WTO体制の下、さらなる生産コストの低減が求められ、わが国酪農の安定的な発展のためには、乳用牛改良の推進とともに、個体能力を最大限に発揮させる飼養管理技術の推進を図ることが重要である。
また、15年8月からインターブルが実施する乳用種雄牛の国際比較に参加したことで、本格的な改良の国際競争に突入した。
ここでは、個体能力の向上がいかに生産性の向上にとって重要であるか、牛群の平均乳量の差が生乳生産コストおよび収益性に及ぼす影響について、農林水産省統計部「平成16年牛乳生産費統計」をもとに組み替え集計した結果から見てみよう。
各図は、乳量階層別に経産牛1頭当たりの平均乳量(乳脂率3.5%換算)と経産牛1頭当たりの平均粗収益及び支出との関係について示したものである。これを見ると平均乳量が増加するに伴い、粗収益、支出ともに増加しているが、右にいくほど粗収益の増加額が支出の増加額を上回っており、平均乳量が多い酪農家ほど収益性(所得)が高いことがわかる。
具体的な数字を挙げてみると、全国の経産牛1頭当たり平均乳量である7千〜8千キロの階層に比べ、牛群検定牛の平均乳量である9千〜1万キロの階層では、支出が9万3千円増加しているものの、粗収益が15万6千円増加していることから、結果として所得は17万1千円から23万4千円へと約37%増加している。
また、1千万円の所得を得るために必要な乳用牛(経産牛)頭数を計算すると、平均乳量が7千〜8千キロの階層では58頭必要となるが、9千〜1万キロの階層では43頭となり約7割程度の頭数で間に合うことがわかる。
同様に出荷乳量を3百トンと限定した場合に必要な経産牛頭数について計算すると、7千〜8千キロの階層では40頭必要であるのに対し、9千〜1万キロの階層では32頭で間に合い、所得も増加する傾向が見られる。
以上のように、1頭当たり乳量の増加により生産の向上を図ることは、酪農経営において、所得の向上などに大きく寄与しており、乳量を伸ばすこと、すなわち、登録、牛群検定、後代検定による効果的な牛群の改良を進めることにより、乳用牛の遺伝的能力を高め、その能力に見合った飼養管理を推進していくことが、いかに重要なことであるかがわかる。
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