★ 農林水産省から


自給飼料増産に向けた取組について
−進捗状況と今後の対応−

生産局畜産部畜産振興課課長補佐
椴田 浅亨


1 はじめに

 自給飼料の生産については、畜産経営における生産コストの低減はもとより、飼料自給率の向上を通じた食料自給率の向上、安全・安心な畜産物の供給、国土の有効活用、「土─草─牛」の資源循環型畜産の確立や地域振興などを図る観点から重要である。

 このため、本年3月に策定・公表された新たな「食料・農業・農村基本計画」や「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」では、自給飼料生産の重要性が強くうたわれ、また、平成27年度までに、飼料自給率を35%(現状23%)に、粗飼料自給率を100%(同76%)に引き上げるという目標が設定された。

 こうした中、5月には、これら目標達成に向けた取組として、「飼料自給率向上特別プロジェクト」(図1)を立ち上げ、岩永農林水産副大臣(当時)を議長に関係者からなる全国的な推進機関である「飼料自給率向上戦略会議」を組織し、本年度の「行動計画」を策定するとともに、「行動計画」の機動的な実行を確保するため、本戦略会議の下に「全国飼料増産行動会議」を組織した。


図1 プロジェクトの概要

 今回、「行動計画」に即した取組の更なる加速化と浸透を図ることを目的に、これまでの進捗状況と今後の対応について報告する。


2 進捗状況

 17年度の行動計画(図2)については、(1)地域の取組を推進する地域段階での会議の開催、(2)飼料生産に関する実態調査に基づくネットワークづくり、(3)地域の専門指導者の養成という人づくりに大別されるが、これら取組の進捗状況(図3)の概略は以下のとおりである。


図2 17年度の行動計画

 


図3 行動計画の進捗状況

(1)地域会議の開催

 地域の取組を推進する地域段階の会議については、各ブロック会議が6月以降8月上旬までに開催され、また、都道府県ごとの会議も順次開催された。これら会議においては、全国会議で決定した行動計画やスローガン(図4)の浸透を図るとともに、地域ごとの課題と対応方策の検討、優良事例の紹介、地域ごとの行動計画の策定などが行われた。


図4 自給飼料増産行動会議スローガン

 また、農林水産省では、自給飼料増産に向けた省内の意識の統一と高揚を図るため、8月滋賀県下において、岩永副大臣参加の下、放牧をテーマに現地検討会を開催した。

(2)ネットワークづくり

 耕畜連携による稲発酵粗飼料や稲わらなどの生産・利用の拡大を図るため、地域の行政組織や農業団体などは、畜産農家と耕種農家に対する実態調査と需給マップの作成を行うとともに、これをもとに畜産農家と耕種農家とを結びつけるネットワーク(体制)づくりを進めている。

 しかしながら、「行動計画」のタイムスケジュールに比べ全体的に取組が遅れている状況にあり、次年度における稲発酵粗飼料の作付け拡大などを推進するためには、ネットワークづくりの更なる加速化が必要となっている。

(3)人づくり

 自給飼料増産の取組を地域に広げるためには、地域で技術的な指導を行う専門指導者の養成が重要であり、9月から10月にかけて、中央畜産技術研修(於:家畜改良センター)を活用し、飼料生産に関する専門指導者(放牧伝道師、WCSコーディネーター、コントラクターアドバイザー)の養成講座を開設した。

 なお、各講座とも40名前後の参加があったが、今後は、講座内容の更なる充実や認証制度の確立を図るとともに、農業団体などからも参加しやすい仕組みの構築を検討する必要がある。

 また、放牧については、9月山口県において、「第5回放牧サミット」(参加者:約360名)を開催し、肉用牛繁殖経営の低コスト化と耕作放棄地の解消などの放牧の効果や、住民理解の醸成や実証などの普及のあり方を検討した。

(4)稲わら収集重点活動

 稲わらについては、肉用牛の飼料として利用されているが、口蹄疫の発生などを背景に5月末より中国からの輸入が停止したため全国的に不足している。

 こうした中、緊急課題として国産稲わらの確保を図るため、畜産農家と耕種農家にパンフレット(図5)を配布し、また、地域の行政や農業団体が協力して、稲わらを必要とする畜産農家と提供可能な稲作農家をリストアップしたデータベースやネットワークづくりを進めるとともに、ブロック別やブロックを越えた広域的な需給調整を図るための情報交換会議等を開催した。


図5 国産稲わら確保のためのパンフレット


3 今後の対応

 本年度の自給飼料生産は裏作を除きほぼ終了しているが、次年度における増産を図るため、年度末にかけて以下のような取組を推進することとしている(図2)。

(1)飼料増産重点地区の登録・とりまとめ

 自給飼料増産の取り組みを「点」から「面」に拡大するため、食料自給率向上の推進組織である「食料自給率向上協議会」で定めた本年度の「行動計画」において、17年度末までに飼料増産重点地区(注)を120カ所(現状91カ所)に拡大することが数値目標として設定されている。

 このため、9月から年末にかけ地域において調査や掘り起こしを行い、飼料増産重点地区の登録ととりまとめを行うこととしている。

 今後は、これら飼料増産重点地区を中心に、地域における自給飼料増産の取り組みを積極的かつ重点的に推進する予定である。

(注)飼料増産重点地区とは以下の地区をいう。

 (1)17年度において、都道府県の飼料増産行動計画などに即し、都道府県・市町村・JAなどによる指導や補助事業などによる支援などが重点的に行われている地区であり、都道府県が重点地区として適当と認める地区。

 (2)18年度において、都道府県の飼料増産行動計画などに即し、都道府県・市町村・JAなどによる指導や補助事業などによる支援などが重点的に行われると見込まれる地区であり、都道府県が重点地区として適当と認める地区。

(2)稲発酵粗飼料の作付増進重点活動

 稲発酵粗飼料の更なる拡大を図るためには、まず、地域の水田農業推進協議会の策定する産地づくり計画書に稲発酵粗飼料をしっかりと位置付けることが重要である。

 このため、年末から年始にかけて行われるコメの生産目標数量の地域配分と地域での産地づくり計画書の策定に際し、各都道府県や地域において、新たに構築したネットワークを活用した畜産農家と耕種農家に対する働きかけなど、稲発酵粗飼料の作付増進重点活動を行うこととしている。

(3)第2回飼料自給率向上戦略会議などの開催

 来年2月頃に第2回の飼料自給率向上戦略会議と全国飼料増産行動会議を開催し、17年度の取組の点検と検証を行い、この結果を18年度の行動計画策定へ反映させることとしている。


4 18年度政府予算概算要求

 飼料自給率の向上と自給飼料増産を促進するため、18年度政府予算概算要求において、各種事業の拡充・創設を要求(図6)しているところであり、特に国産稲わらについては、国産粗飼料増産対策事業において国産稲わら収集集団に対する経費助成(5千円/10a(10円/kg相当)、3カ年同額助成)を新たに要求している。


図6 18年度政府予算概算要求の概要


5 終わりに

 自給飼料増産を着実に進めるためには、「行動計画」に即した取組の更なる加速化と浸透を図ることが重要である。

 これには、関係者が一体となりかつ適切な役割分担のもとに、互いにリーダーシップを発揮して最大限努力する必要があり、引き続き、関係者の皆様のご尽力を切にお願いするところである。

 なお、全国飼料増産行動会議などの情報については、下記の農林水産省生産局畜産部のHPにも掲載している。
http://www.maff.go.jp/lin/06-siryou.html


元のページに戻る