい」「手間がかからないから」「冷蔵庫に残り物があったから」「新しい味や本格的料理にチャレンジしたい」が含まれる。典型的な「料理メニュー」として、「炒め物」「豚汁」「煮物」「鍋物」が含まれる。「肉料理」としては、食肉の使用量は少なく「バランス型」であるのが特徴である。

 ・「他人を意識・コミュニケーション志向」

 楽しくみんなで食卓を囲み、コミュニケーションを持つことに食事の重点を置く方向が見られる。「動機」としては、「誕生日などのイベントだから」「一家団らんを楽しみたい」「友達や来客があるから」「みんなを驚かせたい」「たまにはぜいたくをしたくて」「お酒のさかなとして」が含まれる。

 典型的な「料理メニュー」として、「しゃぶしゃぶ」「すき焼き」が含まれる。

 「動機」が多い割には、「万能メニュー」の中では典型的な「料理メニュー」が少ない。たぶん、このような場面の機会頻度は少ない「非日常」で、どちらかというと「特化メニュー」が対応している領域だと考えられる。

 ・「元気・スタミナ志向」

 いつもではないが、コッテリした食事で元気スタミナをつけたい方向が見られる。「動機」としては、「スタミナ・元気を付けるため」「材料の特売をやっていたから」「ボリューム感があるから」「こってりしたものが食べたいから」「家族が大好きな料理だから」「自慢したいから」が含まれる。

 典型的な「料理メニュー」として、「焼肉」「ステーキ」「とんかつ」が含まれる。この領域も「動機」が多い割には、「万能メニュー」の中では典型的な「料理メニュー」が少ない。たぶん、前述の「他人を意識・コミュニケーション志向」と同様に「非日常」「衝動的」で、決して機会頻度は多いとは思えない。

 どちらかというと、「特化メニュー」が対応している領域だと思う。

(注)調査報告の詳細については、当センターホームページ(http://www.jmi.or.jp)に掲載しています。


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